国家とインフラ:スーダン東部でダム決壊、原因は「内戦に必死でメンテしてない」

ほとんどニュースで流れなくなってしまったが、2023年に始まったスーダン内戦は絶賛継続中。 しかも反政府軍側がちょっと有利。というかダルフールの現地勢力が台頭して三つ巴になったり、追加で別の勢力もでてきたりで、今こんな状態。首都近辺は反政府組織に抑えられちゃってる。まあ、落ち着いてインフラ整備なんかやってられる状況じゃない。

Sudanese civil war (2023–present)
https://en.wikipedia.org/wiki/Sudanese_civil_war_(2023%E2%80%93present)

225669.png

そんな中、東部でダム決壊が起きてしまった。
大雨が降ったのが直接の引き金だが、それ以前の問題として、インフラ整備に人手も金も割かれていないことが挙げられるという。

ダム決壊で30人死亡、20集落壊滅 スーダン
https://www.cnn.co.jp/world/35223201.html

2567776.png

Flood surge in Sudan bursts dam, destroying villages and killing dozens
https://www.theguardian.com/world/article/2024/aug/26/flood-surge-in-sudan-bursts-dam-destroying-villages-and-killing-dozens

Locals dig graves for flood victims after Sudan dam collapse(映像)
https://edition.cnn.com/2024/08/27/world/video/sudan-dam-collapse-flood-victims-ldn-digvid

Arbaat damで検索すると場所は出てくる。
英語記事のほうにより詳しい内容がある。

・内戦が始まって以降、国内のインフラはガタガタ
・雨が振り始めて以降、ダムが埋まり始めていたのは分かっていたが警告などは発されていなかった

→国内インフラの整備が出来ているか、気象情報が適切に広報されていれば、ここまで被害はでていなかった可能性がある

これは、去年起きたリビア東部でのダム決壊と同じ原因。そして、乾燥した気候であり、雨季の突発的な豪雨に耐えるためのダムであること、ダムの構造がロックフィル型であることも共通している。決壊の仕方も、決壊後の被害の出方も。

「想像を絶する光景」 リビア洪水の被災者、「その時」を語る
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-66816541

グーグルマップで現地情報を見ると分かるが、川ははっきりとした河床を持っておらず、普段はほとんど干上がっており、雨季にだけ水が流れる場所、という雰囲気だ。そんな中に村が点在している。ここに、ダムの決壊によって一気に大量の水が流れ込んだら、そりゃ全て根こそぎだな。という感じ。

36770.png

ryiuiio2.png

砂漠では、乾きで死ぬよりも洪水で死ぬ人のほうが多い。砂漠に降った雨は地面に染み込まず、乾いた地面を谷へ谷へと滑り落ちるうちに奔流となる。何年か前にニュースで流れていたペトラ遺跡の洪水、近年だとドバイの洪水。ほんの数十ミリでも町が沈む。
砂漠の国エジプトでも、古代からこのテの洪水は起きており、対策の痕跡もある。

エジプト東方砂漠の局地的な大雨と城壁の関係
https://55096962.seesaa.net/article/201204article_32.html

現代スーダンにも洪水対策&砂漠の貯水葉でダムがたくさんあるのだが、それらのインフラがメンテされずにグダグタになっているとなると…。この先、同じような事故は他でも起きる可能性がある。これはマズい。

で、今回のアルバート・ダムの決壊だが、何がマズいかというと、スーダン最大の港町、ポート・スーダンの水源が絶たれてしまったということなのだ。
そう、このダム、実はポート・スーダン近辺でまとまった真水が採取できるほぼ唯一の場所。周囲砂漠だから。
内戦で焼け出された人たちへの支援物資もここから送ってたりするのに、水源は壊滅、内陸に続く道も寸断。インフラ復旧を急がないといけない。でも政府は防衛に必死でそんな余裕ない。わりと絶望的。


国家が正常に機能しなくなるとこうなるのだということを、日本がこうなっていないのは日々見えないところで税金として支払った金でインフラがメンテされているおかげなのだということを、我々は他山の石としてしっかり心に刻みつけておかないといけない。

理想を掲げ革命を起こしたリビアは、長らく続く混迷でインフラ投資が止まってああなった。
内戦続きのスーダンは、インフラ整備に回す余力が無くなってこうなった。
国民が無事なら国家など無くともよい、などとお花畑な理想論を掲げる奇妙な人も世の中にはいるが、現実はこうである。
国家があれば必ずしもインフラが整備されるわけではないが、少なくとも、国家がまともに機能しなければ、生活基盤となるインフラが保証されないことだけは確かだ。(無駄なインフラ投資のあるなしとか、効率的なインフラ整備の方法とかは、その次の段階に来る)


愚か者でも歴史に学ぶことはできる。特に天災の多い日本では、この感覚は忘れては生きていけないと思うのだ。