古代エジプト人が栽培した大根(Radish)は、現代日本人の知る大根(Daikon)ではない、という話

前にも書いたけど、今もわりと勘違いしている人はいるので再掲。
ヨーロッパ・北アフリカで食べられている「大根」は、いわゆるラディッシュのこと。大根とラデッシュは同じ品種から改良されて生まれた仲間だけど、見た目も味もかなり違う。そしてヨーロッパ市場では明確に区別されている。

古代エジプト人がラディッシュの仲間を食べていたことは確かなのだが、それは日本人が思う「大根」ではない。


●大根の来た道

原産地から日本までの伝来ルートは、大陸を横断し、中国を通ってはるかな道のり。入ってきたのは弥生時代くらいとされる。
この距離を移動するうちに変化し、さらに日本でも長い年月をかけて品種改良された。距離と時間をこれだけ隔てているので、「古代エジプトのラディッシュと現代日本のラディッシュ(大根)が同じなわけないだろ」という話になる。

https://www.sciencedirect.com/topics/agricultural-and-biological-sciences/raphanus
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●現代ヨーロッパで人気のラディッシュ

画像検索でもすれば分かるが、圧倒的に赤いタイプ。先端がわずかに白いものも多い。
この鮮やかな赤いタイプは比較的最近の品種改良によるものらしい。つまり古代エジプトの時代にあったものかどうかはわからない。

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●現代のラディッシュ(Raphanus sativus)の仲間たち

Wikipediaに出ている主な系統でこれだけ種類がある。アジアで人気の品種は明確に「daikon」として区別されている。
あまり見かけないが緑や黒ダイコンの系統もある。このうち黒いダイコンは、ヨーロッパでは「古い品種」とみなされており、原産地はシリアなど近東と考えられているらしい。つまり古代エジプトで栽培された品種がこれの可能性もある。

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●そもそも大根の外見などの現物が残っていない

古代エジプトの大根栽培は、中王国時代・第12王朝頃から始まっていた可能性がある。遺跡から大根の種が出ているからだ。
ただ、外見がわからない。
現代の主な系統、赤・緑・黒・白、どの色だったかすら分からないのだ。
水分の多い野菜なので残りにくかったのもあるだろうし、壁画で供物の絵に野菜が描かれていることはあるが、ラディッシュと特定されている絵がないので絵からの判別も難しい。
つまり古代エジプト人がラディッシュの仲間を食べていたことまでは確実と言えそうだが、古代の品種が分からないという意味で、どんなタイプのラディッシュだったかというのが言えないのだ。

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●まとめ 古代ラディッシュは「大根」ではない

というわけで、外見が分からないのはともかくとして、古代エジプト人が食べていたラディッシュは、日本人が食べているいわゆる「大根」とは別モノである。
そもそも「Daikon」自体が、日本近辺で食べられているアジアの品種だから、そこは断定できる。そして、古代エジプト人が食べていたラディッシュが黒ダイコンの系統だった場合、実際はゴボウみたいな見た目だった可能性もある。


Radishを何も考えずに翻訳してしまうと「大根」と置き換えられてしまうのだが、大根と書いてしまうとみんな日本の白いやつを想像するので、使わないほうが無難だと思うんですよね…。