氷河融解でスイス・イタリアの国境線が変更に。思い出すのは、かつての「エッツィ」所有権事件

スイスとイタリアの間の高山地帯で氷河が融解し、氷河上にあった国境線が移動することなった。
この国境変更は2000年にも行われており、近年では2度めだという。

スイスとイタリアが国境を一部変更へ 氷河融解の影響
https://www.cnn.co.jp/world/35224463.html?ref=rss

実際にどう国境が移動するのかわかりにくいので、他の記事を見てみよう。
どうやら両者の取り決めとして、氷河の頂点を国境とする というものだったようで、その頂点が大きく減少しイタリア側に寄ってしまってるのが現状らしい。つまりイタリア側の損である。
そのせいなのか、この記事を書いている時点ではイタリア側はまだ調印していない。

Melting glaciers force Switzerland and Italy to redraw part of Alpine border
https://www.theguardian.com/environment/2024/sep/29/melting-glaciers-switzerland-italy-alpine-border-matterhorn

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地図で言うとスイス左下の◯つけたあたり。

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環境・気候変動による国境線の変更としては、最近だとアラル海が干上がったことによる国境の新規設定などがあった。
氷河や雪原、サンゴ礁などを国境に設定してる国は、今後、国境変更を余儀なくされるところが増えてくるのかなあ、と思った。


で、イタリアの国境といえば、思いだすのはエッツィの帰属問題である。
エッツィとは、アイスマンの通称で呼ばれる、氷河から見つかった古代人の遺体のこと。見つかった場所はスイスとオーストリアの間の南チロルで、ここも氷河によって国境が設定されている。
じつは当初はオーストリア側がこの遺体の所有権を主張していて、「エッツィ」という愛称もオーストリア側がつけたものだった。だが、のちに発見場所がイタリア側にわずか100m前後ほど入っていたことが判明し、アイスマンはイタリアに引き渡されることになる。

つまり、もし発見が50年早いか遅いかしていたら、もしかしたらエッツィの帰属論争は別のものに変わっていたかもしれないのだ。(氷河の流れ方によって、オーストリア側に寄るかイタリア側に寄るかは変わる)

今や考古学会のスターである冷凍保存遺体、エッツィ。気候変動による氷河の融解によって現代に蘇り、数奇な運命を経てイタリアという国に落ち着いた。彼の生きていた時代には、国境など無かったのだが。