考古学論文と見せかけた巧妙なサツマイモ・キャンペーン「ニュージーランド先住民は南米産サツマイモを栽培してた!」

先行研究としては以下を参照。
ポリネシアで古くから栽培されているサツマイモが、どうも大航海時代に持ち込まれるより古くから存在するらしい→独自に南米と交易したのでは? という説が元々あり、それが最近では確実視されてきている。

①サツマイモはどこから来たのか。その起源を巡る様々な研究
https://55096962.seesaa.net/article/201810article_5.html

②イースター島住民は南米と物資の交換をしてたかもしれない、という研究
https://55096962.seesaa.net/article/502749879.html

サツマイモだけでなく、人間も南米と遺伝子の交換をしていた(つまり、少数でも相互に行き来があった)ことが分かってきたからだ。
いちばん最近の論文だと以下。西暦1,400年前後に人と物資の行き来があった、という証拠がだいぶ増えてきている。

③イースター島は「モアイ作りすぎて戦争して人口が減った」わけではなかった、という論文と最近のトレンドについて
https://55096962.seesaa.net/article/504824568.html

で、今回は、そのネットワークにニュージーランドまで組み込まれていたという論文である。
ここまでの研究のあらすじを見ていれば、ああなるほどねという感じではある。②の論文で使われているのと同じく、イモを食べるのに使っただろう調理器具などからデンプンを採取して植物の種類を特定しており、90-95%の確率で南米から持ち込まれたサツマイモ(バタタ)だろうと言ってるので、あとから覆ることはあまり無さそう。

American sweet potato and Asia-Pacific crop experimentation during early colonisation of temperate-climate Aotearoa/New Zealand
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/american-sweet-potato-and-asiapacific-crop-experimentation-during-early-colonisation-of-temperateclimate-aotearoanew-zealand/B6446CB196635B1CDB44DC7506F696C8#


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↑なんかいつの間にかえらい研究進んでて、あっちこっちのサイトでサツマイモデンプン検出されてた

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↑今回の発掘サイト

ニュージーランドへの移住者はポリネシアから来てるので、イモ種持ってきたってところまでは想定内。
面白いのは「サツマイモ栽培してた時期とモアを狩ってた時期は重なってる」、つまり栽培と狩猟並行してただろう、という話だ。その後、モアは絶滅してしまうのだが、絶滅後も人が住み続けられたのは農耕技術のおかげかもしれない。

また、このサツマイモは14世紀から始まる小氷河期を乗りきって栽培が続けられたようで、移住者が気候変動でも生き残れたのはサツマイモが役立ったかもしれない、とまで言っている。気候変動に強い作物! やったぜ僕らのサツマイモ! みたいなノリの結語が書かれている。うん、まあ…うん…w 美味しいけどねサツマイモ。
でもポリネシアの人々が手にしていた作物はイモだけじゃないし、家畜も飼ってたわけだから、イモのお陰で大洋に漕ぎ出せたみたいな書き方はちょっと言い過ぎかなっては思うよ。


あと気になったのは、西ポリネシアだけ南米から来たサツマイモじゃなく、ヨーロッパ経由のサツマイモ系統になってるって話。
たまたまここだけイモが絶滅してしまって後から来た系統に上書きされちゃった、とか、栽培条件が悪かった、とかなのだろうか。ここは今度調べてみようと思う。

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