AI利用でナスカの地上絵をさらに発見、用途の分析なども始まる
ナスカの地上絵をAIで追加発見! というニュースが流れていた。詳細は山形大のプレスリリースで見られる。
AIによってナスカ調査が加速したことで、既知の具象的な地上絵の数がほぼ倍増し、地上絵の目的が明らかになった
https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/information/press/20240924
英語論文は以下だが、内容は上記のプレスリリースを少し詳しくしたもの。記事タイトルも同じ。
「地上絵の目的が明らかになった」は、ちょっと断言しすぎじゃね? と思ったが、まあ、だいたいは分かったと言えるのかもしれない。
AI-accelerated Nazca survey nearly doubles the number of known figurative geoglyphs and sheds light on their purpose
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2407652121
さて、この研究だが、実は去年すでに一度、論文が出ている。その時の記事がこちら。
未知のナスカの地上絵をAIで探す、試行錯誤が面白い
https://55096962.seesaa.net/article/499712152.html
AIを使った地上絵の発見は、まずAIにサンプルを学習させ、よく似たパターンのものを「確からしさ」で検出させるというものだ。パラメータ調整しながら使い物になるAIに育てて、それから実用。
去年の段階では、ほぼ実用化が見えてきたぞというところまでだったので、そこから実際に地上の膨大な画像データを読み込ませる→確からしさの高い地点に実際に人間が行って確認→特定 というルーチンを回して、今回の発表に至ったようだ。
以下のように、メッシュ上で地上絵のある確率の高い場所が濃い色に出る。そこを訪問して確認してまわっている。

なかなか大変な作業に思えるが、なんといってもAIは一瞬で人間の数百人とか数千人ぶんの仕事をやってくれる。おまけに不眠不休でも問題ない。人力で写真とにらめっこするより全然早いのだ。
そうして。AI投入で作業がスピードアップしたことで、なんと300以上もの新たな地上絵が見つかったという。スゴイ。
これぞ正しいAIの使い方…。成功事例としてAI白書あたりに載ってきそう。

で、これだけ地上絵が見つかってくると、「どこにどういう地上絵が分布しているか」の分析も出来るようになってくる。
ここが重要で、山形大のプレスリリースでは以下の2種類に分けて考察されている。ここが「目的が分かった」と言ってる部分。
・面タイプの地上絵
小型のゆるふわ系。
→人間自身や人間によって飼育された家畜、加工された首級などが主に描かれている。
これらの地上絵は通常、ナスカ台地を縦断する曲がりくねった小道から見える。おそらく個人または小規模なグループが制作し、観察していたと考えられる。
・線タイプの具象的地上絵
大型の洗練された系。
→主に野生動物が描かれている。これらは、直線や台形の地上絵ネットワークに沿って分布しており、おそらく共同体レベルで儀式的な活動のために制作・使用されたと考えられる。
この中でも「小型のものかおそらく個人で描いている」「古代の道の側にある」という傾向が分かったのは重要。つまり、これからの探索も、古代の道ぞいにある丘陵の側面を探せば、新たな地上絵が見つかる可能性が高いということ。そして個人で描いてたとすると、マジメに「落書き」「暇つぶし」の可能性もでてくる…いやまあ、なんかの「目印」とかの可能性もあるけど。
古代の壁画とか岩絵とかと同じく、「で、結局なんでこれ描いたの」は分からないままなのかもしれない。
大型のものは、指揮する人がいた上で、何人かで描かないとダメだろうから、儀式用と言われるのは分かる。
数が揃えば統計分析も出来るだろうし、見比べて傾向を探ることも可能だ。今後の研究が実に楽しみ。
=================================
参考までに、過去に書いた記事も。
新しく見つかったナスカの地上絵のネコがヘタ過ぎると話題に…ヘタ言うな、ヘタウマ目指してた時代なんやぞ!!
https://55096962.seesaa.net/article/202010article_16.html
今回のような「ゆるふわ」な地上絵は地上絵っぽくない、と言われることも多いのだが、ゆるふわなほうが実は正当というか、古くから描かれていて数も多い。観光地化されてるナスカの地上絵は最もあとの時代の完成されたよそゆきの逸品と見るべきかもしれないる
意外と知られていない「ナスカの地上絵」の最近の事情。2016年に世界遺産としても名称変更されてますよー
https://55096962.seesaa.net/article/202010article_19.html
ナスカだけじなく、周辺地域からも地上絵が見つかるようになり、世界遺産名が変更された。今回見つかっている地上絵も、探索エリアを広げたから見えてきたものと言える。
AIによってナスカ調査が加速したことで、既知の具象的な地上絵の数がほぼ倍増し、地上絵の目的が明らかになった
https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/information/press/20240924
英語論文は以下だが、内容は上記のプレスリリースを少し詳しくしたもの。記事タイトルも同じ。
「地上絵の目的が明らかになった」は、ちょっと断言しすぎじゃね? と思ったが、まあ、だいたいは分かったと言えるのかもしれない。
AI-accelerated Nazca survey nearly doubles the number of known figurative geoglyphs and sheds light on their purpose
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2407652121
さて、この研究だが、実は去年すでに一度、論文が出ている。その時の記事がこちら。
未知のナスカの地上絵をAIで探す、試行錯誤が面白い
https://55096962.seesaa.net/article/499712152.html
AIを使った地上絵の発見は、まずAIにサンプルを学習させ、よく似たパターンのものを「確からしさ」で検出させるというものだ。パラメータ調整しながら使い物になるAIに育てて、それから実用。
去年の段階では、ほぼ実用化が見えてきたぞというところまでだったので、そこから実際に地上の膨大な画像データを読み込ませる→確からしさの高い地点に実際に人間が行って確認→特定 というルーチンを回して、今回の発表に至ったようだ。
以下のように、メッシュ上で地上絵のある確率の高い場所が濃い色に出る。そこを訪問して確認してまわっている。

