日干しレンガのピラミッド、労力はいかほどだったのか。センウセルト三世のピラミッドから

へにょへにょになりながら帰ってきて、玄関でけつまづいて卵を2個割った私ですこんばんは。
そんな悲しいことがあっても、元気に生きていきたいとおもいます。(キリッ)
*閑話休題*

古代エジプトの日干しレンガの作り方についての論文を読んでいたら、レンガ建造物としてピラミッドの事例が出てきて、使われたレンガの数についての記載があった。
センウセルト3世のピラミッドで24.5 million。つまり24,500,000個の日干しレンガを使っただろう、という。
一人が1回に50個のレンガを運搬するとして490,000回、5000人でレンガ運ぶなら一人98往復。うーん、なかなか。

いや、うん。いま残ってるピラミッドもレンガ組みの部分は見えてるし、残ってる部分だけでもかなりの個数になるはずだから分かるんだけど、冷静に考えたら、めっちゃ数多いな?!

Photo-pyramide-sesostris3.jpg

Pyramid_of_Senusret_III_12.jpg

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<前提知識>
クフ王のピラミッドなど、ギザ台地の大きなピラミッドは全部、石でできている。が、その後のピラミッドは小型化していき、内部は日干しレンガを使って、表面だけ白い見栄えのいい石を使う方式に変わっていく。作られた数としては、全部石のものより日干しレンガを使ったもののほうが多い。
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いまはただの土塊の山になってるあのピラミッド、実は膨大な量のレンガの塊で、けっこうな労力をかけて作られていたわけだ。

日干しレンガは、もちろん、土から出来ている。ナイルの泥(シルト)と砂を混ぜ合わせて天日干しにして作られる。火を入れて焼く焼成レンガに比べると脆いが、木材を消費しないのでエジプトのような木の乏しい砂漠の国でも大量に作れる。というか沙漠の国ならではの乾燥した天候により大量生産が可能。

ピラミッドの表面以外、体積の殆どをこのレンガで作るということは、ピラミッドの体積分の土がどこかから運ばれたということでもある。
…川べりの土をがっつり掘って、沙漠に移動させたようなものである。石造りのピラミッドに比べれば安価で手間がかかっていないように思われるが、やってることは、かなり大規模な国家事業でもなければ実現できない、労力のかかる作業である。

最低限必要なのは以下

・レンガを作る人
・運んで集積所に持っていく人
・集積所からピラミッド本体に積み上げていく人
・積み上げのコントロールをする建築監督

で、表面を石で作っているので、それとは別に石工も必要になる。(ギザのピラミッドほど大量には必要ないだけで)

レンガ作りと積み上げは専門の知識は不要だが、建築監督は専門知識がないと難しいだろう。日干しレンガの大規模建造物としては神殿や周壁、貴族墓の周壁などが作られていたが、ピラミッドとなると特殊な知識が必要だったかもしれない。
レンガは単に積み上げただけではズレてしまうため、モルタルのような間ほ埋めるものが必要だったはずだが、そのへんはどうしていたのか。また、レンガの大きさは基本的に揃えられていたようだが、誤差が出る場合はあるだろう。その差異はどう吸収していたのか。

考えていくと疑問はキリなく浮かんでくる。そう、石造りのピラミッドだけじゃなくて、レンガ造りのピラミッドも実は謎だらけなのだと思う。そしてセンウセルト3世のピラミッド同様、大半がいまや土くれの山と化しているため、分からん部分は分からんのである。

個人的に気になっているのは、ピラミッドを作ることによって、川べりの風景がどのくらい変わったのか、である。
このピラミッド、本体だけでなく衛星ピラミッドに付属神殿に周壁まで日干しレンガで作っているので、大量の土がレンガに加工されて、近隣の川べりから運ばれたはずなのだ。そうすると、その体積分の土が失われることになる。運河を作るついでに、掘り出した土を使った、とかなら影響は少なそうなのだが、そうでなければ耕作に適した場所の土まで消費してしまうことになりそう。

実際は、どのへんの土を使ったんだろうなあ、これ…。