ギザの三大ピラミッドに色はついていたか、今はもう言及されることのなくなった説について

もうだいぶ前になるのだが、ギザの三大ピラミッドには色がついていたかもしれない。という説が存在した。
古代エジプトの神殿には例外なく彩色がされていたのだから、ピラミッドが真っ白だったはずがないだろう、というところから出てきた説である。

しかし特に有力な証拠もなく、「そもそも、あのデカいのに色つけられるだけの染料は用意できなくね?」とか「表面の化粧石をはめ込んだあとだと色つける足場組めなくね?」とかのツッコミを食らって有力説になることはなく、現在では取り上げられることはほとんど無い。

そもそも彩色されていたことが分かっているのは新王国時代以降の神殿なので、ピラミッドが作られていた時代の古王国時代の神殿が彩色されていたのかは分かっていない。(古王国時代の神殿は遺構とか一部の石材とかしか残っていない)
大ピラミッド前のスフィンクスについては彩色されていた可能性もあるようだが、古王国時代から彩色されていたのか、後世にはじめて色を付けられたのかが不明だ。

いずれにしても、現在は言及されることのない説となってしまっている。

そんな懐かしい説の話をなぜいまするのかというと、気がついたらインターネット上で言及していたサイトが全部消えてしまっていたからである。国内、国外とも古い個人サイトやブログはほぼ全滅なのだ…。
「過去に存在したが廃れた」説と、「誰も一度も言及していない」説は違う。

かつて存在していたことも、検索してでてこなければ無かったことにされてしまうのが現代というもの。なので、説として記憶に留めるためにおさらいがてらの内容をまとめておこうと思う。

●日本語で載ってる本

「エジプト学夜話」(1980年発刊)あたりがまだ手に入りやすい本かな…
これでもいまから40年以上前の本。

●最初にこの説が出てきたのは1943年

カイロに住んでいたアマチュア考古学者のフランス人による説だという。その後、1950年にピラミッドから剥離したとされる石を分析したフランス人化学者(科学者ではなくバケガクの人)によって紅色の色素が検出されたことから、かつてピラミッドは赤い色に彩色されていたはずだという説が公表された。
赤は古代エジプトにとって太陽の色だとかの理由づけも成された。
しかし特に議論が盛り上がることはなく、5年くらいで説としては言及されることもなくなってしまった。

●彩色されていた可能性はあるのか

最初に述べたように、そうだと信じられるだけの根拠が薄い。たとえ彩色されていたとしても、ピラミッドから剥離した石は四千五百年も風雨にさらされていたはずで、証拠が残っているとも思えない。
いちばん小さいメンカウラー王のピラミッドの外装下部に赤みを帯びた花崗岩が使われていたことが分かっているが、色がついていたと分かるのはここだけで、現在では彩色されていたと信じる学者はほぼいないと思われる。

※赤みを帯びていたといっても、↓の写真の通り「真っ白な石灰岩に比べればちょっと赤く見えるかな…」くらいの色

Menkaure's_pyramid,_unfinished_stones.jpg

というわけで、この「ピラミッド彩色説」はいまでは信じられていないのだが、ここから派生した「では、神殿や記念碑(オベリスクなど)はいつから彩色されるうようになったのか」や、「新王国時代に作られた小型ピラミッドは彩色されたのか/されることがなかったのか」という疑問についてはいまでも議論の余地があり、検討する意義がある。

新王国時代に個人墓にくっついていた小型ピラミッドの中には白く彩色されていたかもしれないものもあるようなので、実はギザのピラミッドの正面に白い化粧石を貼ってたこと自体が彩色と同じ意味だったのかもしれない。



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なお、アマチュアが唱えた説がのちに専門家によって言及されるというパターンで、フランス人アマチュアが唱えて一時期話題になった説に「大ピラミッドは内部傾斜路で作られた」というものがある。
これは、よりにもよってNHKスペシャルが取り上げたせいで無駄に知名度が高くなったけど、理論としてはかなりお粗末だったので主流になることなく衰退した。

ジャン・ピエール・ウーダン氏による「クフ王のピラミッド建設法の新説」に対する他専門家の反応
https://55096962.seesaa.net/article/200910article_19.html

他に、最近だとピラミッド建造に水圧式エレベータを使ったのではとかいう説もでましたが、こっちは特に話題にならずにあっさり消えましたね…説が複雑すぎてオカルトマニアが食いつかなかったんですよね。
論文読んで理解するとか面倒くさいからみんなやりたがらないんですよ。内部傾斜路説は動画がついてたから広まったようなもん。

たぶん専門家はフルボッコにする新説。「ジェセル王のピラミッドは水圧式エレベーターで作られた」
https://55096962.seesaa.net/article/504196925.html

というわけで、時代ごとにいろんな説が出ては消えていくのがピラミッド研究の世界。
素人が思いつく奇抜な発想なんて、過去100年の間に誰かがもう思いついて公表している可能性が高い。
20年くらい前の個人サイト全盛期には、「ピラミッドの建造方法を解明した!」「謎を解明した!」とか主張してるとこが各国語でゴロゴロしてましたからね…。

それもみんな消えてしまった。荒唐無稽だけど面白いものもあったんですけどね。
アホらし、で終わらずに、コピーして残しておけばよかったなあ…。