ノルウェーのコンティキ号博物館、遺物を追加でイースター島に返還。トール・ヘイエルダールの意味も変わってきた?
ノルウェーのコン・ティキ号博物館に収蔵されているラパ・ヌイ(イースター島)の遺物の返還が、追加で行われるというニュースが流れていた。
「調査が終わったら返す約束だったし、調査はもう、だいたい終わったからね」という話。最近の調査のおさらいがてら、取り上げてみたいと思う。
Norway's Kon-Tiki museum returns human remains to Easter Island
https://phys.org/news/2024-11-norway-kon-tiki-museum-human.html
前回、この返還ニュースを取り上げたのは2019年。さらに追加で、人骨なども返還されるという。これらの遺物は、1950年代にヘイエルダールがイースター島にたどり着いた時に持ち出されたもの。
ノルウェーのコンティキ号博物館、遺物をイースター島住民に返還。
https://55096962.seesaa.net/site/pc/preview/entry
トール・ヘイエルダールって誰よ? という話だが、簡単に説明すると、当時若者だった世代には大ヒットした、ひとむかし前の冒険家である。
太平洋ど真ん中にあるイースター島の住民がどこから来たのか、という謎に対し、南米から移住したはずだと仮説を立て、筏で太平洋を突っ切って島にたどり着く、という冒険をした。
彼の書いた冒険記が「アク・アク」で、かつてベストセラーだったというが、今の時代に読むと、理論も何もなく情熱だけで突っ走っていて面白くもなんともなく、オカルト寄りというか、トンデモ本というか…。今なら「ムー」案件である。
トール・ヘイエルダールの冒険記「アク・アク」を読んでみた。
https://55096962.seesaa.net/article/201406article_7.html
で、現在では、ヘイエルダールの唱えた説は間違いだったよね、で結論づけられている。イースター島の住民は、人骨のDNAの分析によって、オセアニアからの移住者だったことが判明している。今回返還される中に人骨が入っているが、この人骨からもDNAサンプル採取が行われたはずで、「調査だいたい終わったから返すね」というのは、そういうことなのだ。
※ここ最近の研究内容まとめは以下を参照
イースター島は「モアイ作りすぎて戦争して人口が減った」わけではなかった、という論文と最近のトレンドについて
https://55096962.seesaa.net/article/504824568.html
ただ、ヘイエルダール説が否定される時に出ていた「南米からだと、そもそも海流の関係で人がたどり着けないのでは?」という説は、実は間違えていた。イースター島住民のDNAには、少しだけ南米先住民のDNAが混じっていたのである。つまり、人口規模はそれほど大きくなかったようだか、移住者がいた。おそらく、航海技術に長けたイースター島の住民が南米までたどり着き、また戻ってきたのだろう。
コン・ティキ号は、世界地図と当時最新の機器を持ち航海に挑んだが、イースター島住民はそうではなかった。人力測量と手作りイカダだけで太平洋を往復していた。かつての人々の技術力すげえな、というのを改めて思う。
そして、ヘイエルダールのやった航海自体は、先住民の航海とレギュレーション違いすぎるので、やはり再現実験としては評価出来るものではない。
「南米からイースター島に人が渡ったはずだ」というヘイエルダールの説は、確かに一部当たっていたのだが。
なお、最近では、人だけでなく植物や動物の移動についても研究が進んでいる。
ジャガイモについての論文がこれ。
考古学論文と見せかけた巧妙なサツマイモ・キャンペーン「ニュージーランド先住民は南米産サツマイモを栽培してた!」
https://55096962.seesaa.net/article/505055681.html
ニワトリについても、ヨーロッパ人が持ち込む前にポリネシアからチョクで持ち込まれたやつがいたのでは? という研究が進んでいたりする。
このへんは、ここ5年くらいでだいぶ情報が追加されてるジャンルなので、今後の成果に期待したい。
「調査が終わったら返す約束だったし、調査はもう、だいたい終わったからね」という話。最近の調査のおさらいがてら、取り上げてみたいと思う。
Norway's Kon-Tiki museum returns human remains to Easter Island
https://phys.org/news/2024-11-norway-kon-tiki-museum-human.html
前回、この返還ニュースを取り上げたのは2019年。さらに追加で、人骨なども返還されるという。これらの遺物は、1950年代にヘイエルダールがイースター島にたどり着いた時に持ち出されたもの。
ノルウェーのコンティキ号博物館、遺物をイースター島住民に返還。
https://55096962.seesaa.net/site/pc/preview/entry
トール・ヘイエルダールって誰よ? という話だが、簡単に説明すると、当時若者だった世代には大ヒットした、ひとむかし前の冒険家である。
太平洋ど真ん中にあるイースター島の住民がどこから来たのか、という謎に対し、南米から移住したはずだと仮説を立て、筏で太平洋を突っ切って島にたどり着く、という冒険をした。
彼の書いた冒険記が「アク・アク」で、かつてベストセラーだったというが、今の時代に読むと、理論も何もなく情熱だけで突っ走っていて面白くもなんともなく、オカルト寄りというか、トンデモ本というか…。今なら「ムー」案件である。
トール・ヘイエルダールの冒険記「アク・アク」を読んでみた。
https://55096962.seesaa.net/article/201406article_7.html
で、現在では、ヘイエルダールの唱えた説は間違いだったよね、で結論づけられている。イースター島の住民は、人骨のDNAの分析によって、オセアニアからの移住者だったことが判明している。今回返還される中に人骨が入っているが、この人骨からもDNAサンプル採取が行われたはずで、「調査だいたい終わったから返すね」というのは、そういうことなのだ。
※ここ最近の研究内容まとめは以下を参照
イースター島は「モアイ作りすぎて戦争して人口が減った」わけではなかった、という論文と最近のトレンドについて
https://55096962.seesaa.net/article/504824568.html
ただ、ヘイエルダール説が否定される時に出ていた「南米からだと、そもそも海流の関係で人がたどり着けないのでは?」という説は、実は間違えていた。イースター島住民のDNAには、少しだけ南米先住民のDNAが混じっていたのである。つまり、人口規模はそれほど大きくなかったようだか、移住者がいた。おそらく、航海技術に長けたイースター島の住民が南米までたどり着き、また戻ってきたのだろう。
コン・ティキ号は、世界地図と当時最新の機器を持ち航海に挑んだが、イースター島住民はそうではなかった。人力測量と手作りイカダだけで太平洋を往復していた。かつての人々の技術力すげえな、というのを改めて思う。
そして、ヘイエルダールのやった航海自体は、先住民の航海とレギュレーション違いすぎるので、やはり再現実験としては評価出来るものではない。
「南米からイースター島に人が渡ったはずだ」というヘイエルダールの説は、確かに一部当たっていたのだが。
なお、最近では、人だけでなく植物や動物の移動についても研究が進んでいる。
ジャガイモについての論文がこれ。
考古学論文と見せかけた巧妙なサツマイモ・キャンペーン「ニュージーランド先住民は南米産サツマイモを栽培してた!」
https://55096962.seesaa.net/article/505055681.html
ニワトリについても、ヨーロッパ人が持ち込む前にポリネシアからチョクで持ち込まれたやつがいたのでは? という研究が進んでいたりする。
このへんは、ここ5年くらいでだいぶ情報が追加されてるジャンルなので、今後の成果に期待したい。