カマキリは積雪量を予測して卵を生んでいない。最新の研究結果は果たして定着するのか

少し前、「セミの成虫の寿命は一週間ではなく一ヶ月が正しい。一週間というのは俗説」という研究が出た。
https://www.asahi.com/articles/ASQ8C67CFQ85UTFL00R.html

実際に捕まえた個体に記しをつけて確認した結果なので妥当性は高く、専門誌に論文も載った。だが、その時は話題になったもののの世間的にはまだ俗説の「一週間」のほうを信じている人も多い。いったん定着してしまった俗説は、打ち消すのがなかなか大変なのだ。

そして今回は別の俗説、「カマキリが高いところに卵を生む年は雪がたくさん降る」というもの。
実はこの説、いったんは学説として妥当性があるとして定着したものの、その後、否定され取り消された説なのだ。

正しい説として認められた当時(1997年)
https://www.nikkei-science.com/page/magazine/9705/kamakiri.html

>「カマキリが高い所に産卵すると大雪」という言い伝えには,十分信憑性があることがわかった

2335668.png

誤りとされた(2009年)
https://www.brh.co.jp/salon/labdiary/2009/post_000019.php

>カマキリは積雪量を予測していない

35661.png

本も出ているらしい。
https://univ-journal.jp/116278/?cn-reloaded=1

カマキリは積雪量を予測して、雪が多い年は高いところに卵を生み、少なければ低いところに生む、というのは既に否定されている。
根拠としては以下のような感じになっている。

・そもそも雪に埋もれても卵は普通に孵化する。埋もれると窒息するという前提が間違い
・というか寒冷地では雪の中のほうが温かいので気温を考えたら雪に埋もれる位置に卵生んだほうが有利
 (※寒冷地では雪の中のほうが温かい、というのは冬山登山の知識としても知られている。かまくらの中を想像してほしい)
・そもそも雪に埋もれるのがイヤなら、積雪量ととか関係なく絶対に埋もれない岩陰や高い位置に卵生んだほうが早い

どれも、言われてみれば「せやな…」としか言いようのない根拠であり、実際に実験してみたら、卵を生む高さは単純にカマキリの生まれた土地の環境によるものだったそうなので、単純に、北国のカマキリほど高い位置に卵を生みがちち、という話なのだと思う。
(本に詳しく書かれているそうだ。面白そうなので、これから探してみようと思う。)

常識が更新されていくのは、どこの研究分野でも同じ。調べ直してみると自分の覚えていた知識が古かった、ということはよくある。
これもまた、なかなか定着しない昆虫にまつわる俗説の否定研究の一つといえるだろう。