古代エジプトで使われていた材木リスト①
前提知識として、現代も古代もエジプトではほとんど木材が育たない。
雨が全然ふらないんだから当然である。貴族の墓の壁画に庭園の絵とかあるのは、人が毎日水を運ばないと木が育たないからで、家の中に緑や池があるのは、超ぜいたくな風景だったから。要するに財を誇り、理想的な風景を描いているわけだ。
なので古代エジプトの遺物に木材を使ったものは少ない。年輪のある、しっかりした硬い木材は全て輸入品だ。
これは、近代の植物DNA分析技術の向上によって種類の特定が進んでいる。
今回はそんな「特定された木材のうち、輸入品であるもの」をメインに集めてみた。日本語名がついていなさそうなものもあるので、正確なところは英語綴りでぐぐってくだされ。
●Field maple コブカエデ?
南西アジアやトルコで生育。輸入品。
食器や家具、ナイフの柄など様々な用途が知られている。新王国時代の遺物が知られているが、それ以前はいつから輸入されていたか不明。
●Cork wood コルク
熱帯アフリカで育つ柔らかい材木。アフリカ中央部からの輸入品と思われる。
第三王朝の墳墓から発見されているが、おそらく家財道具の一部に使われていた。その他の用途は不明。
●Silver birch 樺の木の一種
ギリシャに生育。箱、弓、桶やナイフの柄、ほか小さな家財道具に限られる。おそらくあまりポピュラーな木材ではなかったが、古王国時代にはもうオリーブなどとともに輸入されていた可能性があるという。
●Common box ツゲの仲間
西アジアに自生しているものを輸入していたと考えられる。おたまやスプーンなど台所用品として、または遊具として出土。新王国時代から知られている。
●African Iron wood 黒鉄材
熱帯アフリカ産、おそらくエチオピアからの輸入。
高級木材で、ハトシェプスト女王がプントから輸入していた品目の一つ。ハープ、長持、神像など高級かつ重要な品に多く使われた。
これは日本語の本だと「黒檀」と訳されることもある木材だが、実は黒檀ではない。そのへんの事情は以下を参照。
「黒檀」(ebony)の語源は古代エジプト語から。だがアジアの「黒檀」とエジプトの「黒檀」は別物だった
https://55096962.seesaa.net/article/500226743.html
●Common ash セイヨウトネリコ
レバノンあたりから輸入。弓や槍の材料や船といった軍事用途が目立つが、他に棺やボウル、箱などいろんなものの材料に名前が見える。
●Storax tree エゴノキ
ロードス島やトルコで生育。ほとんど利用の証拠はなく断片のみしか見つかっていないが、木材の質がいいので広く輸入されていた可能性は高いと考えられている。
●Turkye Oak トルコカシ/オーク
かつてオークと判定されていた遺物のほとんどが再鑑定で別の木材に修正されているが、それでも使われた事例は多い。面白いものでは、はしごとか、木工の道具とか。丈夫な木材ならではの使われ方をしている。
●Elm ニレ
トルコからイランが主要な産地で、エジプトに近い地域ではあまり育たないが、新王国時代には使われている事例が多いため、高級木材としてまとめて輸入されていたと思われる。丈夫な木材なので、耐久性の必要な品全般に使われた。
●Chirist's thorn キリストノイバラ
レパント、東アフリカ、メソポタミアなどで育つ。古王国時代から使われていた証拠がある。おそらくレバノンスギなどと一緒に輸入されていた。
十分な太さを持つ木のため、船や棺など大型のものにも使われた。
●Cedar od Lebanon レバノンスギ
エジプト本によく出てくる輸入木材。クフ王の船もこの木材とされる。
資料多い木材なので割愛。
●Cypress ヒノキ
ヨルダン、シリアなどで育つ。墓所の扉や神像を収める木製祠堂などに使われている。シーダーと同じく高級木材の位置づけだったと思われる。
●Aleppo pine アレッポパイン
イタリアかキプロスからの輸入。キプロスなどとの交易が行われていた際に持ち込まれたと思われる。残っている遺物としては末期王朝以降のものが多い。
●Lime ライム
ファラオ時代にはなかった可能性あり。
紀元後の棺としては発見されている。あったとすれば輸入品で、中央アジア方面からの遠距離輸入になる。
以上! ざっと「輸入木材」を書き出してみた。地味に生息域調べるのが大変だったな…
次回は「エジプト国内で手に入った木材」もまとめてみたい。
雨が全然ふらないんだから当然である。貴族の墓の壁画に庭園の絵とかあるのは、人が毎日水を運ばないと木が育たないからで、家の中に緑や池があるのは、超ぜいたくな風景だったから。要するに財を誇り、理想的な風景を描いているわけだ。
なので古代エジプトの遺物に木材を使ったものは少ない。年輪のある、しっかりした硬い木材は全て輸入品だ。
これは、近代の植物DNA分析技術の向上によって種類の特定が進んでいる。
今回はそんな「特定された木材のうち、輸入品であるもの」をメインに集めてみた。日本語名がついていなさそうなものもあるので、正確なところは英語綴りでぐぐってくだされ。
●Field maple コブカエデ?
