イベリア半島の鉄器時代の「生首」は晒し首インテリアか特殊な埋葬習慣か。出身地調査から見える傾向

北東イベリアには、青銅器時代以降に生首をさらす風習があった、とギリシャ語やラテン語の文書で言及されているという。(これはおそらくガリアの人頭崇拝のこと)

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出典元

だが、考古学資料があんまり無いので実態がよく分からない。
戦争が討ち取った敵の首をトロフィーとして飾ったのか。
それとも、尊敬すべき長老などの頭蓋骨を飾ってお守りにするような特殊な埋葬習慣なのか。

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というわけで、イベリア半島北東部の紀元前6-1世紀ごろの遺跡から出ている、頭蓋骨にクギをさした跡(壁かけにするためひっかけた跡)があるものを調査してみたよ、というのが今回の研究。頭蓋骨には歯がついているはずなので、ストロンチウム同位体での出身地分析が使える。頭蓋骨の人物の出身地が遠方なら前者の可能性が高くなり、地元なら後者の可能性が高くなる、というわけである。

Territorialisation and human mobility during the Iron Age in NE Iberia: An approach through Isotope Analyses of the Severed Heads from Puig Castellar (Barcelona, Spain) and Ullastret (Girona, Spain)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352409X25000677?via%3Dihub

分析に使われた頭蓋骨が発掘された遺跡は Ullastret とPuig Castellar の二箇所。
性別不明のものもあるが、ほぼ「若い男性」となっており、発見場所も神殿などではなく住居内のため、どちらかというと争い事に関係した戦利品の可能性が高いという。

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またUllastretの頭蓋骨のうち2つは地元民のもので、地元の紛争などが関係しているかもしれない、という。
文書記録として生首崇拝や首刈りの風習が記録されたのはかなり後のようなので細かい手順が記録通りなのかは不明だが、少なくとも、首を居間に飾る風習自体はあったと言えるかもしれない。

…うちの田舎の家の居間にはなぜかシカの頭蓋骨が飾ってあったけど、たぶんあのノリだな…。そう思えばアリ…か…(?)