「緑のサハラ」に暮らした7,000年前の人骨のゲノム調査から、サハラ北部への外部影響が限定的だったことが明らかに
サハラ北部のリビア南西部、リビア砂漠のはじっこのほうにあるタカルコリ遺跡(The Takarkori rock shelter)で発見された、約7,000年～6000年前の女性2人の人骨からフルゲノムを採取することに成功、遺伝情報を調べてみたところ、
・サハラ南部とのつながりがほとんど見られず、サハラ砂漠をはさんだ人の移動はほぼ無かった
・牧畜技術を持っていたにも関わらず、レバントからの移住はほとんど無く限定的な遺伝的繋がりしか無かった
ということが分かったという研究。
この7,000年前の人たちが、約5,000年前にエジプト文明の基礎となった人たちの親戚だった可能性があるということを知っていると、研究内容がさらに面白くなると思う。
彼女たちが生きて居た時代、サハラ周辺は今よりも緑の範囲が広く、「緑のサハラ」と呼ばれていた。いわゆる「アフリカ湿潤期」のピークは約9,000年前～6,000年前とされる。それ以降は、現在に至るまでサハラ周辺の乾燥化が進み、人が住めなくなって一部がナイル川流域に移動してきてエジプト文明の基礎を築く集団になる。
★元論文
Ancient DNA from the Green Sahara reveals ancestral North African lineage
https://www.nature.com/articles/s41586-025-08793-7
↓マークのついている場所が遺跡のあるところ。色で地理についての説明があり、遺跡のある地点は、アフリカ湿潤期にはステップと灌木の生えた草原の中間あたりに位置していた。
★要約記事
7,000-Year-Old Skeletons From the ‘Green Sahara’ Reveal a Mysterious Human Lineage
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/7000-year-old-skeletons-from-the-green-sahara-reveal-a-previously-unknown-human-lineage-180986403/?itm_source=parsely-api?itm_source=most-popular&itm_medium=parsely-api
今回の遺跡のある、Takarkori砂漠の現在は、こんな感じの風景だ。
ここにかつては草木が生え、家畜が飼育されていた。岩絵にヤギやウシが登場することでも有名。
いつか行きたくて下調べだけしておいたタッシリ・ナジェール遺跡も、ここの近くにある。
サハラ、砂漠の画廊 ―タッシリ・ナジェール遺跡について調べる。
https://55096962.seesaa.net/article/201502article_12.html
サハラの岩絵、タッシリ・ナジェールとへンリ・ロートの探検による問題について
https://55096962.seesaa.net/article/500113552.html
で、彼らは牧畜の技術を持っていたわけなのだが、家畜化の起源地はサハラ北部ではない。なので家畜と牧畜技術は別のところから伝わってきたはずなのだが、技術だけ伝播していて人は移動していない。というのが、今回の研究の趣旨だ。
遺伝的にはサハラ南部の集団と約5万年前に分岐し、その後、数万年に渡って人の行き来の無い孤立状態のまま集団が維持されている。レバント人との混血の痕跡がわずかに(約7%)見られる、という結果の部分は、レバント＝シリア・パレスチナ方面のことなので、おそらく羊やヤギといった家畜と一緒に、若干の人が東から移住してきていたのだと思われる。レバント由来のDNAを経由してネアンデルタールからのDNA流入もある。残りは北アフリカで長年孤立していた祖先集団に由来するDNA。
分析さされた個体数が2人なので少ないっちゃ少ないが、「サハラの北側に長年孤立していた北アフリカ集団がいた」という部分までは確定事項にして良さそう。また、「肥沃な三日月地帯」の西端であるレバントから牧畜技術をたずさえた集団が、ナイル流域を越えてリビア砂漠まで西進していたことも確実視される。ただ、その集団は人を置き換えるほどの大きな集団では無かったようだ、ということ。
サハラが緑だった時代の遺跡としては、オマケとして以下もおいておく。
リビア砂漠はエジプトの先王朝時代とリンクする遺跡・遺物が出てくるので、ピラミッド以前の時代に興味のあるエジプトマニアは、そっち方面もアンテナ張っておくと、たまにおいしいネタが流れてきますよ。
