ピラミッド地下迷宮はお好きですか? センウセルト3世のピラミッド

古代エジプトでピラミッドといえば、みんな古王国時代の石造りのピラミッドを連想すると思う。でも、日干しレンガで作られた低コストな中王国時代のピラミッドのほうが、ネタ的にはかなりおいしいのです。

おいしいポイント

・数が多い
・建てられたロケーションや構造で、ある程度、施工主の意図が読める
・盗掘を防ぐため様々な仕掛けをしてある。入口の位置を変えてたり、地下に迷宮作ってたり
・その甲斐あって、徹底的に盗掘された古王国時代のピラミッドに比べ遺物がそこそこ出ている

特に「迷宮」という点において中王国時代のピラミッドには突出した面白さがあるのです。
というわけで、その中でも地下迷宮で有名なセンウセルト3世のピラミッドを。

まず全体像はコレ。
本体ピラミッドの周囲に、母や妻、娘など女性たちの小さなピラミッドが並んでいて、ここから多数の遺物やご本人様(元はミイラだが現状は骨)がでてます。

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王本人は出てきておらず、おそらく王はここに埋葬されずアビドスの王墓の方に入ることを選んだのでは…とされていますが、実はまだ見つかっていない部屋があって、そこに王が埋葬されているのでは? という説も。

このピラミッド、盗掘を防ぐために本来の入口を慣例どおり北側に作ることをしていなかったぽいんですよね。で、いま見つかってる地下の部屋も、ピラミッドの中心部にはないので、実はこの部屋は王の埋葬室ではないのでは? という説もあったりします。

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(出典元: ピラミッド大全)

何しろけ現状残ってる地上部分がコレ。日干しレンガ全部崩れちゃってる小山なので、適当に掘り進めるわけにもいかず、未調査のエリアが広いです。河岸神殿の辺りも完全な調査は行われていないらしい。

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で、肝心の地下構造ですが、王女たちのピラミッドの地下は、こんな感じで複雑に繋がってます。
ていうか、もはや地上部分のピラミッドの意味がないですねwww 一人ひとつピラミッドじゃなくて、妻や娘が亡くなるたびに拡張しまくってますね。これです、この「形式とかどうでもいい、墓が必要だから増築した」みたいなご都合主義、施工主の指示が読める。これが中王国時代のピラミッドのいいとこ。子供が増えたり結婚したりしたから納屋を改装して離れをつくりました、とかいう田舎の農家の家みたいなノリ。

これでいいんですよ。そんで埋葬が雑かっていうとそんなこともなく、一人ひとり丁寧に埋葬して、各人の好みみたいなのも反映されてますからね。第12王朝は家族経営の色が濃いです。

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(出典元: 全系図付 エジプト歴代王朝史)

なお、同じ中央国時代でも、第13王朝はピラミッドが雑で、なんか「別に作る必要はないけど作ったらカッケェっしょ」みたいなノリで、形だけ作ってみた感が強いです。ていうか数も少ないし、完成して埋葬までこぎつけるところまでいかず中断されてるのも多い。
頻繁に王が変わってたからですね。多分。

で、第13王朝以降は、太陽信仰が下火になったり、信仰形態が変化したりで、もはや王墓としてのピラミッドはつくられなくなっていきます。
ダンジョン的なピラミッドをお探しの方は第12王朝。第12王朝ですよ。地下がダンジョン、葬祭殿がダンジョン、ピラミッドと街が一体化したダンジョン、いろんな形態を楽しめます。遺跡の残りが悪いのが余計に想像力を掻き立てる。これがピラミッドマニアの楽しみというやつですよ!