ジャガイモの遺伝的起源が明らかに。Etuberosumとトマトの自然交配(900万年前)による野生雑種
ジャガイモとトマトは近縁種で、枝接ぎしてポマトという植物を作り出すことが出来る。(トマトとジャガイモ両方がなる)
が、姉妹種なのは分かっていても、実際どう進化したのか、詳細までは分かっていなかった。それがだいたい解明されたよ、という話である。
元の論文を読むと分かるが、この研究の重要ポイントはジャガイモの起源が判明したことよりも、ジャガイモという雑種が両方の特性をカスタマイズしたお陰で、祖先であるEtuberosum種とTomato種のどちらも進出出来なかった寒冷なアンデス高地に進出するポテンシャルを獲得したと言えるようになった点だろうと思う。
祖先のEtuberosum種とTomato種は共通祖先から1400万年前くらいに分岐した遠い親戚の種で、どちらも花を咲かせ、受粉によって実をつけて繁殖する。
それに対しジャガイモは、花はあまり重要ではなく、地下に出来たイモからセルフコピーで子孫を増やしていく。この特性が寒冷地でも、虫が少ない高地でも有利に働いたと考えられる。
現代のジャガイモ、野生のトマトの交雑から進化 新研究
https://www.cnn.co.jp/fringe/35236227.html
元の論文
Ancient hybridization underlies tuberization and radiation of the potato lineage
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(25)00736-6

※なお、日本語記事でジャガイモを「1万年前に栽培が始まった」と書いているが、これは間違い。1万年前だとまだ、その地域に人間が進出した直後っすね…。
最近の研究では↓のようなものもあり、「栽培する前に採集していた」という説が有力になってますが、今のところ栽培化は紀元後500年くらいからというのが定説。
古代アンデス民はジャガイモを食っていた? 狩猟採集民ではなく「採集狩猟民」だったかもしれない
https://55096962.seesaa.net/article/502170975.html
さて冒頭に戻って、祖先となるニ種類の植物と、ジャガイモ(Petota種)の自生範囲の違いがこちら。
Etuberosum種はチリ南部にしか無い。花の色や葉っぱの雰囲気などはジャガイモそっくりなのだが、大きな実をつけるわけでもなく、食べるための栽培植物にはなっていないようだ。

日本語記事では、ジャガイモはトマトのほうに近いと書かれているが、それは系統樹での話であって、実際には引き継がれている遺伝子の割合はほぼ半々。見た目からいえばEtuberosumのほうに近い。ゲノム寄与率では、解析したすべてのPetota種においてEuberosum種が約60%、Tomato種が約40%だということなので、ゲノム割合としてはEtuberosumに近いと言っていいかと。


