初期ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの埋葬形態が違う→ネアンデルタールのは埋葬じゃないのでは…?
少し前に、シャニダール洞窟のネアンデルタールの埋葬についての再調査の話を書いた。
知らない人に説明しておくと、シャニダール洞窟とはイラクにある遺跡で、「ネアンデルタールは死者に花を手向けて埋葬されていた!」と色んな本に書かれている有名な場所である。
だが、調査されたのが昔すぎて、「そもそも鼻は本当にあったのか」「埋められてたのが埋葬だったのか」が確かではなくなっている。
それもあり、最近になって再調査されている場所なのだ。
ネアンデルタールは死者に花を手向けたか。過去の調査内容が古すぎるので再調査中
https://55096962.seesaa.net/article/503709065.html
この話を書いた時に自分が思ったのが、「埋葬」の定義が出来ていないことが、話を混乱させたそもそもの原因なのではないか、ということだ。
人の死体を単に埋めただけでは、埋葬とは言わない。
たとえばクマが獲物の死体を埋めるのは、あとで掘り出して食べるための「貯蔵」行為である。
人肉食が普通だった場合は、死体を埋める=仲間の肉も保存食にするためだった可能性がある。
また、単に「腐肉の匂いで肉食獣が集まってくるのを防ぐため」であっても、死体を埋めることはある。
これはゴミ捨て場の穴にゴミを埋めるのと同じ「遺棄」行為にあたる。
それと、病気などが蔓延して、洞窟の中で仲間の何人かが一気に死亡した場合、忌避感から洞窟を捨てることがあるはずだ。
その場合、死体に軽く土をかけていくくらいはするかもしれず、この場合も後世から見れば埋葬に見えるが「遺棄」となる。
で、今回、西アジア全般のネアンデルタール人が埋葬を行ったとされる場所17箇所と、ホモ・サピエンスが埋葬を行ったとされる場所15箇所を調べて改めて「埋葬」の仕方を比較してみたところ、かなり違いがあった、という話が出ていた。
時代は12万年前~3万5000年前、この時代、アフリカを出てきた現生人類は、ネアンデルタール人と同じ地域に同居し、遺伝子の交雑も起きている。
Neanderthals and early Homo sapiens buried their dead differently, study suggests
https://www.livescience.com/archaeology/neanderthals-and-early-homo-sapiens-buried-their-dead-differently-study-suggests
ざっくり要点だけ抜き出すと、ネアンデルタール人は死者を洞窟に埋めることが多く、向きやポーズも特に決まっていないという。
だが、ホモ・サピエンスは一般的に、洞窟の外や入口近くに埋め、胎児の姿勢で死者を埋葬していたという。
これは…
ネアンデルタールのほうは、やっぱ埋葬じゃなくて遺棄じゃないのか…?
洞窟に住んでいるのに、その洞窟の床に死体埋めたら、その洞窟はもう住めないぞ。死体の腐敗はナメちゃいけない。水が染み出し、匂いもかなりする。たかが1m程度の穴じゃとうてい誤魔化せない。成人の死体なら尚更だ。
現生人類でも自宅の床下に遺体を埋める習慣のあった民族や都市遺跡がないわけではないが、だいたい新生児とか赤ん坊とかなのだ。成人はない…。
「埋葬」するなら、せめて住居の外にしないと無理。埋葬ポーズも決まっていないなら、洞窟内で全滅したのがそのまま埋もれた、とか、忌避感からそこにまとめて遺棄された、のほうが解釈しやすい。
現生人類の場合は、埋めるポーズが決まっているなら宗教概念が芽生えていそうなので、埋葬と呼んでもいいかなと思う。
何もネアンデルタールの知能を低くみつもりたいとか、現生人類より劣っているとかいう話がしたいわけではない。
むしろ逆で、同じヒトの形をしているからといって、無意識に同じ存在だと思い込もうとするな、という話である。
彼らと我々は、確かに一部が混じり合っているが、「一部」に留まっている時点で、何かが根本的に違うのだ。
それは、現代の国際結婚で、全く異なる文化圏の人どうしが結ばれることが珍しいのに似ているかもしれない。外見よりは文化の違いが大きすぎて、隣人同士であってもカップルは珍しかったのではないかと、自分は推測している。埋葬事例からしてもそう、長年近所に暮らしてて一部の文化を共有してこれだけ違いがあるなら、それ微々たる違いとかじゃないよ。死者に対する概念が違うと思うよ。
なお、多くの場合、埋葬には「穴を掘る」という行為が必要である。
爪や上部な前足などを持たない人間が穴を掘るには、道具の存在が不可欠である。
逆に言えば、石器という道具を開発して以降のホモ属は全て穴を掘ることが出来るので、単に「穴に死体埋める」だけなら200万年前から可能になる。
というわけで考古学者は、単に死体埋めてたら埋葬って言わずに、まず「埋葬とは、どこまでやったら埋葬なのか」の定義のコンセンサス取ったほうがいい思う。じゃないと、ホモ属のほとんどの種族は超初期から埋葬習慣を持っていたことになってしまうし、ホモ・ナレディのケースみたいに、洞窟の奥からまとまって人骨が出てきただけで「これはきっと埋葬だ!」とか、根拠も何もなくカンで言ってるようにしか見えない意見が出てくることになるので。
