有名な「アレキサンダー大王のモザイク画」、構成要素が分析される。
あんまりおもしろい論文ではなかったけど、分析したの初めてらしくて、着眼点としては今後の発展がありそうなので、いちおうメモがわりに。
対象は、ポンペイで発掘されたモザイク画。アレキサンダー大王といえば、多くの人がこの顔を思い浮かべると思う。そのくらい、アレキサンダーいうたらこれでしょ っていう感じになっているやつである。

From tiny to immense: Geological spotlight on the Alexander Mosaic (National Archaeological Museum of Naples, Italy) using non-invasive in situ analyses
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0315188
前提として、モザイク画は「テッセラ」と呼ばれる四角い石の集合体である。いろんな色の石を並べて絵を作る。現代で言うとドット絵に近い構造。
で、人工的に色を作るのが難しい時代なので、これらの色つきの石がどうやって作られているか/どこから持ってきたか、どういう材料で固めているか、などの成分分析をしようというのが、今回の研究。


ニカワとかの固める材料部分はとくに面白い内容はなかった。というか普通。
ちょっと面白かったのが各色の石がどこから持ってこられたか、という話で、ローマ帝国ならではの広い範囲から材料を集めてきた、贅沢な作りだったことがわかる。

・白
大理石。イタリア北部の鉱山から持ってきたと推測
・淡いピンク
Breccia Nuvolata、イタリア、チュニジア、アルジェリア、リビアなどで採掘できるが、どこのかは不明
・濃いピンク
ポルトガルのMarmo Rosa 、もしくはトスカーナのアプアン・アルプス山脈の Breccia Appenninica
・黄色
チュニジアで採掘された Giallo Antico (Marmor Numidicum) と推測
・薄い赤
アプアン・アルプスのBreccia Appenninica、もしくはシチリアのDiaspri Rossiと推測
・薄い青
大理石(Marmo BardiglioやCipollino)ではないかとのこと
産地不明
という感じで、グループごとに成分が分析されている。モザイクの一部をひっぺがして石材の成分を詳細分析できればもうちょっと詳しくわかるんだろうけど、さすがにそれは出来ないので、この方法だと絞り込みは難しいのかも。
ただ、地中海のあちこちから石材を集めてきていたことは、なんとなく読み取れる。
アレキサンダーが目指したのはインドで、南へ、東へと向かう旅だったが、ローマは西へ西へと向かい、現在でいうヨーロッパ世界を作り上げた。アレキサンダーが欲しかった「海」はおそらくインド洋だったが、ローマにとっての我らの「海」は地中海だった。
その意味で、このモザイク画は時代的にも材料的にも確かにローマのものであり、ローマ文化の反映である。当たり前っちゃ当たり前なのだが、描かれてる内容がマケドニア帝国時代なだけで、遺物の所属としては生粋のローマ。
ここに描かれたアレキサンダーの顔も、彼が生きた時代からはるかあとに描かれているわけだし、おそらく実物とは全然違うのだろうなあ…。
対象は、ポンペイで発掘されたモザイク画。アレキサンダー大王といえば、多くの人がこの顔を思い浮かべると思う。そのくらい、アレキサンダーいうたらこれでしょ っていう感じになっているやつである。

From tiny to immense: Geological spotlight on the Alexander Mosaic (National Archaeological Museum of Naples, Italy) using non-invasive in situ analyses
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0315188
前提として、モザイク画は「テッセラ」と呼ばれる四角い石の集合体である。いろんな色の石を並べて絵を作る。現代で言うとドット絵に近い構造。
で、人工的に色を作るのが難しい時代なので、これらの色つきの石がどうやって作られているか/どこから持ってきたか、どういう材料で固めているか、などの成分分析をしようというのが、今回の研究。

ニカワとかの固める材料部分はとくに面白い内容はなかった。というか普通。
ちょっと面白かったのが各色の石がどこから持ってこられたか、という話で、ローマ帝国ならではの広い範囲から材料を集めてきた、贅沢な作りだったことがわかる。
・白
大理石。イタリア北部の鉱山から持ってきたと推測
・淡いピンク
Breccia Nuvolata、イタリア、チュニジア、アルジェリア、リビアなどで採掘できるが、どこのかは不明
・濃いピンク
ポルトガルのMarmo Rosa 、もしくはトスカーナのアプアン・アルプス山脈の Breccia Appenninica
・黄色
チュニジアで採掘された Giallo Antico (Marmor Numidicum) と推測
・薄い赤
アプアン・アルプスのBreccia Appenninica、もしくはシチリアのDiaspri Rossiと推測
・薄い青
大理石(Marmo BardiglioやCipollino)ではないかとのこと
産地不明
という感じで、グループごとに成分が分析されている。モザイクの一部をひっぺがして石材の成分を詳細分析できればもうちょっと詳しくわかるんだろうけど、さすがにそれは出来ないので、この方法だと絞り込みは難しいのかも。
ただ、地中海のあちこちから石材を集めてきていたことは、なんとなく読み取れる。
アレキサンダーが目指したのはインドで、南へ、東へと向かう旅だったが、ローマは西へ西へと向かい、現在でいうヨーロッパ世界を作り上げた。アレキサンダーが欲しかった「海」はおそらくインド洋だったが、ローマにとっての我らの「海」は地中海だった。
その意味で、このモザイク画は時代的にも材料的にも確かにローマのものであり、ローマ文化の反映である。当たり前っちゃ当たり前なのだが、描かれてる内容がマケドニア帝国時代なだけで、遺物の所属としては生粋のローマ。
ここに描かれたアレキサンダーの顔も、彼が生きた時代からはるかあとに描かれているわけだし、おそらく実物とは全然違うのだろうなあ…。