南部イギリスの古代遺跡「フラッグ・ストーン」、最新の年代測定でストーンヘンジよりちょっと古いと判明

「フラッグストーン(Flagstones Enclosure)」という遺跡は、しばしばストーンヘンジと比較されることで知られる新石器時代後期の遺跡である。
イギリス南部のドーセットにあり、今まではストーンヘンジと同じ頃に作られたものとされていたが、実際には数百年古い可能性が高くなった、という研究が出ていた。
つまり、この遺跡が先に作られ、形のレイアウトが定まったあとにストーンヘンジが真似して作られた、という可能性が出てきたのだ。

Beginning of the circle? Revised chronologies for Flagstones and Alington Avenue, Dorchester, Dorset
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/beginning-of-the-circle-revised-chronologies-for-flagstones-and-alington-avenue-dorchester-dorset/622950E4BA32F2729A0C830BFDCC8107

ブリテン島で、サークル状の大規模な遺跡、かつ同時代のものは、以下の3つだとされる。
このうちのフラッグストーンがいちばん古いようなので、大きなサークル状の遺跡がどのように発展してきたかの歴史の筋書きが少し書き換わるかもしれない。同時に作られたわけではなく、実際には少し時代がズレていて、何らかの思想をもって理想の形式として発展してきたかもしれないのだ。

フラッグストーン: ドーセット
ストーンヘンジの最初期の段階: ウィルシャー
ランディガイ・ヘンジ(Llandygái Henge)のA : グウィネズ

で、面白いなと思ったのは、フラッグストーンの遺跡の近くには土手を築いた通路のような遺跡で別々の遺跡を繋いでいるような構造があるのだが、通路がいちばん古いということ。
ストーンヘンジの周囲にも通路状の遺跡の痕跡はあるのだが、たぶんこれ通路の部分が本体、というか「聖地巡礼のためのルート」が最初にあって、「聖地を囲むために作られたサークル状の遺跡」は後付けなんじゃないかと思われる。
そして、そのサークル状の遺跡の部分は、何度も作り直されたり、後世に付け足されたりしていて、今残ってるものの年代しか測定出来ていない可能性もある。

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実際、フラッグストーンの中にも作られたのがちょっと古い紫色の部分がわずかに見えてるから、もしかしたら、石でサークルを作る前は木で何か作ってたとか、単なる土手で囲んでたとかがあるのでは。残っていないだけで。

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なお、ブリテン島に多数存在する巨石遺跡群、実は、年代測定が間違ってたり、そもそも測定してなかったりするものもあり、近年には、古いものと考えられていたストーンサークルが実は数十年前に土地の持ち主が作ったものだと判明したケースもある。

スコットランドの「古代の」ストーンサークル、実は90年代半ばに作られていたことが判明
https://55096962.seesaa.net/article/201901article_22.html

また、上部構造が完全に消えていて、最近になってようやく発見されたものもある。
使ってた石が小さかったり、そもそも石で作ってなかったりすると、こんな感じの発見され方になることも。

アイルランドで新たにストーンサークルの痕跡が見つかる。
https://55096962.seesaa.net/article/201807article_24.html

ストーンヘンジやストーンサークルの歴史って、知られてるようで案外、残ってる謎も多いジャンルだと思うんですよね。
そこが楽しいんですけども。