街歩き① トルコのインフレと政情不安について

今回のトルコ旅行では、辺境の遺跡めぐりが主体だった。
だが国際線の発着はイスタンブールが玄関口。ここは絶対に避けて通れない街である。そして、ちょうど訪問の少し前、イスタンブール市長イマモール氏が汚職容疑で逮捕されるという事件が発生した。

トルコは長らくエルドアン大統領による独裁政治が続いており、イマモール氏はその有力な対立候補だった。エルドアン氏は失策続きで、ここ5年くらいの間にトルコの経済は急速に悪化している。トルコリラも急落、インフレが続いて庶民の生活は苦しい。
エルドアン氏が建国以来の国是だった「政教分離」の原則を破棄しようとしていることにも危機感を持つ層は多い。

そんな中、次の大統領選挙で立ちはだかるだろう政敵を力技で排除したのだから、そりゃデモも起きるよね。という話である。

実際、トルコ国内を移動していると、「これは不満も貯まるよな」という場面にはいくつか出くわした。

まずは、なんといっても物価高。
リラが急落していることもあり、交通費、観光地の入場料金などは軒並み上昇。というか頻繁に値上げが実施されており、もはや旅行ガイドやホームページの内容は一切信用できないものとなっている。

イスタンブールの地下鉄は、前回の訪問では5リラだった。しかし今回はなんと、25リラくらい。イスタンブールカードのチャージの減りがあまりに早くて「たっか!!!」って思わず声出た。1回乗りのみのジェトンというコインシステムは姿を消していた。というか改札にジェトン入れるとこ無くなってた。

前回1ピース5リラだったケーキやさん。(この写真は前回2012年のもの)
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今回25リラ~30リラ。これも「たっか!」って思った。ほぼ同じラインナップなのに…約5倍…。
でもいま1リラ=4円くらいなんですよね…。昔20円くらいだったから、円に換算すると妥当なレベル。ただ、地元民にとっては単純に物価5倍なので相当キツいだろうなと思う。
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トルコではいま、リラの暴落を嫌って預金額が減っているという。銀行に預けずに、ドルやユーロでタンス預金したほうがお得だというのだ。
そのせいで銀行の利回りが40%を越えた、などという意味不明なニュースも流れていたが、暴落速度を見るとさもありなん。
預金しすぎで利率の低い日本からは信じられない現象である。

それでも、イスタンブールの街にはそれなりに活気があった。
観光客がいちばん訪れる街であり、ユーロやドルでの支払いにより経済が潤っているのだろう。

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一方で、地方都市は軒並み寂れている。
首都アンカラでさえあまり活気は感じられず、微妙感が漂う。アンカラを離れると、もはや小さな農村ばかりである。農村には娯楽施設もなくちょっとしたスーパーがあるくらい。トルコでも高齢化や少子化は進んでいるようなので、この先、限界集落も出てくるのでは…? と思った。

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現状、エルドアン氏はインテリや高学歴層には支持されておらず、支持基盤は農村の敬虔なイスラム教徒だと言われる。
各地に公金投入の立派なモスクを建てているのも、彼らにアピールするためと言われる。

数年前にイスタンブールのアヤ・ソフィア教会を「博物館からモスクに戻す」と宣言し、観光客にスカーフ着用を義務づけるようになったのもその政策の一巻である。

どうなってんのかなーと思って中に入ってみると、ミフラーブの上部にあった聖母マリアのフレスコ画に目隠しの布が張られていて、ははーん、なるほどねーという感じ。前回はこの布なかった。

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それと観光客立入禁止になった一階部分には、他のモスクと同じく緑色の絨毯がしきつめられ、土足では入れなくなっていた。とはいえ隣にブルーモスクもあるんで、誰もお祈りしてなかったけど。
入口では入場者の格好チェックがあり露出多いとダメ。
定時のアザーンはアヤソフィアからも流れるようになっており、ブルーモスクと交互にハモるようにして放送されていた。些細な変化ではあるが、エルドアン氏の政治方針を象徴する変化と言えるだろう。

ヨーロッパに近いイスタンブール市民は、特にこうした旧時代に戻ろうとするような変化には敏感と思われる。
また、経済政策の失敗はまだ尾を引くだろうし、イスタンブール市長の拘束によってリラはさらに下がってしまっている。今後のトルコ情勢は不透明で、旅行者の情報集めもなかなか大変だろうなと思うのだ。

・博物館の入場料や交通費は値上がり傾向、予算は多めに組んだほうがいい
・物価のインフレで食費はほぼ日本と同等、むしろ高い地方もある(クオリティは以前とあんま変わらんのだが…)
・イスタンブール、アンカラは定期的にデモが起きてるので封鎖の危険性を覚悟すること


今回の旅行で実感したのは、「地球の歩き方」のようなガイドブックを使って情報収集する時代は終わっちゃったんだな…ということ。
人の旅行体験とかブログとかSNS見て情報集めるのがいちばん手っ取り早くて正確だったし、なんなら1ヶ月前の情報ですら古くて、そこからさらにバス代とかが値上がりしていた。
アヤソフィア入場時にスカーフ着用必須のルールは去年改定されたばかりで、旅行記上げてる人の情報見て無かったら危なかった。
状況やルールが刻一刻と変わる中で、1年とか2年のスパンで本出してる出版社の旅行ガイドなんてほぼ目安にしかならない。
今後の旅行は、インターネット上での情報さがしがメインになっていくんだろうな…


あとイスタンブール、「建物内の喫煙は禁止」という条例?が出来たらしく、タバコ吸ってる人は全員建物の外にいてました。
居酒屋もテラス席のみ喫煙可能だそうです。日本とは逆なのでご注意ください。

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