古代エジプト人が使った「植物油」についての覚書き

書かないと忘れそうなので、調べた分は自分用にまとめておく。
以下、古代エジプト人が使っていたと思われる植物油の種類について。

****
●ヒマ

ヒマシ油の元になる植物。11月~12月ごろに植えて翌年(古代エジプトの暦ではその年収穫期)に収穫。
葉や種子にリシンという猛毒の物質が含まれるため、誤飲すると中毒をおこすことがある。麦など食べる用の植物とは離して育てていたはず。
種子から油をとる以外に、医療用としては堕胎・避妊薬としても使う。

01.png

●バラノス

先王朝時代から使われていた植物。岸辺や涸れ谷などに植えとけば1世紀近く生きる木らしい。
実が硬いが、うまいこと絞れば淡い金色の油が取れるらしい。
果実は発酵させれば果実酒になる、また食べられる。家畜の餌にも出来るらしいので絞ったあとのカスを再利用していたかも。

002.png

●ベニバナ

黄色の染料としても使われる植物。現代だとベニバナ油はさかんに使われているが、古代人が油としても使ったかどうかは不明。
新王国時代に使われていたのは確実だが中王国時代に入ってきていたかは不明。

003.png

●モリンガ

ヨルダン、パレスチナ方面に生えていた木。オイルを輸入して香水などに使っていた可能性はあるが、エジプト国内で生育していたかは不明。
油は黄色く、僅かに甘いらしい。
なお、モリンガについては以前、健康食品としてのモリンガを調べた時にもちょっと書いた。

004.png

●アマ

主に亜麻布用だがアマニ油も取れる。ただ、種が熟するまで育てると本体が固くなってしまい織物に使いづらいので限定的な使用法だったのでは。
種蒔き時期は10-11月で麦とだいたい一緒、収穫時期も3-4月で麦と一緒。なので古代エジプト的には育てやすい。

005.png

●ゴマ

いつエジプトに入ったか不明。プトレマイオス朝時代には会ったことが確実。早ければ新王国時代には入ってた可能性があるが、夏作物で6-7月に種まきをして10-11月収穫なので二毛作が可能な場所じゃないとムリ。ナイルの増水に頼って灌漑していた時期だと、水位が上昇して氾濫する時期に種まきをすることになり、場所の選定がかなり難しい。

007.png

●オリーブ

エジプトでは育ちにくく、大半ギリシャ方面からの輸入で新王国時代以降に入ってきたと言われていたが、最近だと古王国時代くらいから限定的ながら輸入されてたのでは? という説になりつつある。
ただ、エジプトでオリーブ育てるのは難しいので、高級品ではある。

●アーモンド

ツタンカーメン墓からの出土あり。アーモンドの木はエジプト北部のデルタ地帯の気候じゃないと育たないらしい。
甘いアーモンドからは甘い油、苦いアーモンドからは苦い油が取れる。ただ甘いやつは普通に食べられるので、油にするより食べてたのではという。

●ラディッシュ

プリニウスがラディッシュを植物油にしていた話を書いているらしいのだが、証拠に乏しいので、別の植物と書き間違えた説があるらしい。
使われていたとしてもプトレマイオス朝以降と考えられている。

●タイガーナッツ

川べりで育てる木。3-5月に収穫。これもアーモンド同様、北部のナイルデルタでないと育たない。

●その他

植物油として使ったかは不明だが、食用または薬用として使われていたもの
・レタスの種子 →種子をとるためにはレタス本体が成長しきらないとダメなので普通に食べたほうが早い…
・コロシントウリ(ニガウリ)
・ケシ
・シナモン(桂皮) →プトレマイオス朝以降に入ってきたとされるが、インドから輸入されていれば植物油にも使える


****
主要な植物油はだいたいこのへん。意外にもヤシが出てこなかった。
古代エジプトでは、ナイルの増水のサイクルの都合上、収穫できる植物は秋か春に集中している。植物油になるものを収穫している時期もその二つの時期。

モリンガやバラノスといった豆類は、数カ月程度なら保存しておいて順次、精油するということが出来て便利だっただろうという。ただ、倉庫に積み上げてるところに火が付いたら危なそう。放火する時は豆だな…豆を使えば燃え上がるよ…(
あと、ヒマの種は毒殺に使えそうだな、とかちょっと思いました。ウフフ…(

***
その後調べたヤシ油
エジプトのは「ナツメヤシ油」でした!
https://55096962.seesaa.net/article/503108778.html