中部エジプト・ソハーグ(アトリビス神殿)の未発掘エリアから神殿が追加で発見される。内ゲバ時代の神殿だぁ!

中部エジプト・ソハーグにある、アトリビス神殿のまだ発掘されていない部分から、知られていなかった神殿が出てきたとのこと。
ここに神殿が作られていたのはプトレマイオス朝で、出てきた名前はプトレマイオス8世なので紀元前170年以降。「古代エジプトの神殿」と言いつつ、実際にはグレコ・ローマン時代なんですよね。

Egyptian-German archaeology team uncovers Ptolemaic Temple pylon in Sohag
https://www.thenationalnews.com/news/mena/2024/11/24/egyptian-german-archaeology-team-uncovers-ptolemaic-temple-in-sohag/

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んで、ここで気になるのが、プトレマイオス8世のカルトゥーシュと同時に出てくるのがクレオパトラ2世なのか3世なのか、というところだ。

プトレマイオス8世はクレオパトラ2世の叔父なのだが、実は、のちに2世の娘の3世とも結婚している。つまり親子丼ファラオなのである。
未亡人パトラ2世と結婚して王位についたくせに、兄の子である継子は暗殺してさらに親子丼。当然、パトラ2世はブチきれ怒髪天。娘ともども国外追放してしまう。
プトレマイオス8世の治世年に空白があるのは、その追放期間があるからなのだ。
なので、この神殿が建てられた時期が追放前のいつなのか、もしくは帰国後なのかによって、夫婦ペアの内容が変わるはず。

※参考までに、「クレオパトラ」名を持つ王家の女性たち一覧

プトレマイオス朝と七人のクレオパトラたち~始祖クレオパトラから終焉のクレオパトラまで
https://55096962.seesaa.net/article/202202article_8.html

また、この神殿は獅子の姿をしたレピト女神に捧げられている。
レピトという名前はマイナーなので知らない人も多いと思うが、このアトリビスの守護神である。データは以下。

http://www.moonover.jp/bekkan/god/repit.htm

息子「コランテス」は古代エジプト語ではクルダ・パ・ケレドで、ギリシャ語訛りにしたものがコランテスになる。おそらくそれほど古い神格ではない。なぜこの二柱がプトレマイオス朝で信仰を集めたのかは良くわからないが、神秘主義と結びついていたらしく、ギリシャ語の呪術文書によく名前が出てくる。
おそらく、ベス神がプトレマイオス朝時代に民間的な精神治療の神とされたのと似たような経緯かなと思う。

プトレマイオス朝は、あくまでもギリシャ文化をベースにしてエジプト文化を取り込んだ新しい融合文化の結晶なのだ。
美術様式はそれまでの古代エジプトと似ていても、実態の信仰や意味合いが大きく異なっている部分が少なくない。(なので「グレコ・ローマン」と分類を変えるわけだが)
この神殿も、従来の信仰との差分と見なせると思う。