タイトルに偽りあり、どうしてこんな構成にした…「世界のピラミッド」
タイトルと表紙が良かったのでなんとなく手に取ったのだが、中身を見てビックリしてしまった。
半分エジプト。1/4がマヤ。残りはほぼピラミッドじゃない。
いや、さすがにこの内容で「世界のピラミッド」ってタイトルは無いわーwww 無いわー…。
先行で出ている「世界のピラミッド大事典」あたりの真似したかったけど、予想より執筆者が集まらなかったからボリュームダウンしましたー、くらいのノリですよね…。
世界のピラミッドWonderland - 河江 肖剰, 佐藤 悦夫, 河江 肖剰, 佐藤 悦夫
写真は綺麗なんで、写真集としては楽しめると思う。ただ文章のところは内容が極薄なんで、雑誌ぱらぱらめくって読み飛ばすくらいのノリでしか読めない。というか、毎回同じ内容ばっかりなので、書いてる人の引き出しの中身が小さいんだろうなあという気がした。
一つだけ書いておきたいのは、この本に出てくる「二基のピラミッドの間に太陽の昇るところがアケトの文字になった」というのは、俗説というか、この先生がそう信じたい説なだけで、私は否定派である。
この説を唱えるときに実際に「アケト」の文字をしないのだが、並べれば全然にてないのがわかってしまう。
文字を見れば分かる通り、現しているものは「二つのピラミッド(三角形に尖った山)の間に浮かぶ太陽」ではなく「台地の間に昇る太陽」なんですよ。両脇の形見ればわかるよね。で、ピラミッドの西側は砂漠で集落はないので、ピラミッドの間に登る太陽を見るためには、わざわざ西側に移動しないといけない。考古学者でもあるまいし、そんな特別なシチュエーションを何度も見ることがあるかどうか。
普通に考えれば、この、二つの山に昇る太陽は、太陽神殿のあったヘリオポリスから東の丘陵地帯を眺めた風景だと思う。
(※2024/5/27 追記
「アケト」の文字の形がいつからあるのか気になってちょっと調べてみたら、大英博物館の辞書では「アケトの文字はアクエンアテンの時代にアマルナの都から東の谷間に出現する太陽円盤の形を表現したもの」という記述があった。だとすると、この文字が一般的に使われるようになったのは新王国時代かもしれない。そもそも古王国時代に「アケト」の文字が使われていなかったのなら、ピラミッド云々は全く関係なくなる。どちらにせよ、やはり「アケト」の形は東の谷間に昇る朝日の姿だ。)
これ、だいぶ前にもツッコんだんですよね…。
ただ単に「ぼくは似てると思う! そう見えるんだもん!」だけだと、オカルト論者と全く同じ根拠のないロジックにしかならないんですよ。考古学者はオカルト信者と同じ考え方で物言っちゃだめですね。基本が出来てない。
そして、古代エジプトの暦は太陽暦ではない。ソティス星の周期とナイルの増水を組み合わせた365日(閏日無し)で、暦の上でも夏至を特別視していた根拠に乏しい。太陽の光の弱まる冬至は重視されていたかもしれないが、ピラミッドが作られていた時代に、夏至に何か特別な意味を持たせていたかどうかも不明なのだ。
というか、何でもかんでも遺跡を夏至や冬至に結びつけるっていうのは、既にさんざん批判された前近代の考え方なわけで。
ストーンヘンジやナスカの地上絵、レイラインから火星の人面まで、その手のオカルト論調もさんざん見てきているので、本職が唱えるならもう少し煮詰めて根拠づけしてから持って来てほしい。
というわけで、まあ、写真集としてはいいかもしれませんが、この値段払って本棚の空間を食わせるのは、ちょっともったいないかな…という感じの本でした。
*****
[>オマケ
過去に取り上げた「世界のピラミッド」について
ギリシャのピラミッド
https://55096962.seesaa.net/article/201907article_23.html
リビアのピラミッド
https://55096962.seesaa.net/article/500094062.html
あと、記事にはしてないけどヌビアのピラミッド。絶対忘れちゃいけないヌビアのピラミッド群。
エジプトのピラミッドを取り開けていながらヌビアのを取り上げないのは、ピラミッドマニアとしては、もうそれだけでマイナス1億点くらい。
著者の先生の得意なところ(というか知ってるところ)しか書けなかったからでしょこれ…。あとヌビアとリビアは最近内戦してて写真撮りにいけなかったとか、そういう理由じゃないです? タイトル詐欺にもほどがある。
日本にある「瓦のピラミッド」
https://55096962.seesaa.net/article/489112027.html
ドイツ/ポツダムに存在するピラミッド
https://55096962.seesaa.net/article/201709article_19.html
アクエンアテン博物館
https://55096962.seesaa.net/article/201806article_10.html
これ以外にも、近代に建てられたピラミッドは大量にある。ラスベガズのホテルとかもあるしね。