知らない人に説明しておくと、シャニダール洞窟とはイラクにある遺跡で、「ネアンデルタールは死者に花を手向けて埋葬されていた!」と色んな本に書かれている有名な場所である。
だが、調査されたのが昔すぎて、「そもそも鼻は本当にあったのか」「埋められてたのが埋葬だったのか」が確かではなくなっている。
それもあり、最近になって再調査されている場所なのだ。
ネアンデルタールは死者に花を手向けたか。過去の調査内容が古すぎるので再調査中
https://55096962.seesaa.net/article/503709065.html
この話を書いた時に自分が思ったのが、「埋葬」の定義が出来ていないことが、話を混乱させたそもそもの原因なのではないか、ということだ。
人の死体を単に埋めただけでは、埋葬とは言わない。
たとえばクマが獲物の死体を埋めるのは、あとで掘り出して食べるための「貯蔵」行為である。
人肉食が普通だった場合は、死体を埋める=仲間の肉も保存食にするためだった可能性がある。
また、単に「腐肉の匂いで肉食獣が集まってくるのを防ぐため」であっても、死体を埋めることはある。
これはゴミ捨て場の穴にゴミを埋めるのと同じ「遺棄」行為にあたる。
それと、病気などが蔓延して、洞窟の中で仲間の何人かが一気に死亡した場合、忌避感から洞窟を捨てることがあるはずだ。
その場合、死体に軽く土をかけていくくらいはするかもしれず、この場合も後世から見れば埋葬に見えるが「遺棄」となる。
で、今回、西アジア全般のネアンデルタール人が埋葬を行ったとされる場所17箇所と、ホモ・サピエンスが埋葬を行ったとされる場所15箇所を調べて改めて「埋葬」の仕方を比較してみたところ、かなり違いがあった、という話が出ていた。
時代は12万年前~3万5000年前、この時代、アフリカを出てきた現生人類は、ネアンデルタール人と同じ地域に同居し、遺伝子の交雑も起きている。
Neanderthals and early Homo sapiens buried their dead differently, study suggests
https://www.livescience.com/archaeology/neanderthals-and-early-homo-sapiens-buried-their-dead-differently-study-suggests
ざっくり要点だけ抜き出すと、ネアンデルタール人は死者を洞窟に埋めることが多く、向きやポーズも特に決まっていないという。
だが、ホモ・サピエンスは一般的に、洞窟の外や入口近くに埋め、胎児の姿勢で死者を埋葬していたという。
これは…
ネアンデルタールのほうは、やっぱ埋葬じゃなくて遺棄じゃないのか…?
洞窟に住んでいるのに、その洞窟の床に死体埋めたら、その洞窟はもう住めないぞ。死体の腐敗はナメちゃいけない。水が染み出し、匂いもかなりする。たかが1m程度の穴じゃとうてい誤魔化せない。成人の死体なら尚更だ。
現生人類でも自宅の床下に遺体を埋める習慣のあった民族や都市遺跡がないわけではないが、だいたい新生児とか赤ん坊とかなのだ。成人はない…。
「埋葬」するなら、せめて住居の外にしないと無理。埋葬ポーズも決まっていないなら、洞窟内で全滅したのがそのまま埋もれた、とか、忌避感からそこにまとめて遺棄された、のほうが解釈しやすい。
現生人類の場合は、埋めるポーズが決まっているなら宗教概念が芽生えていそうなので、埋葬と呼んでもいいかなと思う。
何もネアンデルタールの知能を低くみつもりたいとか、現生人類より劣っているとかいう話がしたいわけではない。
むしろ逆で、同じヒトの形をしているからといって、無意識に同じ存在だと思い込もうとするな、という話である。
彼らと我々は、確かに一部が混じり合っているが、「一部」に留まっている時点で、何かが根本的に違うのだ。
それは、現代の国際結婚で、全く異なる文化圏の人どうしが結ばれることが珍しいのに似ているかもしれない。外見よりは文化の違いが大きすぎて、隣人同士であってもカップルは珍しかったのではないかと、自分は推測している。埋葬事例からしてもそう、長年近所に暮らしてて一部の文化を共有してこれだけ違いがあるなら、それ微々たる違いとかじゃないよ。死者に対する概念が違うと思うよ。
なお、多くの場合、埋葬には「穴を掘る」という行為が必要である。
爪や上部な前足などを持たない人間が穴を掘るには、道具の存在が不可欠である。
逆に言えば、石器という道具を開発して以降のホモ属は全て穴を掘ることが出来るので、単に「穴に死体埋める」だけなら200万年前から可能になる。
というわけで考古学者は、単に死体埋めてたら埋葬って言わずに、まず「埋葬とは、どこまでやったら埋葬なのか」の定義のコンセンサス取ったほうがいい思う。じゃないと、ホモ属のほとんどの種族は超初期から埋葬習慣を持っていたことになってしまうし、ホモ・ナレディのケースみたいに、洞窟の奥からまとまって人骨が出てきただけで「これはきっと埋葬だ!」とか、根拠も何もなくカンで言ってるようにしか見えない意見が出てくることになるので。