植物DNAの分析と「葉緑体DNA」: 古代エジプトの小麦についての覚書き
古代エジプトで栽培された小麦といえば、エンマーコムギである。この小麦、実はどこで栽培化されたのかが分かっていない。農耕が開始されたのは、小麦の原種の生えている「肥沃な三日月地帯」と呼ばれる地域のどこかだったはずなのだが、その地域内のどのへんか分からんということだ。
で、この起源地とかを植物DNAから調べてる研究があったので、結論だけ書いておく。
・栽培化は独立して、少なくとも2回起きている。現代のエンマーコムギに繋がるのはこの2系統
(途中で途切れた系統もあるかもしれないので、栽培化の回数は実際にはもっと多い可能性あり)
・うち1系統はアナトリア南南西付近が起源地、のこり1系統は不明
・野生の4倍体小麦から派生している
ソース
Origin of domesticated emmer and common wheat inferred from chloroplast DNA finger printing
https://www.marknesbitt.org.uk/uploads/1/7/7/1/17711127/nesbitt_emmer.pdf
研究資料を辿っていくと、最終的に日本の研究者に行き着く。
というか、どうもこの森先生という人がこのジャンルの研究の第一人者らしい。
神戸大学研究者ページ
https://kuid-rm-web.ofc.kobe-u.ac.jp/search/detail.html?systemId=4f2f9d18956c4d9d520e17560c007669&lang=ja
コムギとヒト1万年の旅
https://yumenavi.info/vue/lecture.html?University=V&SearchMod=4&SerKbn=3&ProId=WNF026&Page=1&GNKCD=g005131&KeyWord=%E7%A5%9E%E6%88%B8%E5%A4%A7%E5%AD%A6&back=&CLGAKOCD=034520&mxorder=&gakubunm=&gakkanm=&From=portal

ここにある「葉緑体イブは二人いる」というのが、大元の栽培系統が2系統あった、という意味。
野生の小麦が生えているような地域だと栽培化はそんなに難しくなく、おそらく複数箇所で別々に畑作って栽培するようになったのだろうと思われる。
中の人も肥沃な三日月地帯の一部であるヨルダンに行った時、道端に麦の原種が雑草としてホイホイ生えてるのを見て「マジか…」って思ったことがある。
これらの研究の中に出てくる「葉緑体DNA」というのがミソである。
自分も知らんかったので調べてみたのだが、どうやら植物のDNAは、植物自体の核、ミトコンドリア、葉緑体の3個所に保存されているらしい。
ミトコンドリアがもともとは本体の生物と別の生き物で、細胞内に入り込んで共生していることはよく知られている(「パラサイト・イヴ」とかでも有名になった)が、葉緑体も元は別の生き物で、シアノバクテリアに由来している。これも高校の生物で習う内容。
核DNAは1つの細胞に1セットだけなのだが、葉緑体のDNAはいっぱいあるので破損していても分析しやすい。
なので、植物の系統を調べる場合にはこれを使うことが多いようなのだ。ナルホド。
※ちなみにDNAにはリンが多数含まれているため、植物はリンが足りなくなると大量にある葉緑体DNAを分解して自分の栄養にしてしまうらしい。
https://academist-cf.com/journal/?p=9684

というわけで、エジプトのエンマーコムギの起源地は、「肥沃な三日月地帯のどこか」であり、何度も栽培化が行われ交雑しているので特定の一箇所に絞ることはできなさそうなのだが、栽培化植物の起源地探しの手順とかがある程度分かったので、よしとしよう。
なお今回、古代エジプトで作られていた小麦の種類を改めて調べていたら、最近になって特定されたという T. turanicum という種類が出てきた。聞き覚えがないのでちょっとググってみると、日本語ではホラーサーン小麦と呼ばれており、古代種のひとつだがこれも起源地不明らしい。
粒がかなり大きく、食べ応えはありそうなのだが、現代ではあまり栽培されておらずラクダのエサなどにしているようなので、味はあんまり美味しくないとかなのかもしれない。
ホラーサーンコムギ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%82%AE
このコムギは、過去のDNA解析では他の種類と混同されており、わりと最近になってようやく固有種と分かったらしい。
