ヒッタイトの粘土板、「太陽神の消失」

ルーブル美術館に収蔵されているヒッタイトの粘土板の中に、神話の書かれているものがある。その内容が結構面白そうなのでメモしておこうと思う。
内容は「太陽神が霜の神(悪霊?)に捕らえられた、嵐の神は救出しようとするが上手く行かない」というもの。おそらく冷害などの天変地位を神話として理由付けようとしたものなのだと思う。
ただ、中の人がフランス語はよく出てくる単語くらいしか分からんレベルなので、自動翻訳で頑張った内容しか把握出来ていない。あくまで「メモ」「概要」レベルの内容である。

Tablette dite "de Yozgat"
https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010123048

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海の神が海の底に太陽神を隠したところから物語が始まる。
霜の化身である神ハヒマが国を麻痺させ、川を干上がらせた。

神々の長である嵐の神は他の神々に命じて太陽神を探しに行かせるが見つからない。
戦争の神は霜の神のもとにたどり着くが麻痺して囚われてしまう。
(その後の展開は不明)

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というわけで、一部しか残っていないが、神話の典型的なパターンから考えると、このあとも何柱かの神々が送り込まれ、最後の挑戦者が知恵を絞る or 何らかの取引をすることによって太陽神の奪還に成功するのだろう。太陽神はおそらく最後には戻って来る。でなければ、一過性の異常気象にはならないからだ。

追記として、ヒッタイトの神話には、こうした「神の消失」モチーフが多いという話もあった。
太陽神と嵐の神はヒッタイトの高位神の属性だが、太陽神だけでなく嵐の神のほうが行方不明になるパターンや、植生の神テリピヌ、人の保護者であるハンナハンナなどが行方不明になるパターンもあるらしい。

太陽神が行方不明で霜の神が台頭しているこの神話だと冷害を思わせるが、植物の神が行方不明なら冷害か天候不順による不作、人の保護者が行方不明なら疫病の流行などが想像できる。「神の不在」が不幸や天災を呼ぶという考え方は、メソポタミアによくある神話のストーリーなので、おそらくそっちから来た伝統だろう。
(エジプトは神と土地が深く結び付けられているせいか、不在になるという神話は、セクメト女神の遁走くらいしか記憶がない。神が仕事サボるか、気分を悪くすることはある。というかラー様…)

この粘土板に書かれた神話が成立した時代は、もしかしたら何か、太陽神が隠れたとみなされるほどの天災が起きていたのかもしれない。