古代エジプト人が使っただろう鎮静剤・エジプトヒヨスについての覚え書き

古代エジプトの医療パピルスの中には、現代でも使われる薬効のある植物がいくつか出てくる。中でも劇薬の一つだなと思うのがエジプトヒヨス。これは古代語の「ペセジェ」が該当するとされるが、別の説もあるため、実際に古代人がヒヨスのことを何と呼んだかは確定していない。
ただし、ヒヨス自体はエジプトに古代から自生しており、使わなかったはずはないと思われる。

まずはエジプトヒヨス Hyoscyamus muticus / Egyptian henbaneについて。
砂漠でも問題なく生える多年草または低木状の植物で、葉にアルカロイドを含む。ヨーロッパヒヨスとだいたい同じ薬効。花・種は春。
主に葉に含まれる成分を使う。

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https://www.inaturalist.org/taxa/547161-Hyoscyamus-muticus

参考までに、種はこんな感じらしい。
https://www.curresweb.com/csi/csi/2016/8-25.pdf

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ヒヨスチアミンという毒を葉に含み、適切な量を仕えば鎮痛剤や鎮静剤になるが、量が多すぎると痙攣、吐き気、幻覚症状などが出るという。チョウセンアサガオに含まれる成分と同じ。処方の難易度は高そうなのだが、古代人はちゃんと使えていたのだろうか。

エーベルス・パピルスでヒヨスと思われるペセジェが使われている項目は

・胆汁をきれいにする
・関節や体のこわばりをなくす
・急性胃炎

など。
ペセジェの正体がヒヨスであっているのなら、正しく使えれば確かにこれらには効きそう。ただしパピルスには用法・用量の記載はない。古代の医師は量の調整をどうしていたのかが気になるところである。