なかなか大変な作業に思えるが、なんといってもAIは一瞬で人間の数百人とか数千人ぶんの仕事をやってくれる。おまけに不眠不休でも問題ない。人力で写真とにらめっこするより全然早いのだ。
そうして。AI投入で作業がスピードアップしたことで、なんと300以上もの新たな地上絵が見つかったという。スゴイ。
これぞ正しいAIの使い方…。成功事例としてAI白書あたりに載ってきそう。

で、これだけ地上絵が見つかってくると、「どこにどういう地上絵が分布しているか」の分析も出来るようになってくる。
ここが重要で、山形大のプレスリリースでは以下の2種類に分けて考察されている。ここが「目的が分かった」と言ってる部分。
・面タイプの地上絵
小型のゆるふわ系。
→人間自身や人間によって飼育された家畜、加工された首級などが主に描かれている。
これらの地上絵は通常、ナスカ台地を縦断する曲がりくねった小道から見える。おそらく個人または小規模なグループが制作し、観察していたと考えられる。
・線タイプの具象的地上絵
大型の洗練された系。
→主に野生動物が描かれている。これらは、直線や台形の地上絵ネットワークに沿って分布しており、おそらく共同体レベルで儀式的な活動のために制作・使用されたと考えられる。
この中でも「小型のものかおそらく個人で描いている」「古代の道の側にある」という傾向が分かったのは重要。つまり、これからの探索も、古代の道ぞいにある丘陵の側面を探せば、新たな地上絵が見つかる可能性が高いということ。そして個人で描いてたとすると、マジメに「落書き」「暇つぶし」の可能性もでてくる…いやまあ、なんかの「目印」とかの可能性もあるけど。
古代の壁画とか岩絵とかと同じく、「で、結局なんでこれ描いたの」は分からないままなのかもしれない。
大型のものは、指揮する人がいた上で、何人かで描かないとダメだろうから、儀式用と言われるのは分かる。
数が揃えば統計分析も出来るだろうし、見比べて傾向を探ることも可能だ。今後の研究が実に楽しみ。
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参考までに、過去に書いた記事も。
新しく見つかったナスカの地上絵のネコがヘタ過ぎると話題に…ヘタ言うな、ヘタウマ目指してた時代なんやぞ!!
https://55096962.seesaa.net/article/202010article_16.html
今回のような「ゆるふわ」な地上絵は地上絵っぽくない、と言われることも多いのだが、ゆるふわなほうが実は正当というか、古くから描かれていて数も多い。観光地化されてるナスカの地上絵は最もあとの時代の完成されたよそゆきの逸品と見るべきかもしれないる
意外と知られていない「ナスカの地上絵」の最近の事情。2016年に世界遺産としても名称変更されてますよー
https://55096962.seesaa.net/article/202010article_19.html
ナスカだけじなく、周辺地域からも地上絵が見つかるようになり、世界遺産名が変更された。今回見つかっている地上絵も、探索エリアを広げたから見えてきたものと言える。