コロンビアの密林の奥に描かれた岩絵と描かれたものたち 岩絵の意味はどこまで読みとけるのか

アマゾン奥地の岩絵にアクセスできるようになったので、ドローン飛ばして画像記録して研究はじめたよ! という論文が出ていた。付近には先住民のNukak Makú、Jiw、Tukano、Desanaなどの部族が住んでいるそうなので、おそらく保護区の一部とかなのかと。
先住民はこの岩絵を描いた人たちの直接の子孫の可能性があり、絵があること自体はおそらく昔から知っていたはずだが、さすがに一万年以上前だと「なんでこの絵かいたの?」とか聞かれてもわからんだろうな…。うちら日本人が土偶の意味よくわからんのと同じで。

元論文
Animals of the Serranía de la Lindosa: Exploring representation and categorisation in the rock art and zooarchaeological remains of the Colombian Amazon
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278416524000448?via%3Dihub

岩絵が見つかった場所は、ここ。南米北部のコロンビアである。
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岩絵はギアナ高地に似た形の古い地形の壁面に描かれている。こういう台地は「テプイ」と呼ばれる。
硬い岩の部分だけが浸食に耐えて生き残ったもので、岩盤が安定しているので岩絵も残ったのだ。多くの絵は、Cerro Azuls呼ばれている、ちょっと窪んだところに残っているらしい。
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コロンビアというと南米のイメージだが、ただの南米ではなくジャングル地帯である。マヤ文明が興るよりはるか以前、約1万2千年前ごろに描かれたものではないかとされている。
ホモ・サピエンスが南米に到達した時期は、学者さんよって採用する説が異なり、だいたい3万年前から1万5千年前あたりである。どの説を取るかによって、この岩絵を描くまでの滞在時間は変わるのだが、時期的に、気候が安定して定住生活しはじめた頃ではないかと思う。(旧大陸ではちょうど、農耕が始まった頃の時期になる)

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で、この絵、面白いのが「哺乳類と人間が多数」「魚はほとんど出てこない」というところだ。
先住民の食生活では、川魚がかなりの割合を占めるという。この岩絵の近くで出土している骨もほとんどが魚。でも絵に出てこない。
特定されている動物は、シカ、鳥、ペッカリー、トカゲ、カメ、バク、コウモリなどで、トーテムやアミニズム的な信仰に関係ししているのでは、という話もあるようだが、今のところよくわかっていない。

アミニズム的なものだとすれば、たとえば、狩猟におけるタブーを表現したものという可能性もあるそうだ。
現代のコロンビアのヌカク族には、女性はペッカリーを食べてはいけないというタブーがあるそうだが、男性は食べていいらしい。動物と人間を描いているのは、食べていい動物、だめな動物などを記録したものではないか…という仮説だ。あくまで仮説だが。

さすがに観察して統計とっただけでは意味はわからないのだ。
1万年以上も前に描かれたものとすれば、当時の人たちの見えていた世界は現代人とはかなり異なっていたはずだ。結局は、「宗教的なものかもしれない」という話に留まってしまう。
だが、絵を眺めながら、いろいろ想像してみるのは楽しい。


何も小難しいことを考えなくても、眺めているだけでも楽しい。
この独特な感じが妙にカワイイw 写実的とも言い切れない、なんていうか、ヘタウマな感じというか。南米だとプレ・インカの壷絵のデザインにちょっと似てる。あとクルクル巻いたしっぽみたいなのが生えてるやつは、ナスカの地上絵のクモザルを思い出させるデザイン。どこかで文化がうっすら繋がっているのかもしれない。
近くにまだ岩絵が隠れていそうだし、アマゾン岩絵写真集とか出してほしいなあ。

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