仏教徒だけどその感覚が分からない…「ブッダの遺物」がサザビーズのオークションへ→仏教徒コミュニティ反発

少し前に流れていた、このニュース。
「ブッダの副葬品」ってなんやねん、という話だが、要するに仏舎利といっしょに収められていた後世の遺物である。

日本人だと一般的によく知られている話かと思うが、ブッダの骨、仏舎利はそれこそ1人の人間ぶんに収まらないほど多数あり、世界各地に分骨されたものが存在する。日本にも沢山ある。どれが本物とかは分からない。キリスト教でいう「聖遺物」が仏教でいう「仏舎利」なのである。
で、価値があるのは仏舎利だけかと思っていたら、仏舎利の収められていたストゥーパから出てきた寄進物の宝石類も重要らしい。

その感覚がよく分からん…という話である。

ブッダの副葬品の宝石がオークション出品で各界が大論争。インド文化省の抗議で延期が決定
https://artnewsjapan.com/article/32239

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よくわからん理由として、記事に書かれてる内容がだいぶ省略されてしまっていることがある。
まず William Claxton Peppé という人物だが、単純にウィリアム・キャクストンで探すと15世紀のイギリス人外交官のほうがでてきてしまう。「ペッペ」が本体というか、探すべき人物である。

遺跡名はピプラワであり、遺跡名で探して出てきた情報を見ると、だいたいの事情は分かる。
以下はWikipediaの記事。

https://en.wikipedia.org/wiki/Piprahwa#Excavation_by_William_Claxton_Pepp%C3%A9
https://www.piprahwa.com/the-discovery

伝承によると、ブッダの死後、遺骨と遺灰が分配され、ブッダの故郷に近い場所に埋葬地が作られた。ピプラワの仏塔は三段階に分けて作られており、最古の層は紀元前5世紀頃まで遡るとされるため、ブッダの死の直後に作られた可能性があり、そうだとすると収められていたのが本物のブッダの遺骨と遺灰、つまり仏舎利だった可能性が出てくる。

遺骨はタイへ運ばれ、タイ、ミャンマー、スリランカなど近隣の仏教寺院に分けられたという。

で、重要なポイントとして、三段階に分けて作られた仏塔のうちペッペが発掘したのは、アショーカ王が作った第二期までなのである。
宝石が見つかったのは、ブッダの死後、数百年して仏塔が建て増しされた部分からである。つまりブッダの時代の遺物ではない。
そして、「副葬品」というよりは、仏舎利とともに収められた「供物」である。

というわけで、これらの宝石類はブッダ自身が持っていたものでも使ったものでもない。「ブッダの遺物」という言い方がおかしいのだ。
純粋に古代王朝の遺物としての価値はともかく、仏教徒コミュニティが宗教上の理由で売買に反対するというのはおかしなことのように思う。というかブッダなら、「そんな欲は捨てたほうがいいよ」くらい言いそうだ。

いっそ販売した金をどこかに寄付するくらいしたほうが仏教的には正しいような気もするのだが…。

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[>オマケ

イギリスの名家が長年、私的な財産として囲っていた貴重な遺物が市場に流れたケースとしては、近年では、大手旅行代理店のトーマス・クック破綻によるエジプト遺物の流出がある。

旅行代理店トーマスクック破産→創業者由来のコレクション売りに出される(古代エジプト遺物)
https://55096962.seesaa.net/article/202008article_8.html

また名家ではなく博物館が破綻して流出したケースではノーサンプトン博物館から流出したエジプト遺物がある。

さらば、セケムカーの書記座像。イギリスで競売にかけられた一級品のエジプト・コレクション輸出される
https://55096962.seesaa.net/article/201605article_15.html

オークションに出品された遺物の売買に物言いをつけるのは、エジプトさんが常連であり、貴重な王家の遺物などが出てくるとだいたいエジプト政府の口撃が火を吹く。(笑) ので、今回はインドだけど、よく見る話だな…って感じではある。
ただ、植民地支配を受けていた時代のことを考えると、「勝手に発掘して持ち出したもん売り飛ばしやがって」という気持ちは、分からなくもない。

クリスティーズのオークションにツタンカーメン像の頭部出品、エジプトさんが物言い
https://55096962.seesaa.net/article/201906article_12.html