今のところ、古代のいつごろから栽培されていたのかは不明だそうだ。
今回調べられたことは以上。
まさかの日本人研究者に戻って来るとは思わなかったな…。
で、この起源地とかを植物DNAから調べてる研究があったので、結論だけ書いておく。
・栽培化は独立して、少なくとも2回起きている。現代のエンマーコムギに繋がるのはこの2系統
(途中で途切れた系統もあるかもしれないので、栽培化の回数は実際にはもっと多い可能性あり)
・うち1系統はアナトリア南南西付近が起源地、のこり1系統は不明
・野生の4倍体小麦から派生している
ソース
Origin of domesticated emmer and common wheat inferred from chloroplast DNA finger printing
https://www.marknesbitt.org.uk/uploads/1/7/7/1/17711127/nesbitt_emmer.pdf
研究資料を辿っていくと、最終的に日本の研究者に行き着く。
というか、どうもこの森先生という人がこのジャンルの研究の第一人者らしい。
神戸大学研究者ページ
https://kuid-rm-web.ofc.kobe-u.ac.jp/search/detail.html?systemId=4f2f9d18956c4d9d520e17560c007669&lang=ja
コムギとヒト1万年の旅
https://yumenavi.info/vue/lecture.html?University=V&SearchMod=4&SerKbn=3&ProId=WNF026&Page=1&GNKCD=g005131&KeyWord=%E7%A5%9E%E6%88%B8%E5%A4%A7%E5%AD%A6&back=&CLGAKOCD=034520&mxorder=&gakubunm=&gakkanm=&From=portal
ここにある「葉緑体イブは二人いる」というのが、大元の栽培系統が2系統あった、という意味。
野生の小麦が生えているような地域だと栽培化はそんなに難しくなく、おそらく複数箇所で別々に畑作って栽培するようになったのだろうと思われる。
中の人も肥沃な三日月地帯の一部であるヨルダンに行った時、道端に麦の原種が雑草としてホイホイ生えてるのを見て「マジか…」って思ったことがある。
これらの研究の中に出てくる「葉緑体DNA」というのがミソである。
自分も知らんかったので調べてみたのだが、どうやら植物のDNAは、植物自体の核、ミトコンドリア、葉緑体の3個所に保存されているらしい。
ミトコンドリアがもともとは本体の生物と別の生き物で、細胞内に入り込んで共生していることはよく知られている(「パラサイト・イヴ」とかでも有名になった)が、葉緑体も元は別の生き物で、シアノバクテリアに由来している。これも高校の生物で習う内容。
核DNAは1つの細胞に1セットだけなのだが、葉緑体のDNAはいっぱいあるので破損していても分析しやすい。
なので、植物の系統を調べる場合にはこれを使うことが多いようなのだ。ナルホド。
※ちなみにDNAにはリンが多数含まれているため、植物はリンが足りなくなると大量にある葉緑体DNAを分解して自分の栄養にしてしまうらしい。
https://academist-cf.com/journal/?p=9684
というわけで、エジプトのエンマーコムギの起源地は、「肥沃な三日月地帯のどこか」であり、何度も栽培化が行われ交雑しているので特定の一箇所に絞ることはできなさそうなのだが、栽培化植物の起源地探しの手順とかがある程度分かったので、よしとしよう。
なお今回、古代エジプトで作られていた小麦の種類を改めて調べていたら、最近になって特定されたという T. turanicum という種類が出てきた。聞き覚えがないのでちょっとググってみると、日本語ではホラーサーン小麦と呼ばれており、古代種のひとつだがこれも起源地不明らしい。
粒がかなり大きく、食べ応えはありそうなのだが、現代ではあまり栽培されておらずラクダのエサなどにしているようなので、味はあんまり美味しくないとかなのかもしれない。
ホラーサーンコムギ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%82%AE
このコムギは、過去のDNA解析では他の種類と混同されており、わりと最近になってようやく固有種と分かったらしい。
今のところ、古代のいつごろから栽培されていたのかは不明だそうだ。
今回調べられたことは以上。
まさかの日本人研究者に戻って来るとは思わなかったな…。