ツタンカーメン墓から出土した?「グエンノールのバッタ」高値で落札。

ツタンカーメン墓の発掘者、ハワード・カーターが持ち出したとされる小さな象牙製のバッタが、アポロ・オークションズというオークションで34万ポンド(約6751万円)という高値で落札されたニュースが流れていた。
いまさらそれ話題になるんだ…? というのと、いつも盗品にうるさいエジプトさんが今回に限って黙ってるの何でなんだ…? というのが不思議である。

ニュース記事としてはここがいちばん詳細でわかりやすいかと思う。
この記事の時点ではまだオークションに出品される前なので、落札額までは書かれていない。

Did this grasshopper come from the tomb of Tutankhamun?
https://apollo-magazine.com/grasshopper-guennol-ancient-egypt-tutankhamun-auction/

このバッタは「The Guennol Grasshopper」と呼ばれている。ピッツバーグの鉄鋼業界で富豪だった、アラスター・ブラッドリー・マーティン氏が1940年代以降に収集したコレクションの一部だったからだ。「グエンノール」はマーティン氏のウェールズ語での名前だという。

マーティン氏は1948年にニューヨークの美術商ジョセフ・ブルマー氏の遺産の中からこれを購入。
ブルマー氏は1936年にエジプトの美術商モーリス・ナーマン氏からこの品を入手。
ナーマン氏はハワード・カーターから購入したと記録されている。

で、ブルマー氏が購入した当時のメモに、それらの来歴とともに、おもくそ「ツタンカーメン墓から出土」と書かれている。現在の綴りとは違うが、Tutank-Hamenと書かれているのがツタンカーメンの名前。
この遺物は作りが精巧で高価なものだし、時期的にもカーターが墓で見つけたものを持ち出していた可能性は十分にある。

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↓うしろの羽根がぱかっと開く構造。

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そもそも、今回なんでアポロ・オークションズなどというマイナーめのところから出したかというと、過去にエジプト政府の猛抗議を食らってオークションが燃えたことのあるクリスティーズとサザビーズは出品を断ったかららしい。限れなく黒に近いグレーな来歴とあればそれも当然と言える。
エジプト学者はわりと反応してたけどエジプトさんが動かなかったのが謎なだけで。
…あんまり話題にならないと思ったか、バッタの模型にあまり興味なかったのかもしれないが…。まあファラオの彫像とかよりはインパクトは欠けるかもしれないけど…。

※参考: 2019年のオークションではエジプトさんは物言いをつけている

クリスティーズのオークションにツタンカーメン像の頭部出品、エジプトさんが物言い
https://55096962.seesaa.net/article/201906article_12.html

エジプトさんが文句つける時とつけない時の基準がイマイチよく分からない。
とはいえ、今回何も言われなくても、いつクレームが押し寄せてくるかは分からないし、来歴が黒に近いものを買うのはコレクターとしてお作法があまりよろしくないので、やめたほうがいいと思うのだ。


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なお、このへんの「カーターが持ち出したと思われる遺物」のリストは、日本語の本で「ツタンカーメン秘話」に詳しく書かれている。
ちょっと古い本なのでなかなか見つけづらいかもしれないけど、運がよければ図書館の書庫とかにはあるかも。

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バッタの話はこのへん。

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持ち出したとされるコレクションの量がクッソ多くてびっくりすると思う。小さめの装身具とかゴッソリ持ち出されてるんじやねーか的な。
カーターの死後、遺産を引き継いだ姪っ子がツタンカーメンの名前入りの指輪にビビってエジプトに返還した話とかはお気の毒になる。他にもカーターが友達にプレゼントしちゃったとかで個人コレクションに入ったまま行方不明のものもあったり…。

ツタンカーメン墓が発掘されていた時期は、エジプトから遺物の持ち出しがまだ緩かった最後の時代である。
この墓から莫大な財宝が見つかったこと、発掘者たちが好き勝手に持ち出そうとしていたのを阻止しようとして持ち出しを禁じる法律や監視が厳しくなった。

ツタンカーメン発見とハワード・カーター: エジプト人のナショナリズム
https://55096962.seesaa.net/article/200912article_25.html

なお、発掘時に行方不明になってる遺物もまだ幾つかある。
もしかしたらこれから出てくるかも…?

ツタンカーメン発掘時に行方不明になったジュエリーの行方、百年の果てにいくつかが発見される
https://55096962.seesaa.net/article/493234348.html