ネアンデルタールのY染色体はどこに消えたのか。受け継がれたDNAの偏りについて

ぷらぷら歩いていたら「ネアンデルタール」の文字が見えたので、ん? と思って記事を読んでみた。
現生人類は2-5%くらいネアンデルタールのDNAを引き継いでいるが、何故かY染色体(男系遺伝子)は引き継がれていないっぽい、何でだろうね。という話である。

Modern human DNA contains bits from all over the Neanderthal genome – except the Y chromosome. What happened?
https://theconversation.com/modern-human-dna-contains-bits-from-all-over-the-neanderthal-genome-except-the-y-chromosome-what-happened-230984

染色体は両親から1対ずつ引き継ぎ、哺乳類の場合はオスがYX、メスがXXとなる。その、オス側のYは必ず父から受け継ぐもので、要するにネアンデルタールが父、ホモ・サピエンスが母だった組み合わせの子孫のY染色体が現生人類の中に残ってる痕跡が無いという話である。
可能性としては、いくつか考えられている。

・Y染色体は男系でしか遺伝しないので、この組み合わせでは男系の子孫がたまたま残らなかったのでは
・長年のうちに上書きされて痕跡が消えちゃったのでは
・この組み合わせの男性は不妊になったのでは


最後の可能性がポイントである。

前提知識として、ウマとロバ、牛とミタンなど近縁種での交雑の場合、不妊が発現しやすい。
哺乳類の場合、オスがYX、メスがXXで、オスは染色体の種類が異なるせいで互いに補佐しあえない。そのため不妊になる確率は男性のほうが圧倒的に高い。一方で、鳥類などではオスがZZ、メスがZW染色体を持つためメスが不妊になる確率が高い。(ちなみに鳥で単為生殖が発生する場合に、基本的にオスしか生まれないのもそのため)

ネアンデルタールとホモ・サピエンスも、ヒト族の近縁種ではあるが、不妊属性が発動するくらいには遺伝子が異なっていいたのではないか、というのだ。

これに関連しそうな研究が、以前取り上げた以下、血液型に関するもの。

ネアンデルタールやデニソワ人にも血液型があったことが明らかに。ネアンデルタール絶滅の理由は「繁殖率が低いから」かも
https://55096962.seesaa.net/article/202108article_4.html

ネアンデルタールにも血液型があったことが最近の研究でわかっており、特定条件で新生児が血液疾患を抱えやすい可能性があるという。染色体/遺伝子に加えて、このへんもあって、混血児の中で生き残れるのが女児に偏っていた、とかあるんじゃないかという気がする。
単純に混血によって不妊を抱えるだけなら、ホモ・サピエンス側も子孫が減って不利なので…。

というか、自然環境下ではロバとウマとかあまり交雑しないんですよね。行動も見た目も違うから。
ネアンデルタールとホモ・サピエンスは短期間にかなりの頻度で交雑しているようなので、そもそも、どういう条件下で交雑が発生したのかを考えるのが先なのではという気もする。お互いに数が減った状態で狭い環境に閉じ込められて、「SEXしないと出られないオアシス」みたいなことになっていたのか。それとも、だいぶ性的嗜好の変わった集団が居たのか。

今われわれが生きているということは子孫が生き延びたことは確実なので、何か、「交雑した人間のオスは全員、不妊になる」みたいな単純な話ではないのでは…ネアンデルタール側だけ滅びる理由があったのでは…という気がしている。
この話は、可能性として面白いのだが、これだけではストーリーは繋がらないな。あともうちょっと。納得するためには、何かの発見が必要そうだ。