ここでポイントとなるのは、Etuberosumが持つ地下茎の機能が、ジャガイモにおけるイモになる部分に引き継がれているらしい、ということ。Etuberosumはイモを作らないが、Petotaはイモを作る。ここの転換が重要。
植物DNAに関する知見はほとんどないのでメカニズムはよく分からなかったのだが、交雑した際に両親から引き継いだ対立DNAの相互作用で、どういうわけか地下茎部分に「栄養分が蓄えられ、生殖機能を持つ」という特殊変異が起きたらしいのだ。
具体的には、Tomato種から塊茎形成に役立つ遺伝子、Etuberosum種から匍匐茎のバランスを制御する機能が別々に遺伝し、これらが合体することでイモが生まれた。
これらの遺伝子は、単品だとそれほど特殊な遺伝子ではなかったのかもしれないが、合わさると相乗効果で生存戦略の可能性を大きく広げるものだった。ある意味、交雑による突然変異である。つまりは、たまたま近縁の二種が持っていた遺伝子が「イモで増殖できる植物」という新しい存在を生み出すのにちょうどいい組み合わせだったのが運命の分岐点だった。
この特性は寒冷な高地にも適応することが出来たため、新たな雑種であるPetota種はアンデス山脈の高山地帯に爆発的に増えていったと考えられる。現在の野生種の範囲を見ると、祖先種よりも広範囲に適応しているのが分かる。
大元の900万年前の交雑種から、どのようにいろんな亜種が生まれていったのかは、この論文だけだと分からないが、それは今後の研究テーマになるのだろう。
この結果を見て思うのは、雑種や交雑って悪いものみたいに言われることがあるけど、進化のけっこう重要なファクターなんだよな…ということ。
現代の人間は純血種を守ろうとしがちだが、植物の長い歴史を見れば、交雑や変異によって新たな種を生み出し、新しい環境に適応し、古い種は順グレにホロ後手いくことの繰り返しだったのではないかと思う。なんでもかんでも現状を維持しようとすると、進化を止めてしまい結果として種を滅ぼしてしまう気もするのだ。
****
似たような話としては、ヒブナの起源とかがある。
これは人間のせいで生まれてしまった雑種だが、すでに種として固定されている。交雑によって生まれた雑種って、いつから雑種ではなくオリジンになるの? という問題でもある。
【マジか】北海道の天然記念物「ヒブナ」、実は100年ほど前に新たに誕生した種だったことが判明
https://55096962.seesaa.net/article/492808520.html
あとオマケ、論文についていたトマトの分布図を見ていたらガラパゴス諸島が入っていたので、そんなところにあるんだ…? と思って調べてみた。鳥が運んだ種から自生してる野生種があるらしい。しかもその野生種は、実を食われないように先祖返りして毒を持っているんだとか。
これはこれで面白そうな研究。
ガラパゴス諸島のトマトは退化していることが判明
https://gigazine.net/news/20250705-tomatoes-in-galapagos/#google_vignette
が、姉妹種なのは分かっていても、実際どう進化したのか、詳細までは分かっていなかった。それがだいたい解明されたよ、という話である。
元の論文を読むと分かるが、この研究の重要ポイントはジャガイモの起源が判明したことよりも、ジャガイモという雑種が両方の特性をカスタマイズしたお陰で、祖先であるEtuberosum種とTomato種のどちらも進出出来なかった寒冷なアンデス高地に進出するポテンシャルを獲得したと言えるようになった点だろうと思う。
祖先のEtuberosum種とTomato種は共通祖先から1400万年前くらいに分岐した遠い親戚の種で、どちらも花を咲かせ、受粉によって実をつけて繁殖する。
それに対しジャガイモは、花はあまり重要ではなく、地下に出来たイモからセルフコピーで子孫を増やしていく。この特性が寒冷地でも、虫が少ない高地でも有利に働いたと考えられる。
現代のジャガイモ、野生のトマトの交雑から進化 新研究
https://www.cnn.co.jp/fringe/35236227.html
元の論文
Ancient hybridization underlies tuberization and radiation of the potato lineage
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(25)00736-6
※なお、日本語記事でジャガイモを「1万年前に栽培が始まった」と書いているが、これは間違い。1万年前だとまだ、その地域に人間が進出した直後っすね…。
最近の研究では↓のようなものもあり、「栽培する前に採集していた」という説が有力になってますが、今のところ栽培化は紀元後500年くらいからというのが定説。
古代アンデス民はジャガイモを食っていた? 狩猟採集民ではなく「採集狩猟民」だったかもしれない
https://55096962.seesaa.net/article/502170975.html
さて冒頭に戻って、祖先となるニ種類の植物と、ジャガイモ(Petota種)の自生範囲の違いがこちら。
Etuberosum種はチリ南部にしか無い。花の色や葉っぱの雰囲気などはジャガイモそっくりなのだが、大きな実をつけるわけでもなく、食べるための栽培植物にはなっていないようだ。
日本語記事では、ジャガイモはトマトのほうに近いと書かれているが、それは系統樹での話であって、実際には引き継がれている遺伝子の割合はほぼ半々。見た目からいえばEtuberosumのほうに近い。ゲノム寄与率では、解析したすべてのPetota種においてEuberosum種が約60%、Tomato種が約40%だということなので、ゲノム割合としてはEtuberosumに近いと言っていいかと。
ここでポイントとなるのは、Etuberosumが持つ地下茎の機能が、ジャガイモにおけるイモになる部分に引き継がれているらしい、ということ。Etuberosumはイモを作らないが、Petotaはイモを作る。ここの転換が重要。
植物DNAに関する知見はほとんどないのでメカニズムはよく分からなかったのだが、交雑した際に両親から引き継いだ対立DNAの相互作用で、どういうわけか地下茎部分に「栄養分が蓄えられ、生殖機能を持つ」という特殊変異が起きたらしいのだ。
具体的には、Tomato種から塊茎形成に役立つ遺伝子、Etuberosum種から匍匐茎のバランスを制御する機能が別々に遺伝し、これらが合体することでイモが生まれた。
これらの遺伝子は、単品だとそれほど特殊な遺伝子ではなかったのかもしれないが、合わさると相乗効果で生存戦略の可能性を大きく広げるものだった。ある意味、交雑による突然変異である。つまりは、たまたま近縁の二種が持っていた遺伝子が「イモで増殖できる植物」という新しい存在を生み出すのにちょうどいい組み合わせだったのが運命の分岐点だった。
この特性は寒冷な高地にも適応することが出来たため、新たな雑種であるPetota種はアンデス山脈の高山地帯に爆発的に増えていったと考えられる。現在の野生種の範囲を見ると、祖先種よりも広範囲に適応しているのが分かる。
大元の900万年前の交雑種から、どのようにいろんな亜種が生まれていったのかは、この論文だけだと分からないが、それは今後の研究テーマになるのだろう。
この結果を見て思うのは、雑種や交雑って悪いものみたいに言われることがあるけど、進化のけっこう重要なファクターなんだよな…ということ。
現代の人間は純血種を守ろうとしがちだが、植物の長い歴史を見れば、交雑や変異によって新たな種を生み出し、新しい環境に適応し、古い種は順グレにホロ後手いくことの繰り返しだったのではないかと思う。なんでもかんでも現状を維持しようとすると、進化を止めてしまい結果として種を滅ぼしてしまう気もするのだ。
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似たような話としては、ヒブナの起源とかがある。
これは人間のせいで生まれてしまった雑種だが、すでに種として固定されている。交雑によって生まれた雑種って、いつから雑種ではなくオリジンになるの? という問題でもある。
【マジか】北海道の天然記念物「ヒブナ」、実は100年ほど前に新たに誕生した種だったことが判明
https://55096962.seesaa.net/article/492808520.html
あとオマケ、論文についていたトマトの分布図を見ていたらガラパゴス諸島が入っていたので、そんなところにあるんだ…? と思って調べてみた。鳥が運んだ種から自生してる野生種があるらしい。しかもその野生種は、実を食われないように先祖返りして毒を持っているんだとか。
これはこれで面白そうな研究。
ガラパゴス諸島のトマトは退化していることが判明
https://gigazine.net/news/20250705-tomatoes-in-galapagos/#google_vignette