白亜紀前期の海洋生物の大量絶滅は火山の爆発によるものと結論。北海道の地層から

ぼーっと論文一覧を見てたら面白そうなのがあったのでメモがわりに。
白亜紀前期に起きた海洋生物の大量絶滅は、古代の海底火山の大爆発を引き金に世界中の海の酸素含有量が低下したことが原因で、時代と、噴火した火山の場所が特定されたという。

東北大学のプレスリリース
白亜紀前期に起きた地球史上最大規模の火山噴火が111.6万年間におよぶ海洋の無酸素化と海洋生物の大量絶滅を引き起こした
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/11/press20241121-02-anoxic.html

この海の異変、「海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event 1a、略して OAE1a)」は1億1955万年前に発生し、111万年以上も続いたという。原因となったのは「オントンジャワ海台」。ジャワと入ってるのでアジアかなって思うかもしれないが、当時は大陸が今の形とは全然違って、いっこの塊から分離した直後みたいな感じになっている…。

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元論文はこちら。

Radioisotopic chronology of Ocean Anoxic Event 1a: Framework for analysis of driving mechanisms
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adn8365

あまり知らない分野なので用語がよくわからないが、たくさん出てくる δ13 というのは安定同位体のこと。
炭素の安定同位体 δ13C 、窒素だと δ15N。これを使って、水に含まれる成分から有機物の由来を特定する研究があるらしい。

安定同位体比から明らかになる底質有機物の起源
https://www.environmentalisotope.jp/wp-content/uploads/2023/03/30ef5cc87c2a497a5f8420ef3683a4ad.pdf

有機物が多い=海中に生物が多い なので、急激に減少すると生物減ったなと分かる。
なので、海底沈殿物の固まって岩石から検出した成分で、急激な変化が見えるところで年代を特定してるっぽい。また、含まれている成分から、噴火した火山の特定もしている模様。

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1億年越えると人類の歴史の範疇ではなくなるので、考古学には出てこないが、地球の歴史としてはこういう分析方法もあるんだなと勉強になった。


なお、この無酸素状態は、火山の噴火が引き金とはいえ、それ自体が直接の原因ではなさそうだ。
「急激な温暖化と湿潤化が生じ、大量の栄養塩が大陸から海洋にもたらされた。これにより、海洋の富栄養化と一次生産の増加に起因して無酸素水塊が拡大した」
とあるので、火山じゃなくても急激な温暖化が引き起こされれば同じ状態が発生する可能性がある。つまり年々暑くなっていく今の時代は、同じ状況につながる可能性があるのかもしれない。これが論文の〆となっている。

「急激な」ってどのくらいが急激なのか、という問題もあるのだが、一度起きちゃうと100万年単位で続いた実績があるようなので、起きないことを祈りたいところである。