作物としてのアズキの起源は日本らしい。秘密は「赤い色」にあった

日本の農作物は大陸から渡ってきたのものが多いが、縄文人が多く食べていたことが知られるようになったアズキは、実は日本で栽培化されたものだと最近の研究でわかったらしい。
アズキの全ゲノムデータ解析が可能になり、さらに東アジア全般のアズキ栽培種・野生種も分析されて、比較できるようになって起源地が見えてきたということだ。

決め手となったのは葉緑体で、日本のものがほかの地域の栽培種にも共通していて、日本から大陸に渡っていったと言えるという。だいたい6,000年前頃から出土する粒が大きくなりはじめ、5,000年前を切るころから完全に野生種と別になっているようなので、だいたいそのへんで栽培化されたと思われる。

このことから考えるに、稲作が伝播する以前の日本はマメが主食の一部だった可能性が高く、他に縄文時代に食べられていたことがわかっているクリやイモなどと合わせ、南米に近い食体系だったことが予想される。(南米で広く利用された植物は、ジャガイモ、カボチャ、のちにトウモロコシ)

雑誌記事

アズキ 日本から大陸に渡った作物
https://www.nikkei-science.com/202402_055.html

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科研費DB

ダイズおよびアズキのヤポネシア栽培起源に関する全ゲノム解析
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21H00355/

その他資料

https://www.mame.or.jp/Portals/0/resources/pdf_z/051/MJ051-06-TK.pdf

で、面白いなあと思ったのは、元になった野生のヤヤブツルアズキは黒い色のものが多く、赤い色は潜在遺伝(劣性遺伝)なのに、縄文時代の人たちはひたすら赤い色を追い求め、実の色を赤で定着させたということ。
単に目立ったからなのか、おいしそうに見えたのか、宗教的な意味合いをもたせようとしたのかはわからない。
だが結果として、この赤い色を選んだことにより、種子の休眠性が失われることになったという。

種子の休眠性ってなんだよ? っていうのは適当にググると出てくるが、要するに、種がなかなか発芽しない現象。作物の場合、発芽タイミングは人間がコントロールする。人間の都合の良い時にまとめて芽が出てほしいので、野生植物の持つこの性質は邪魔なのだ。

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「その他資料」に貼ったURL先の資料を見るに、赤い色をつくる領域と、この休眠性を司る領域が同じらしいので、もしかしたら、長年に渡って畑に種を巻いているあちに赤い種だけが揃って芽を出し、自然に選別されていった結果なのかもしれない。

縄文人はマメをいっぱい食べてた。そして、それはいつしか大陸にも渡っていった。
現代の新たな常識となる知識。

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なお、日本から大陸に渡っていった植物には、高山植物のコマクサもある。
最終氷期以降に日本列島から北米まで分布を広げてそのまま生き残ったんだそうな。
https://55096962.seesaa.net/article/202203article_19.html

植物ゲノムの解析は、いろんなところで新たな扉を開いてくれるものなのです。