毎年恒例の。今年の考古学10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)

年の暮れ、今年もいつもどおり Top 10 Discoveries of 2024 を見て行こうと思います。
https://archaeology.org/collection/top-10-discoveries-of-2024/

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●The Making of a Moche Queen 南米モチェ文明の女王の玉座の間を発見
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/the-making-of-a-moche-queen/top-10-discoveries-of-2024/

4世紀半ば~9世紀半ばごろにペルー北部の海岸沿いを支配していたモチェ文化の遺跡パニャマルカで、女王のための玉座の間を発見したというもの。墓ではなく玉座の間で、玉座そのものも出てきているの興味深い。プレ・インカの宮廷がどんな感じだったのかの一級資料と言っていいかと。


●Reindeer Hunters’ Wall バルト海に沈むヨーロッパ最古のトナカイ狩猟用柵
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/reindeer-hunters-wall/top-10-discoveries-of-2024/

ドイツ沖合のバルト海に沈んでいる石積みは、かつて8,500年前にこの地域が水没するまで原住民がトナカイを追い込むために使っていた柵だった可能性が高いとのこと。その時代、農業や定住はまだ始まっておらず、最終氷期の終わりごろで、ドイツ北部はまだかなり寒かった。


●Aswan’s Great Necropolis エジプト・アスワンに作られたグレコ・ローマン時代の広大な墓地の発見
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/aswans-great-necropolis/top-10-discoveries-of-2024/

アスワン郊外に作られていたネクロポリス(死者の街)は、地下10層まであり、数千人が納められている巨大なものだった。
エジプトの墓は残りがいいけど、一気に数千体もミイラでてきちゃって研究者は大丈夫か。見つけたはいいものの、当然ながら分析には時間かかってる模様。


●Artists of Dinosaur Valley ブラジルの「恐竜の谷」で見つかった古代の岩絵
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/artists-of-dinosaur-valley/top-10-discoveries-of-2024/

ブラジル北東部のSerrote do Letreiroは恐竜の足跡が多数残されていることで有名だが、実は恐竜以外にも、9,000年~3,000 年前くらいに人類が刻んだ多数の岩絵も残されていたことが最近になって明らかに。恐竜の専門家は岩絵とか専門外だしそもそも気づいてなかったのかも。これだけ時代が離れてるものが一箇所にあると気づくの遅れるよね。
岩絵の意味などはまだ調査中。


●Origins of the Scythians スキタイ人の故郷は知られているよりずっと東だったかも
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/origins-of-the-scythians/top-10-discoveries-of-2024/

南シベリアのトゥヴァ共和国(モンゴルの北に接するロシア領)のトゥンヌグ1として知られる遺跡の発掘によって、この遺跡は墓として使われている塚で、紀元前9世紀後半のものだという。時代的にスキタイ人の歴史の初期であり、この遺跡のある場所がスキタイ人の起源地ではないかという。もし、ここが起源地だとすると、かなり急速に西へ移動したことになる。


●Grim Evidence from the Arctic フランクリン遠征隊の最期
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/grim-evidence-from-the-arctic/top-10-discoveries-of-2024/

フランクリン遠征隊についてはWikiとかで適当にググれば出てくる。北極探検に出かけて遭難した探検隊で、発見された13人の遺体のうち4人の死体には、カニバリズムの痕跡が残されていたという。その遺骨のDNA鑑定によって、直接の子孫ではないものの、親族が見つかったらしい。


●A Golden Shaman パナマで見つかったシャーマンの墓
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/a-golden-shaman/top-10-discoveries-of-2024/

8世紀から11世紀の間にコクレ族によって築かれた、 El Cañoの墓地についての発見。場所はパナマのリオ・グランデ川のほとり。黄金の胸当てや像などが多数見つかっており、裕福な人物だったことがわかる。墓の中から鹿の骨で出来た管が見つかっており、これはコクレ族が儀式の際に薬草を燃やして出る煙を吸ったり吐いたりするための儀礼道具と分かったそうだ。なので被葬者はシャーマンだっただろう、ということになっている。

●Unmasking a Maya Dynasty マヤの石仮面の発見によって、歴史は仮面を脱いだ
https://archaeology.org/issues/january-february-2025/collection/unmasking-a-maya-dynasty/top-10-discoveries-of-2024/

グアテマラ北東部のベリーズとメキシコの国境に近いジャングルの中にある、一回発見されたけど100年くらい忘れ去られてたマイナーなマヤ遺跡Chochkitamを再調査したら、盗掘者が見逃していた埋葬室と石仮面が出てきたという。この墓は230年~350年ごろのものだという。代表的な発見物は、実に見事な石仮面。まだこんなのが眠ってるんだね。

●Enduring Ice Age Ritual 氷河期時代から続くアボリジニの儀式

オーストラリアのクロッグス洞窟で発掘された一対の棒は、かつてアボリジニが洞窟の中で儀式を行っていた証拠だという。棒が使われていたのは1万数千年前で、現代のアボリジニも似たような儀式をやっているため、氷河期時代から続く伝統だという主張らしい。まあその主張は先住民配慮の匂いがプンプンなので置いとくとして、洞窟が儀式の場だったと確認されたのは良かったのでは。


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というわけで、今年はまずまず納得のチョイスでした。

ただ、まだ発見したばっかで調査中だったり、すごい発見なんだけど専門家どうしで意見すり合わせてもらうまでどう解釈したらいいのか分からんなあとか、今後の続報まちのやつが多いですね。アスワンのやつとか、調査報告書出すだけでも死にそう。頑張れ現場の人…。

なお、これまでのTop10はこんな感じ。けっこう履歴が溜まってきましたウフフ。

またこの季節がやってきた。今年の考古学10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/501728756.html

2022年、考古学の10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/494571344.html

今年も考古学発見物のTOP10が発表されていたので見てきた。
https://55096962.seesaa.net/article/202112article_21.html

2020年、考古学の10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/202012article_9.html

2019年、考古学の10大発見(ARCHAEOLOGY magazine版)
https://55096962.seesaa.net/article/201912article_24.html

今年の考古学10大発見物
https://55096962.seesaa.net/article/201712article_22.html

今年もArchaeology Magazineの「10大発見」。今年は全般的に地味かな…
https://55096962.seesaa.net/article/201612article_27.html