エジプト東部砂漠で金の「盗掘」が行われている可能性。時代はミイラ取りではなく金鉱探しか
かつてのエジプトはミイラやミイラと一緒に出てくる副葬品がカネになる、つまり古代の墓を金鉱みたいに使っていたわけですが、今のご時世では金属探知機片手に東部砂漠に分け入り、金鉱を盗掘するというのが金持ちになる抜け道らしい。
ナイル東岸、金鉱の多数隠れている東部砂漠への入口にあたるエドフ周辺の農村の土壌を調査したところ、違法に採掘したと思われる金を処理した残骸のせいで土と水が汚染され、かなりの量のヒ素 (As)、水銀 (Hg)、鉛 (Pb) などが検出されたという。
これは、盗掘した鉱石をナイル川周辺まで持ち帰ってきて、そこで加工しているために発生したものではないかという。
Tracking metal pollution from illegal gold mining: a health risk assessment in Edfu, Egypt
https://www.nature.com/articles/s41598-024-84281-8
論文についてる図よりは、グーグルマップで見たほうがわかりやすい。
エドフは左側の赤い丸をつけたところ。で、右の方にある赤いマーカーがエジプト最大の金採掘場であるスカリ(Sukari)鉱山。その間、砂漠の間を道がつながっているのが見えるが、この道から上下方向に砂漠に入っていったところに小規模な金鉱が隠れており、盗掘するならそのへん、という話。
なので、この金属汚染の調査は最寄りの集落であるエドフで実施されているというわけ。

※ちなみに東部砂漠は、平たい砂漠ではなく「山&谷の繰り返し」。とんでもなくハードな荒野で、古代でも、採石場はつくられていたものの人が住むことは無かった。
エジプトの東部砂漠には、多くの金鉱が隠されている。
たとえば数年前には、カナダの会社が採掘権を買ったニュースが流れていた。
エジプト東部砂漠の金鉱開発、カナダ企業が落札。多額出資へ…ペイするかどうか見届けよう!
https://55096962.seesaa.net/article/501597403.html
また、スカリ鉱山については、最近、別のカナダ企業による買収の話が流れていた。
エジプトの金鉱所有企業がエンデバー社からの19兆ドルの提案を拒否
https://www.arabnews.jp/article/features/article_5420/

このように、エジプトの金鉱は基本的には政府管理のもと、つまりファラオにみかじめ料を払うことなしには採掘できないという状況で採掘されているのだが、ファラオの目の届かないところで民衆が勝手に盗掘して利を得ている、という話なのだ。この盗掘はエジプトで政変が起きた2011年以降、禁止されてもずっと続けられており、取り締まりきれていないという。
…まあそりゃ、砂漠の地理に詳しい地元民がやってるなら、捕まえるのは難しそうですが。
金の値段は年々上がっており、ほんの粒でも手に入れば一攫千金。遺物の盗掘よりも捕まるリスクが低いとなれば、手を出す人もいるのは分からなくもない。
なお、エジプトの東部砂漠の金鉱の数は、古代にほぼ採掘され尽くしたところもあるものの、相当な数あります。
過去に調べた時の金鉱マップが↓これ。小規模な金鉱が多数ある、という感じ。なので全部を見張るのはムリなんですよね。
古代エジプト王朝とヌビアの金: 金鉱の数はなんと250、でも総算出量は…
https://55096962.seesaa.net/article/501069715.html

手掘りで細々盗掘しているなら、量的にはおそらく目立つほどではないのだろうけれど、今も昔も、狙うものが違うだけで一攫千金の盗掘に手を出してしまうのは悲しい農民のさがなのか。それだけ生活が苦しいということなのかもしれないけれど。
*****
オマケ
ナイルの金属汚染といえば、最近こんな論文もあった。
大ピラミッド前の世界最古の港近辺から銅汚染の痕跡を発見。長年に渡る銅加工の証拠か
https://55096962.seesaa.net/article/504602170.html
ナイル東岸、金鉱の多数隠れている東部砂漠への入口にあたるエドフ周辺の農村の土壌を調査したところ、違法に採掘したと思われる金を処理した残骸のせいで土と水が汚染され、かなりの量のヒ素 (As)、水銀 (Hg)、鉛 (Pb) などが検出されたという。
これは、盗掘した鉱石をナイル川周辺まで持ち帰ってきて、そこで加工しているために発生したものではないかという。
Tracking metal pollution from illegal gold mining: a health risk assessment in Edfu, Egypt
https://www.nature.com/articles/s41598-024-84281-8
論文についてる図よりは、グーグルマップで見たほうがわかりやすい。
エドフは左側の赤い丸をつけたところ。で、右の方にある赤いマーカーがエジプト最大の金採掘場であるスカリ(Sukari)鉱山。その間、砂漠の間を道がつながっているのが見えるが、この道から上下方向に砂漠に入っていったところに小規模な金鉱が隠れており、盗掘するならそのへん、という話。
なので、この金属汚染の調査は最寄りの集落であるエドフで実施されているというわけ。

※ちなみに東部砂漠は、平たい砂漠ではなく「山&谷の繰り返し」。とんでもなくハードな荒野で、古代でも、採石場はつくられていたものの人が住むことは無かった。
エジプトの東部砂漠には、多くの金鉱が隠されている。
たとえば数年前には、カナダの会社が採掘権を買ったニュースが流れていた。
エジプト東部砂漠の金鉱開発、カナダ企業が落札。多額出資へ…ペイするかどうか見届けよう!
https://55096962.seesaa.net/article/501597403.html
また、スカリ鉱山については、最近、別のカナダ企業による買収の話が流れていた。
エジプトの金鉱所有企業がエンデバー社からの19兆ドルの提案を拒否
https://www.arabnews.jp/article/features/article_5420/

このように、エジプトの金鉱は基本的には政府管理のもと、つまりファラオにみかじめ料を払うことなしには採掘できないという状況で採掘されているのだが、ファラオの目の届かないところで民衆が勝手に盗掘して利を得ている、という話なのだ。この盗掘はエジプトで政変が起きた2011年以降、禁止されてもずっと続けられており、取り締まりきれていないという。
…まあそりゃ、砂漠の地理に詳しい地元民がやってるなら、捕まえるのは難しそうですが。
金の値段は年々上がっており、ほんの粒でも手に入れば一攫千金。遺物の盗掘よりも捕まるリスクが低いとなれば、手を出す人もいるのは分からなくもない。
なお、エジプトの東部砂漠の金鉱の数は、古代にほぼ採掘され尽くしたところもあるものの、相当な数あります。
過去に調べた時の金鉱マップが↓これ。小規模な金鉱が多数ある、という感じ。なので全部を見張るのはムリなんですよね。
古代エジプト王朝とヌビアの金: 金鉱の数はなんと250、でも総算出量は…
https://55096962.seesaa.net/article/501069715.html

手掘りで細々盗掘しているなら、量的にはおそらく目立つほどではないのだろうけれど、今も昔も、狙うものが違うだけで一攫千金の盗掘に手を出してしまうのは悲しい農民のさがなのか。それだけ生活が苦しいということなのかもしれないけれど。
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オマケ
ナイルの金属汚染といえば、最近こんな論文もあった。
大ピラミッド前の世界最古の港近辺から銅汚染の痕跡を発見。長年に渡る銅加工の証拠か
https://55096962.seesaa.net/article/504602170.html