日本で発見された更新世の骨「牛川人」は人間ではなくクマで確定。いわゆる「原人」化石は浜北人のみに

昭和の時代に原人ブームというものがあり、各地で原人を探そう!みたいなのがあったり、原人っぽい化石が見つかったところに石碑が立てられたりしていた頃があった、と本で読んだことがある。
中の人も、その頃のことは伝聞でしか知らないのだが、村興しの一貫として古い遺跡が利用されていたらしい。悪名高き日本考古学史の汚点、「旧石器捏造事件」はその延長線上にある。

で、その原人ブームの中で、かつて持て囃されていた「牛川人」が、実は人間の骨ではなくヒグマだった、と判明したというのが今回のニュース。

日本列島の更新世の「牛川人」は人類化石ではないと結論
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001551.000032951.html

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「牛川人骨」の部位・動物種別の特定と学史略考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/asj/advpub/0/advpub_240917/_article/-char/ja/

日本で見つかる骨はDNA情報がなかなか取れないこともあってか、DNA鑑定ではなく骨の形状での鑑定。ただ、クマ骨との類似は明確とのことなので、かなり確信を持って「これ2万年前のヒグマですね」と結論づけられている模様。

1990年頃から「人間じゃないんじゃない?」という疑問はあったものの、今までちゃんと鑑定もされず、発見場所に石碑も建てられたまま、というところに、なんかちょっと闇を感じなくもないのだが、まあ、きちんと鑑定されて結論が出たのは良いことかと。
これで、本州で見つかっているいわゆる「原人」、縄文時代以前の人間の骨と確実に言えるものは、静岡の浜北人のみとなった。
なお、浜北人のほうは、頭蓋骨なども残っているため、さすがに、「実は別の動物でした」みたいなどんでん返しは無さそう。

日本はほんと、古い遺物残りにくいですよね。東南アジアとかのほうがまだ出てるなって印象。
あと初期に発掘されたものの鑑定がちょっと甘い。(これはどこの国でもあることで、自国の考古学者のスキルが足りないと起こり得る)

なお、これまでに旧石器時代の人骨として発見され、のちに否定された遺跡の一覧は以下。明石原人とかも懐かしいですね…。
本州以外だと、南方のほうでしか古い人骨が残ってないのが分かります。(この資料は2020年のものだが、その時点で牛川人は人骨ではないとされている)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/25/2/25_2_34/_pdf

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