南西アジアやトルコで生育。輸入品。
食器や家具、ナイフの柄など様々な用途が知られている。新王国時代の遺物が知られているが、それ以前はいつから輸入されていたか不明。
●Cork wood コルク
熱帯アフリカで育つ柔らかい材木。アフリカ中央部からの輸入品と思われる。
第三王朝の墳墓から発見されているが、おそらく家財道具の一部に使われていた。その他の用途は不明。
●Silver birch 樺の木の一種
ギリシャに生育。箱、弓、桶やナイフの柄、ほか小さな家財道具に限られる。おそらくあまりポピュラーな木材ではなかったが、古王国時代にはもうオリーブなどとともに輸入されていた可能性があるという。
●Common box ツゲの仲間
西アジアに自生しているものを輸入していたと考えられる。おたまやスプーンなど台所用品として、または遊具として出土。新王国時代から知られている。
●African Iron wood 黒鉄材
熱帯アフリカ産、おそらくエチオピアからの輸入。
高級木材で、ハトシェプスト女王がプントから輸入していた品目の一つ。ハープ、長持、神像など高級かつ重要な品に多く使われた。
これは日本語の本だと「黒檀」と訳されることもある木材だが、実は黒檀ではない。そのへんの事情は以下を参照。
「黒檀」(ebony)の語源は古代エジプト語から。だがアジアの「黒檀」とエジプトの「黒檀」は別物だった
https://55096962.seesaa.net/article/500226743.html
●Common ash セイヨウトネリコ
レバノンあたりから輸入。弓や槍の材料や船といった軍事用途が目立つが、他に棺やボウル、箱などいろんなものの材料に名前が見える。
●Storax tree エゴノキ
ロードス島やトルコで生育。ほとんど利用の証拠はなく断片のみしか見つかっていないが、木材の質がいいので広く輸入されていた可能性は高いと考えられている。
●Turkye Oak トルコカシ/オーク
かつてオークと判定されていた遺物のほとんどが再鑑定で別の木材に修正されているが、それでも使われた事例は多い。面白いものでは、はしごとか、木工の道具とか。丈夫な木材ならではの使われ方をしている。
●Elm ニレ
トルコからイランが主要な産地で、エジプトに近い地域ではあまり育たないが、新王国時代には使われている事例が多いため、高級木材としてまとめて輸入されていたと思われる。丈夫な木材なので、耐久性の必要な品全般に使われた。
●Chirist's thorn キリストノイバラ
レパント、東アフリカ、メソポタミアなどで育つ。古王国時代から使われていた証拠がある。おそらくレバノンスギなどと一緒に輸入されていた。
十分な太さを持つ木のため、船や棺など大型のものにも使われた。
●Cedar od Lebanon レバノンスギ
エジプト本によく出てくる輸入木材。クフ王の船もこの木材とされる。
資料多い木材なので割愛。
●Cypress ヒノキ
ヨルダン、シリアなどで育つ。墓所の扉や神像を収める木製祠堂などに使われている。シーダーと同じく高級木材の位置づけだったと思われる。
●Aleppo pine アレッポパイン
イタリアかキプロスからの輸入。キプロスなどとの交易が行われていた際に持ち込まれたと思われる。残っている遺物としては末期王朝以降のものが多い。
●Lime ライム
ファラオ時代にはなかった可能性あり。
紀元後の棺としては発見されている。あったとすれば輸入品で、中央アジア方面からの遠距離輸入になる。
以上! ざっと「輸入木材」を書き出してみた。地味に生息域調べるのが大変だったな…
次回は「エジプト国内で手に入った木材」もまとめてみたい。