マニアックなところまで網羅された神話特化本「図説古代エジプトの神々・神話百科事典」 ※ただし誤字・不備多数

なんかまたえっらい分厚いマニアックな本が出たのですよ。エジプト神話と神々の辞典。「古代エジプトの辞典」じゃなくて「神話」特化。
マ? と思って早速買って見てみたのだが、ほんとに神話特化でものすごい細かいところまで載ってる。スゲエ!

図説古代エジプトの神々・神話百科事典 - ジャン=ピエール・コルテジアーニ, 近藤 二郎, 近藤 悠子
図説古代エジプトの神々・神話百科事典 - ジャン=ピエール・コルテジアーニ, 近藤 二郎, 近藤 悠子

まずびっくりしたのは、アバセトっていうハリネズミの女神が出てきたこと。
かれこれ8年位前にハリネズミの遺物について調べてた時に「このハリネズミ、神なんか?? 神じゃないんか??」って悩んでたんですが、神にカウントして良かったんだね…いやだって資料に全然出てこないし誰も神として言及してなかったから、単なるお守りなのかと…。
バハリヤ・オアシスの地方神扱い。なるほど。

古代エジプトのハリネズミたん
https://55096962.seesaa.net/article/201608article_3.html

あとツタンカーメンの遺物でしか知られていないマイナーなハヤブサ神、ゲメヘスちゃんにもしっかり説明がついていたのは嬉しい。
これ大昔のツタンカーメン展の図録から拾った資料しか持ってなくて、誰も気にしない神なのかあ…って思ってたから。

ゲメヘス Gemehsu
http://www.moonover.jp/bekkan/god/gemehsu.htm

あと、このへんの神殿の壁画にしか出てこない神々もちゃんと入ってます!
http://www.moonover.jp/bekkan/god/nile.htm

エジプトの外のヌビアの神、ギリシャ語資料に当たらないと出てこないグレコ・ローマン時代の神、ピラミッド・テキストや死者の書に名前だけ出てくる神とかも片っ端から出てくるので、範囲としてもかなり広い。値段相応というか、分厚いだけはある網羅っぷり。これはいいものだ。
かなり濃い本なので初心者のお読み物としては重すぎる(物量的にも)かもしれないが、エジプト神話好きは「買い」です。オススメ。

*****
★ただし、初版時点では、ものすごい量の誤字・リンクミス・不備が発生しています。

軽く使ってみただけで大量の不備が見つかったんで、以下に羅列しておきます。実際はこんなもんじゃないですw 出版社が出してる辞書系の本でここまで色々出てくるのは久しぶりだな…。

P215
オヌリスの項目に「ウヌリス」という誤字が入っている

P249
ケセルティの項目に入っている「コタル」はおそらくコシャル・ハシス。
ウガリット神話で建築の神にコタルという名前の神を見たことがない


P303
項目として存在するのはシェ「ズ」メテトだが、シェ「ス」メテトと書かれている場所が複数ある


P418
ケンティ・インティという誤字がある(正しくはイルティ)


P447
ウディム王はおそらくデン王のこと、全般的にファラオの呼び名が統一されていない

P449
ネギトという項目が書かれているが、実際に「泣き女」の項目に書かれている名前は「ネギ」。女性名詞ならネギトのほうが正しそうなので、おそらく泣き女の項目が間違えている

※同様に、「xxの項目は→xxへ」と飛ばされる箇所で、飛んだ先の項目と名称が一致していないケースが複数あり、辞書としては致命的



P459
ネギネルイウの項目に「ネルウ」という謎の名前がでてくるが、この項目は本の中には無い
普通にネギネルイウのことを間違えているか何か


P498
バネブジェデトの項目の最後に、参考項目としてケレドアンクと書かれているが、実際に存在する項目は「ケレドゥアンク」


P509
フネフェロスという名称が出てくるがプネフェロスの間違い


P558
ベクベクとヘケスの項目を翻訳し忘れている
おそらくジャイスウとヘプウイの名前が書かれている部分


P569
ヘテプバケフという項目があるが、他のページではヘテプバクエフでバラバラ


P577
ヘペテトの項目の中にヘテペトと書かれている部分があるのはおそらく間違い
ヘテペトは別の神名

P585
ヘリマアトの項目の中に出てくるネブネリウはネブネルイウでは

P620
セクハトという名称が出てくるがその項目はない
内容からしてセカト・ホルでは


全般
項目によってフランス語読みと英語読みが混じっている。

「アメン神」はフランス語で統一するなら「アモン神」だが、本では英語読みになっていた一方、「シコモア・イチジク」「シカモア・イチジク」は本の中に両方登場して混じっている。(項目として存在するのは前者だが、多くのエジプト本では後者で登場する)

おそらく複数の翻訳者が関わって作られているのだが、翻訳ポリシーが統一されていなかったのではと思われる。最終チェックもされていない。