ミイラの棺をマトリョーシカ形式に。最上級の埋葬は最大8層

古代エジプトのミイラは、こんな感じでマトリョーシカみたいに何重にも棺を重ねていることがある。
(この写真は第二十五王朝のもの。大英博物館サイトより)

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木製の棺は三重までしか見たことがないが、その外側にさらに石製の棺をかぶせていることもある。
この棺重ね、なんのためにやってるのかよくわからんなと思っていたのだが、一説によると、「死者の変身」を意味しているかもしれないという。

”Egyptologist Anders Bettum of the University of Oslo in Norway says the practice was intended to ensure the transformation of the deceased from human to deity."
https://www.upi.com/Science_News/2013/08/26/Ancient-Egyptian-elite-interred-as-one-mummy-but-in-multiple-coffins/80781377560896/

残りの良いツタンカーメンの事例だと、

・ミイラにマスクを被せ、装飾品などを身に着けさせる
・一つめの棺
・二つめの棺
・三つめの棺
・石棺
・木製厨子
・埋葬室
・墓そのもの

と、全体で八重の装置となっており、ミイラから出た魂は、この八重の保護層を抜け出して最終的に冥界へと向かう。おそらくこれが、肉体を保護するための儀礼のオプションを最大化した埋葬形態だったと思われる。

逆に言うと、いま棺が一つか二つしか見つかっていない他の王たちは、残りの棺が転用されたか破棄されて行方不明になっているだけだと思われる。たとえば、埋葬室と石棺しか見つかっていない王なら、三重の木製棺と厨子は、後世に再利用されたなどの理由で失われているに過ぎないのだ。
正式な埋葬では、棺はおそらく、一つでは足りなかったのだろう。

なお、「死者の変身」は、死者の書の呪文の中に、長々とした変身の呪文が出てくる。
なので、死者の肉体に重ねられた棺や厨子が死者の変身を助けるためのものかもしれない、という思想は、ありそうな解釈だと思うのだ。

マジカル変身★死者の書! 呪文で変身できるABC
https://55096962.seesaa.net/article/201509article_2.html