ガイウス・ケスティウスなんかいれるんなら、このへんも全部入れられるでしょ。なんでボロブドゥールなんだ紙面の使い方間違えてますよ。
半分エジプト。1/4がマヤ。残りはほぼピラミッドじゃない。
いや、さすがにこの内容で「世界のピラミッド」ってタイトルは無いわーwww 無いわー…。
先行で出ている「世界のピラミッド大事典」あたりの真似したかったけど、予想より執筆者が集まらなかったからボリュームダウンしましたー、くらいのノリですよね…。
世界のピラミッドWonderland - 河江 肖剰, 佐藤 悦夫, 河江 肖剰, 佐藤 悦夫
写真は綺麗なんで、写真集としては楽しめると思う。ただ文章のところは内容が極薄なんで、雑誌ぱらぱらめくって読み飛ばすくらいのノリでしか読めない。というか、毎回同じ内容ばっかりなので、書いてる人の引き出しの中身が小さいんだろうなあという気がした。
一つだけ書いておきたいのは、この本に出てくる「二基のピラミッドの間に太陽の昇るところがアケトの文字になった」というのは、俗説というか、この先生がそう信じたい説なだけで、私は否定派である。
この説を唱えるときに実際に「アケト」の文字をしないのだが、並べれば全然にてないのがわかってしまう。
文字を見れば分かる通り、現しているものは「二つのピラミッド(三角形に尖った山)の間に浮かぶ太陽」ではなく「台地の間に昇る太陽」なんですよ。両脇の形見ればわかるよね。で、ピラミッドの西側は砂漠で集落はないので、ピラミッドの間に登る太陽を見るためには、わざわざ西側に移動しないといけない。考古学者でもあるまいし、そんな特別なシチュエーションを何度も見ることがあるかどうか。
普通に考えれば、この、二つの山に昇る太陽は、太陽神殿のあったヘリオポリスから東の丘陵地帯を眺めた風景だと思う。
(※2024/5/27 追記
「アケト」の文字の形がいつからあるのか気になってちょっと調べてみたら、大英博物館の辞書では「アケトの文字はアクエンアテンの時代にアマルナの都から東の谷間に出現する太陽円盤の形を表現したもの」という記述があった。だとすると、この文字が一般的に使われるようになったのは新王国時代かもしれない。そもそも古王国時代に「アケト」の文字が使われていなかったのなら、ピラミッド云々は全く関係なくなる。どちらにせよ、やはり「アケト」の形は東の谷間に昇る朝日の姿だ。)
これ、だいぶ前にもツッコんだんですよね…。
ただ単に「ぼくは似てると思う! そう見えるんだもん!」だけだと、オカルト論者と全く同じ根拠のないロジックにしかならないんですよ。考古学者はオカルト信者と同じ考え方で物言っちゃだめですね。基本が出来てない。
そして、古代エジプトの暦は太陽暦ではない。ソティス星の周期とナイルの増水を組み合わせた365日(閏日無し)で、暦の上でも夏至を特別視していた根拠に乏しい。太陽の光の弱まる冬至は重視されていたかもしれないが、ピラミッドが作られていた時代に、夏至に何か特別な意味を持たせていたかどうかも不明なのだ。
というか、何でもかんでも遺跡を夏至や冬至に結びつけるっていうのは、既にさんざん批判された前近代の考え方なわけで。
ストーンヘンジやナスカの地上絵、レイラインから火星の人面まで、その手のオカルト論調もさんざん見てきているので、本職が唱えるならもう少し煮詰めて根拠づけしてから持って来てほしい。
というわけで、まあ、写真集としてはいいかもしれませんが、この値段払って本棚の空間を食わせるのは、ちょっともったいないかな…という感じの本でした。
*****
[>オマケ
過去に取り上げた「世界のピラミッド」について
ギリシャのピラミッド
https://55096962.seesaa.net/article/201907article_23.html
リビアのピラミッド
https://55096962.seesaa.net/article/500094062.html
あと、記事にはしてないけどヌビアのピラミッド。絶対忘れちゃいけないヌビアのピラミッド群。
エジプトのピラミッドを取り開けていながらヌビアのを取り上げないのは、ピラミッドマニアとしては、もうそれだけでマイナス1億点くらい。
著者の先生の得意なところ(というか知ってるところ)しか書けなかったからでしょこれ…。あとヌビアとリビアは最近内戦してて写真撮りにいけなかったとか、そういう理由じゃないです? タイトル詐欺にもほどがある。
日本にある「瓦のピラミッド」
https://55096962.seesaa.net/article/489112027.html
ドイツ/ポツダムに存在するピラミッド
https://55096962.seesaa.net/article/201709article_19.html
アクエンアテン博物館
https://55096962.seesaa.net/article/201806article_10.html
これ以外にも、近代に建てられたピラミッドは大量にある。ラスベガズのホテルとかもあるしね。
ガイウス・ケスティウスなんかいれるんなら、このへんも全部入れられるでしょ。なんでボロブドゥールなんだ紙面の使い方間違えてますよ。