古代エジプトカレンダー「播種季」は実は種まきシーズンではないという罠

古代エジプトのカレンダーは、三つの季節に分かれている。

「増水季」アヘト
「播種季」ペレト
「暑熱季」シェムウ

それぞれ4ヶ月ずつで3つの季節。
これだけ見ると、ナイルの増水の季節、種まきの季節、夏、なんだなー…と思うかもしれない。
だが実際には播種季にはもう麦の種まきは終わっているし、一番暑いのは暑熱季ではなく増水季である。

この罠は、季節の名前とカレンダーを突き合わせて見ていないと気が付かないかもしれない。


以前作った、ナイルの水位と農耕を合体させたカレンダーが以下。種まきは11月までに終わらせるのが基本。 
つまり「播種季」とは「播種の終わった季節」になる。

「ピラミッドは農閑期に農民を働かせて作った」説→調べたら農閑期なんてありませんでした。
https://55096962.seesaa.net/article/201602article_11.html

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このカレンダーを作るために使った資料の一つがこれ。「古代エジプト 都市文明の誕生」(古今書院)
水が引ききってから種を撒いたのでは遅い。9月末ごろから、水の引いた部分から種まきスタートになるんである。鋤起こしをしながら、手作業で撒いていくんだからそりゃ時間もかかりますよって話で。

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※上記の表のコプト暦の部分は同じ名前が2回入っているなど誤記がありズレている。正しい名前の並びはこちらを参照

現代の農民のことわざ(?)にも、「10月初旬までに作物を植えると生産量が増加する」、パービ・ザアラフ・ヤグリブ・ル=ハニーヤ という言い回しがあるそうなので、播種季の始まる11月まで待つことは無い。

そしてナイルの増水開始は夏の暑い盛りに始まるので、北半球にあるエジプトは、もちろん、その頃がいちばん暑い。暑熱季はたぶん、ちょうどいいくらいの暑さ。
この辺りを知っていると、見える世界が少し具体化するんじゃないかなーと思う。