砂漠が緑に変わる時。インド-パキスタン間のタール砂漠、気候変動と人為的原因より緑化が進む

気候変動と人為的な地下水の組み上げによって、インド・パキスタン国境に広がるタール砂漠の緑化が、ここ二十年ほどの間に急速に進みつつあるという。この地域はインダス文明の栄えた場所であり、インダス文明衰退の原因は雨量の減少によって川の流れが変化したことではと言われていることを踏まえると、なかなか面白い話だなと思う。

Monsoons and groundwater pumping: How climate change and human interventions drive greening of the Thar desert
https://phys.org/news/2025-04-monsoons-groundwater-climate-human-interventions.html

タール砂漠はココ

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緑化の一つの原因は、モンスーンの雨量増加だ。
この砂漠は、冬(12-2月)、夏(3-6月) 、モンスーン(7-9月)、ポストモンスーン(10-11月)の4つの季節に分類でき、毎年7-9月に集中して雨が降るが、平均して250mm以下だという。しかし近年ではこの部分の雨量が増加傾向にある。

年間降水量は64%増加、この二十年での緑化率は38%。急速に緑が増えている。

しかし理由は雨が増えたことだけではなく、人口増加によって農業の向かない土地まで作物を植えるようになり、その植物を育てるために井戸から水を汲み上げて散布していることによるらしい。当然、地下水の水位は下がっているはずで、持続可能な開発のためには地下水を枯渇させないようにしなければならない。増えた雨量で地下水の枯渇がカバーできるのかどうかは不明だ。

もしこのまま砂漠の緑化が進むとしたら、それ自体が地域の気候を変化させてしまうかもしれない。または、途中で地下水が枯渇して、雨量の増加だけではリカバリ不可能になった場合、緑化したところはまた砂漠に戻ってしまうのかもしれない。この先の変化がどう転ぶのかは読めない。

またもう一つ気になっているのは、この場所はサバクトビバッタの繁殖地の一つということである。

インダス文明はバッタの大群の襲撃を受けたか。ちょうど今、その地域が酷いことになってるけど…
https://55096962.seesaa.net/article/202007article_13.html

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モンスーンで砂漠に雨が降って柔らかくなったところにバッタが産卵して孵化するのだが、砂漠が緑化して砂地が無くなってしまうと、その場所ではもう繁殖ではなくなる。バッタの生態も変化しそうな気がしている。(たぶん繁殖地が変わる)
おそらく、他の砂漠固有の動植物にも影響は出るだろう。

いったん砂漠化したところが緑に戻るってあんまり見ない現象だから、この先どうなっていくのかなーというのが気になっている。