古代エジプトのペンは「葦」ではなく「イグサ(灯心草)」。日本語使い分けどうしよう…

今までなんとなく、古代エジプトのペン(筆)のことを「葦」と書いてきた。だが、実は「イグサ」のほうが訳語としては正しい、ということにフト気づいてしまった。
実はプトレマイオス朝の頃にペンの種類が変わり、文字体が変化したのだが、その前後でペンに使われる植物の種類が変わっているのだ。

●王朝時代
Juncus maritimus →日本語だと「イグサ」または「灯心草」いわゆるRush

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●紀元前後以降
Phragmites aegyptiaca →Phragmitesは日本語だと「葦」 いわゆるReed

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資料によっては両方「葦」と書かれているのだが、前者を「葦」と訳してしまうと、時代によって変化した新しい時代のペンの表現が使い分けられなくなってしまうのだ。そして時代の差を考慮せずに王朝時代の筆記具も「Reed」と書いてある資料も多い。博物館の収蔵品リストでも、「初期のパレット」という分類はあってパレット本体の材質に関する記述はあっても、ペンの材質について言及されているものがめったにないので見逃してしまった。
だが世の中のエジプトマニアたちはとっくに気づいていて、「専門家ですら材質を気にしていない」とツッコミを入れていたのだ。
それで気付いて資料を探しに行った、というのが今回の話。


詳細は、たとえばこのへん↓とかにある。
https://kargashina.wordpress.com/wp-content/uploads/2017/11/110917-egyptian-reed-pen-1.pdf

「イグサ」ペンがこれ。見慣れたエジプト遺物スタイル。
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「葦」ペンがこれ。太くて先端が尖っている。
プトレマイオス朝終盤からの文字が細く硬いものになっていくのは、筆記具の変化のためだ。

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というわけで、古代エジプトのペンの材質を正しく書くなら「イグサ」「燈心草」などになる
各所の方は次回からこのへんもよろしくお願いします…