古代デンマークの「太陽石」、噴火で一時的に失われた太陽復活を願ったものか? 発掘調査の結果から
デンマーク領ボーンホルム島の溝から大量に発掘された、太陽に似せて作られたと思われる丸い石が、紀元前2,900年頃に集中していて、ちょうどその頃に火山が噴火して一時的に寒冷化していたので関係があるのでは? という、ちょっと面白そうな論文。放射線状の模様の刻まれた丸い石は「太陽石」と呼ばれてきたのだが、ほんとに太陽を復活させるための石として何か願いが込められていたのかもしれない。
Sun stones and the darkened sun: Neolithic miniature art from the island of Bornholm, Denmark
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/sun-stones-and-the-darkened-sun-neolithic-miniature-art-from-the-island-of-bornholm-denmark/A31DDB1F52DC31C716356A0A02CE3FF9
太陽石の完品

島の場所

この島の新石器時代の遺跡は2個所で、どちらも「漏斗状ビーカー文化」の終盤以降だという。ビーカー文化という言葉はヨーロッパの古代を調べていると頻繁に出てくる名前で、特徴的な土器の形からそう呼ばれている。要するに日本でいう「縄文(土器)」みたいな時代区分。
鐘状ビーカー文化のほうが有名だと思うが、鐘状は漏斗状のあとである。
今回の発掘で、太陽石と呼ばれるものは、紀元前2900年ごろの短期間の地層に集中していることが分かったという。つまり、一過性の流行りとして一気にたくさん作られ、一気に破棄された可能性が高い。これは、同じ地層から出土した遺物の年代や、木片の放射性炭素年代測定などからも裏付けられている。
太陽モチーフと思われるもの以外には、植物モチーフのタイプもあるらしい。

かつては、日食などの天体イベントに起因して太陽カルトが誕生したのでは、という説もあったらしいのだが、年代が絞り込まれたことで、その可能性は消えた。代わりに、紀元前2,900年頃に起きた北半球全体の気候変動の可能性が出てきた。
紀元前2900年の前後に厳しい寒冷化の時期があったようで、その原因が火山の大噴火ではないかという。
具体的にどの火山が原因かまでは特定されていないようなのだが、グリーンランドの氷床コア、および南極の氷床コアでも、このあたりの時代にエアロゾルの増大が見られるそうなので、何かはあったのだろう。
ちなみに日本だと、富士山が大噴火を起こしたのもこの時期らしい。
まだ文字記録がなく、エジプトやメソポタミアでようやく文字の原型が確立されはじめたくらいの時代なんで、何がおきたのかは完全には分からないだろう。ただ、もしもこれらの石が、失われた太陽の復活を願って作られたものだったとすれば、この北の地に暮らす人々にとっては、かなり厳しい時代だったんだろうなというのは想像がつく。
そんな苦労と、願いの結晶だと思うと、ちょっと見方も変わってくるよなあと思うのだった。
Sun stones and the darkened sun: Neolithic miniature art from the island of Bornholm, Denmark
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/sun-stones-and-the-darkened-sun-neolithic-miniature-art-from-the-island-of-bornholm-denmark/A31DDB1F52DC31C716356A0A02CE3FF9
太陽石の完品

島の場所

この島の新石器時代の遺跡は2個所で、どちらも「漏斗状ビーカー文化」の終盤以降だという。ビーカー文化という言葉はヨーロッパの古代を調べていると頻繁に出てくる名前で、特徴的な土器の形からそう呼ばれている。要するに日本でいう「縄文(土器)」みたいな時代区分。
鐘状ビーカー文化のほうが有名だと思うが、鐘状は漏斗状のあとである。
今回の発掘で、太陽石と呼ばれるものは、紀元前2900年ごろの短期間の地層に集中していることが分かったという。つまり、一過性の流行りとして一気にたくさん作られ、一気に破棄された可能性が高い。これは、同じ地層から出土した遺物の年代や、木片の放射性炭素年代測定などからも裏付けられている。
太陽モチーフと思われるもの以外には、植物モチーフのタイプもあるらしい。

かつては、日食などの天体イベントに起因して太陽カルトが誕生したのでは、という説もあったらしいのだが、年代が絞り込まれたことで、その可能性は消えた。代わりに、紀元前2,900年頃に起きた北半球全体の気候変動の可能性が出てきた。
紀元前2900年の前後に厳しい寒冷化の時期があったようで、その原因が火山の大噴火ではないかという。
具体的にどの火山が原因かまでは特定されていないようなのだが、グリーンランドの氷床コア、および南極の氷床コアでも、このあたりの時代にエアロゾルの増大が見られるそうなので、何かはあったのだろう。
ちなみに日本だと、富士山が大噴火を起こしたのもこの時期らしい。
まだ文字記録がなく、エジプトやメソポタミアでようやく文字の原型が確立されはじめたくらいの時代なんで、何がおきたのかは完全には分からないだろう。ただ、もしもこれらの石が、失われた太陽の復活を願って作られたものだったとすれば、この北の地に暮らす人々にとっては、かなり厳しい時代だったんだろうなというのは想像がつく。
そんな苦労と、願いの結晶だと思うと、ちょっと見方も変わってくるよなあと思うのだった。