リビア砂漠で見つかる謎の土器、サハラが乾燥化する以前のウッドオイル製造器の可能性
https://55096962.seesaa.net/article/492702936.html
・サハラ南部とのつながりがほとんど見られず、サハラ砂漠をはさんだ人の移動はほぼ無かった
・牧畜技術を持っていたにも関わらず、レバントからの移住はほとんど無く限定的な遺伝的繋がりしか無かった
ということが分かったという研究。
この7,000年前の人たちが、約5,000年前にエジプト文明の基礎となった人たちの親戚だった可能性があるということを知っていると、研究内容がさらに面白くなると思う。
彼女たちが生きて居た時代、サハラ周辺は今よりも緑の範囲が広く、「緑のサハラ」と呼ばれていた。いわゆる「アフリカ湿潤期」のピークは約9,000年前～6,000年前とされる。それ以降は、現在に至るまでサハラ周辺の乾燥化が進み、人が住めなくなって一部がナイル川流域に移動してきてエジプト文明の基礎を築く集団になる。
★元論文
Ancient DNA from the Green Sahara reveals ancestral North African lineage
https://www.nature.com/articles/s41586-025-08793-7
↓マークのついている場所が遺跡のあるところ。色で地理についての説明があり、遺跡のある地点は、アフリカ湿潤期にはステップと灌木の生えた草原の中間あたりに位置していた。
★要約記事
7,000-Year-Old Skeletons From the ‘Green Sahara’ Reveal a Mysterious Human Lineage
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/7000-year-old-skeletons-from-the-green-sahara-reveal-a-previously-unknown-human-lineage-180986403/?itm_source=parsely-api?itm_source=most-popular&itm_medium=parsely-api
今回の遺跡のある、Takarkori砂漠の現在は、こんな感じの風景だ。
ここにかつては草木が生え、家畜が飼育されていた。岩絵にヤギやウシが登場することでも有名。
いつか行きたくて下調べだけしておいたタッシリ・ナジェール遺跡も、ここの近くにある。
サハラ、砂漠の画廊 ―タッシリ・ナジェール遺跡について調べる。
https://55096962.seesaa.net/article/201502article_12.html
サハラの岩絵、タッシリ・ナジェールとへンリ・ロートの探検による問題について
https://55096962.seesaa.net/article/500113552.html
で、彼らは牧畜の技術を持っていたわけなのだが、家畜化の起源地はサハラ北部ではない。なので家畜と牧畜技術は別のところから伝わってきたはずなのだが、技術だけ伝播していて人は移動していない。というのが、今回の研究の趣旨だ。
遺伝的にはサハラ南部の集団と約5万年前に分岐し、その後、数万年に渡って人の行き来の無い孤立状態のまま集団が維持されている。レバント人との混血の痕跡がわずかに(約7%)見られる、という結果の部分は、レバント＝シリア・パレスチナ方面のことなので、おそらく羊やヤギといった家畜と一緒に、若干の人が東から移住してきていたのだと思われる。レバント由来のDNAを経由してネアンデルタールからのDNA流入もある。残りは北アフリカで長年孤立していた祖先集団に由来するDNA。
分析さされた個体数が2人なので少ないっちゃ少ないが、「サハラの北側に長年孤立していた北アフリカ集団がいた」という部分までは確定事項にして良さそう。また、「肥沃な三日月地帯」の西端であるレバントから牧畜技術をたずさえた集団が、ナイル流域を越えてリビア砂漠まで西進していたことも確実視される。ただ、その集団は人を置き換えるほどの大きな集団では無かったようだ、ということ。
サハラが緑だった時代の遺跡としては、オマケとして以下もおいておく。
リビア砂漠はエジプトの先王朝時代とリンクする遺跡・遺物が出てくるので、ピラミッド以前の時代に興味のあるエジプトマニアは、そっち方面もアンテナ張っておくと、たまにおいしいネタが流れてきますよ。
リビア砂漠で見つかる謎の土器、サハラが乾燥化する以前のウッドオイル製造器の可能性
https://55096962.seesaa.net/article/492702936.html
