シェムリアップ(6) 遺跡の保全とカンボジアの歴史

さて、アンコール遺跡の見学について、最後に「他の国の遺跡との比較」をしておきたい。
具体的には、世界遺産として指定されたエリア内のアクセシビリティ等である。

アンコール遺跡群のある広大な地域は、エリア指定で世界遺産となっている。観光客はエリアの入口でチケットの確認をされる。地元民は無料で入れる。この方式は他の国でも広く採用されており、たとえばヨルダンのペトラ遺跡周辺、トルコのハットゥシャエリア、ペルーのマチュピチュ周辺などがそう。

入場規制は全くない。見どころの遺跡は混雑しているが、たいていのツアーグループはガイドさんを連れており、ガイドさんが人をさばいてる感じである。
ガイドさんは国の決めた制服を着ており、各国語を操る。制服には、アンコール遺跡群の管理をしているアプサラ機構のマークが入ってたので、支給元はそこかもしれない。

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驚くことに、このアンコール遺跡周辺では、非合法な地元民の店や、移動露天の類が全然ない
道にあふれるのは観光客のみ。
遺跡内は、トイレ周辺など限られたところに固定の土産物屋があるだけ。逆に言うと、水などを途中で買うスポットがないので、給水には少し苦労する。

地元民は遺跡に入るのタダだし、ぶっちゃけ遺跡の隣が民家だったりして入りたい放題なのに、誰もわざわざ入ってきて何か売りつけるということをしていないのである。行儀がいいというか、商売っ気があまりないというか。いや、てか、他の国の遺跡がおかしいとも言うんだがw
(エジプトとか、ヨルダンのペトラ遺跡とか、すごかったからなぁ…遺跡の中に普通にテント張ってたりしたし…)
観光客は街でお金を落としていくのがわかっているので、街のほうで稼いでいるのかもしれない。

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主要な遺跡の近くには、地雷被害者の音楽隊がいたりする。
腕や足がなかったり、目が潰れていたりする。彼らの前で足をとめる人は少ないが、これこそカンボジア近代史の闇の象徴である。
アンコール遺跡群は、かつて地雷原の中にあったのだ。内戦時代にバラまかれた地雷の中には、いまだ撤去中のものも多くある。(このへんはWebでもググればでてくる)
ただ、本などの資料で文字だけ読むのと、あちこちの遺跡に必ずいる地雷被害者たちの姿を実際に目にするのでは、インパクトが違う。ほんとに、あちこちにいるのだ。それだけ有り触れた存在ということなのだろう。
遺跡見学の途中で音楽が聞こえてきたら、「ああ、また彼らがいるのか…」という気分にさせられた。

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遺跡は地雷の撤去が終わったところから公開されるようになっていき、今に至る。
決められた順路以外は歩かないほうがいい、というのは真面目にそうで、地雷撤去済みの看板、もしくは撤去中の看板があちこちに立てられている。
中には、「地雷が撤去されたので最近ここに住むようになった。元の住処は内戦時代に追われて戻っていない」などという地元民もいたりして、軽く真顔になるところである。
草むらで珍しいバッタ見つけて追い回していたら、「地雷探してるの?w」と現地の子どもに言われ、ブラックジョークがすぎるのでは。。と思ったりもした。
この国では、まだ、暗い時代の残滓が残されているのだ。

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で、皮肉なことに、地雷原が残っていたせいで遺跡の多くが盗掘や盗難にあわずそのまま残り、森林に破壊されながらも多くの貴重なレリーフがそのまま残ったと言われる。近代の盗掘でレリーフひっぺがされまくってるエジプトの遺跡と、どっちがいいかっていうと…。うーん…。微妙なところ。


あと、アンコール遺跡群も、やはり、数多すぎて自国だけでは維持や復元が出来ていない。これは遺跡をたくさん抱える国だと良くあるパターン。
実際、現地には色んな国の支援の看板が立っていた。
他にはインド、オランダ、フランス、ドイツなど。ASEANの看板も立ってたので、そこ経由でアジア圏の国が支援しているという枠もあるかもしれない。日本だと上智大学が復元支援や発掘をしていたらしい。
てかインドさんはさぁ…他国の支援よりまず自国の遺跡の管理したほうがいいんじゃ…w

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支援間に合ってなくて崩れたまま放置されてるような寺院もまだまだ沢山あったり、数年前に石を積み直して復元されたような新しい場所もあったりなので、将来はもと見どころが増えているかもしれない。遺跡の観光地化の過程は、現在進行系なのだ。

全国共通の問題として、オーバーツーリズムによる遺跡の破壊や汚染が心配なところだが、遺跡のあるエリアが広大で意外と人が分散していること、ツアーガイドさんの人数が多く、ガイドに連れられてきてる人がほとんどだったことから、数ある観光立国の中では比較的うまくいっているほうだと感じた。

まああれですよ、遺跡内での詐欺やボッタクリやしつこい客引きがないだけで、全然楽ですよ。エジプトさん君にゆってるんやぞ。君んとこは、もうちょって控えめにしてください頼むから。


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