古代エジプト人の平均寿命について

古代エジプト人の平均寿命は25歳、という言説を見かけて、ん? 短すぎね? と思った件について。
ただ、「平均寿命とは、0歳における平均余命のこと」とされる。生まれたばかりの赤ちゃんが生存するであろう平均年数を指すものなので、乳幼児の死亡率が高ければ当然低くなる。乳幼児まで含めた平均寿命という意味では、確かに25歳くらいかもしれない。

というわけで、以下の資料から関連する部分を抜粋しておく。


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https://lsa.umich.edu/content/dam/kelsey-assets/kelsey-publications/pdfs/life-death-and-afterlife.pdf

まず、乳幼児の死亡率の高さは、古代世界どころか近代まで全世界どこでも同じだった。子どもが滅多に死ななくなったのは、人類史的にごく最近の話である。

乳幼児期の死亡率の高い時期を越えてある程度大きくなった場合の寿命は、古代エジプトのエリート層の男性の場合、平均して45~50歳くらいとされる。何の病気にもかからなければ50歳代まで生きることも珍しくなく、それより長生きしたことが確かなミイラも多数ある。最も長生きしたラメセス2世では、90歳代での死亡と考えられている。

女性の場合は、出産という危険を伴うイベントがあり、出産時の死亡率が高いため、エリート層でも若い死亡者が増える。もし出産で死ななければ、女性の場合も男性と同程度までは寿命があったと考えられる。ハトシェプスト女王とされるミイラなどは、40歳を越えての死亡とされる。

ただし、これは、仕事上の危険を伴わない生活をしていて、食物の栄養も足りているエリートだからである。
社会の下層に位置する、多くの労働者たちには当てはまらない。そして、下層の労働者たちの場合、亡くなってもミイラにせず、立派な墓に入れることもないため遺体が残っておらず、死亡年齢が分からない。

下層ほど寿命は短くなっただろうことが予想され、別の資料だと、労災を伴う技術者(たとえば、粉塵の中で働く墓堀人)や農民だと、寿命は30歳くらいではないかと書かれていた。自分もそんなもんだろうと思う。30-35歳で死亡していたとするならば、男は20歳までには結婚して息子をもうけろと諭す教訓文学の内容や、子どもが成人しないうちに亡くなる親が多かったこと、寡婦に関する救済策があったことなどとも整合性が取れる。

古代エジプト世界では、おそらく、40歳は「老人」なのだ。そして、人生50年どころではなく、30歳だと思って一生を駆け抜けなくては間に合わなかったのだ。これは、家継いだら速攻で墓つくり始めないと間に合わない。マジで間に合わない。だらだら遊んでる時間とかモラトリアムしてる余裕ない。人生終わっちゃう。

実際には、王族や高官のミイラで50歳越えてる人も少なくはないので、老人がいないわけではなかったのだろうが、かなり珍しかっただろうな…と思うのだ。

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おまけ

昔の人は「近頃の若い者は」って言わないのではなく言えないのでは?(寿命的に) という推測
https://55096962.seesaa.net/article/201701article_14.html