セティ一世の出した「ナウリの勅令」、神殿所領の免税の話かと思ったらそうでもないらしい
「ナウリ勅令」とは、第19王朝のファラオ、セティ1世が発令した王様からの命令文で、ヌビアのナウリという場所の崖に書かれているものが残っているのでこの名前になっている。勅令の指示先はヌビアの砦を守る守備隊長やヌビアの知事、役人など。別名は「ナウリ法令」。
Nauri Decree あたりで検索すると資料は出てくる。
ナイル上流の第三瀑布のあたりにある岩壁に石碑として碑文が掘ってあるらしい…。
内容は、「アビドスにあるオシリス神殿に属する財産については役人は手を出すな」というものになっている。アビドスはナイル川中流の都市。なぜオシリス神殿の財産の話がこんなナイル上流に書かれているかというと、
・神殿の所有する農地・牧草地がここにあった(王が与えた)
・ヌビアから香料や珍しい動物、作物などを神殿に送っていた
という状況らしい。
ヌビアは新王国時代にはエジプトの植民地であり、ヌビア知事/総督と呼ばれる人が治めていたわけだが、その人を含むヌビアにいる軍人や役人に対して、「神殿の財産は特別なものなんで、扱いに気をつけろや」と王が布告している内容なわけである。
そのため、神殿所有物や所領に関する”免税の勅令”として紹介されているのを見かけることがあるのだが、なんとなーく調べてみたら、どうもそこまで王権の縛りは厳しくない。全く手を出すな、とは言っていないっぽいのである…。
というか、英訳を読んでみたところ、実態は限定的な制限事項らしい。
「オシリス神殿に所属する労働者を勝手に連れ出すな」とか「オシリス神殿に捧げられるべき貢物の船に課税はしなくていい」とか、「オシリス神殿に与えた土地境界を動かした者には鼻か耳を削ぐ刑罰を与えよ」とか、やたらと細かい免除項目。
神殿の所有物に全く手を出すな、だと、治安が悪くなったときに守って貰えないとか、神殿に送る荷物を地元のゲリラに奪われるとかの不都合があったのではないかと思う。だから、なんか起きたら地元の軍人とかに介入はして欲しいんだけど、だからといって、みかじめ料を徴収したり、勝手に労働力を自分とこに使ったりするのはナシにしてね? みたいな感じに読める。
いやなんか、めちゃくちゃ遠慮してるな王様…。ヌビア遠いしね。政治に苦労してたんかもしれない。
あと、「勝手に労働力を奪ったら200回殴打しろ」みたいに細かく刑罰を決めてるのが、ハンムラビ法典に似た雰囲気もあるなぁと思ってしまった。古代エジプトには成文法は無い、と言われているけれど、もしかしたら、王の勅令が判例集の一種になるのかもしれない。
なお、くだらない話ですが、殴打200回は叩くほうも大変です。
中の人、小学生男子の心により丸めた新聞紙でクッション相手に殴打の練習をしたことがあるのですが、50回くらいで飽きます。100回だと虚無です。フルスイングしてると腕が持たない。殴打刑は実行する側も苦行だと思うのです…。
Nauri Decree あたりで検索すると資料は出てくる。
ナイル上流の第三瀑布のあたりにある岩壁に石碑として碑文が掘ってあるらしい…。
内容は、「アビドスにあるオシリス神殿に属する財産については役人は手を出すな」というものになっている。アビドスはナイル川中流の都市。なぜオシリス神殿の財産の話がこんなナイル上流に書かれているかというと、
・神殿の所有する農地・牧草地がここにあった(王が与えた)
・ヌビアから香料や珍しい動物、作物などを神殿に送っていた
という状況らしい。
ヌビアは新王国時代にはエジプトの植民地であり、ヌビア知事/総督と呼ばれる人が治めていたわけだが、その人を含むヌビアにいる軍人や役人に対して、「神殿の財産は特別なものなんで、扱いに気をつけろや」と王が布告している内容なわけである。
そのため、神殿所有物や所領に関する”免税の勅令”として紹介されているのを見かけることがあるのだが、なんとなーく調べてみたら、どうもそこまで王権の縛りは厳しくない。全く手を出すな、とは言っていないっぽいのである…。
というか、英訳を読んでみたところ、実態は限定的な制限事項らしい。
「オシリス神殿に所属する労働者を勝手に連れ出すな」とか「オシリス神殿に捧げられるべき貢物の船に課税はしなくていい」とか、「オシリス神殿に与えた土地境界を動かした者には鼻か耳を削ぐ刑罰を与えよ」とか、やたらと細かい免除項目。
神殿の所有物に全く手を出すな、だと、治安が悪くなったときに守って貰えないとか、神殿に送る荷物を地元のゲリラに奪われるとかの不都合があったのではないかと思う。だから、なんか起きたら地元の軍人とかに介入はして欲しいんだけど、だからといって、みかじめ料を徴収したり、勝手に労働力を自分とこに使ったりするのはナシにしてね? みたいな感じに読める。
いやなんか、めちゃくちゃ遠慮してるな王様…。ヌビア遠いしね。政治に苦労してたんかもしれない。
あと、「勝手に労働力を奪ったら200回殴打しろ」みたいに細かく刑罰を決めてるのが、ハンムラビ法典に似た雰囲気もあるなぁと思ってしまった。古代エジプトには成文法は無い、と言われているけれど、もしかしたら、王の勅令が判例集の一種になるのかもしれない。
なお、くだらない話ですが、殴打200回は叩くほうも大変です。
中の人、小学生男子の心により丸めた新聞紙でクッション相手に殴打の練習をしたことがあるのですが、50回くらいで飽きます。100回だと虚無です。フルスイングしてると腕が持たない。殴打刑は実行する側も苦行だと思うのです…。