山でトレランの人が嫌われる理由「コース選択がヘタ」「下りの安定度がゼロ」

登山者の間には昔から、トレラン(トレイルランニング)叩きとでも言うべき風潮がある。曰く、トレランの人はマナーが悪い、道を譲らず体をぶつけてくるように走る、石を蹴り落としても何も言わない、ロクな装備も持たず山に突っ込んで遭難しやすい、etc…

ただし、それら悪い点は、別にトレランの人に限られた話ではない。
登山者やハイカーであっても、マナーが悪い人は大勢いる。特に高齢者パーティーに多いが、おしゃべりしながら道を塞いでチンタラ歩いてて渋滞を引き起こしても退いてくれない、石を蹴り落としても気づいてすらいない、というのはよくあるし、不適切な装備で遭難しかかるのは初心者あるある。
中には山の中に犬背負ってきて山頂でノーリードで離してるとんでもない人だっているくらいなのだ。トレランは道を走るスポーツなだけに、ゆっくり歩く登山やってる人から見れば目障りに見えることもあるだろうが、まあ、言われていることの大半は「人による」。

ただし、中にはトレラン特有の欠点、叩かれて当然と言うべき点がある。
「トレランに適したコースを選択出来ておらず、コース選択がヘタ」という点。
それと、「下り坂でスピード出しすぎて危険、石を蹴り落とすのもそうだがコケそうになった人にぶつかったり木の枝が折れそうなくらい掴んだりしている、安定度ゼロ」という点。

このニ点だけはマジでどうにかしたほうがいい。


●コース選択がヘタ

先に述べたように、トレランは「山道を走る」というスポーツである。
だが山道にも色々と特徴があり、走るのに適した山道と、そうではない山道がある。

たとえばこちら。稜線上の道が広く、なだらかなので石を蹴っ飛ばす心配がほとんどなく、登山者と出くわしてもすれ違いやすい山。
しかもマイナールートのため、登山者はめったに居ない。これはトレランに適した山の代表例である。
稜線から下る道には荒れている部分もあるのだが、マイナーなルートを使うか、登山者が多く行き交う時間さえ外せば、まあ、トラブルになることは少ないかなと思う。

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対してこちら、木道や階段の多い道の場合は、避ける場所がないし、トレランの人が勢いよく走ってきて体がぶつかったりすると、転倒の危険がある。トレランには不向きだし、むしろ走ろうとしてはいけない山である。他の人を巻き込まなくても、自分が足をすべらせると大怪我をすることになるからだ。
登山者がこういうところでトレランの人と出くわすと、避けてくれないことに命の危険を感じる。それがトレラン叩きにも繋がっていると思う。

ちなみにこの写真の道は、実際にトレランの人が勢いあまって谷に落ちて亡くなったことがある。

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そして最近では3,000m級の山にすらトレランの人が出現するのだが、植生限界を越えている山だと上の方は石ばかりで、勢いよく石を蹴っ飛ばすと何百メートルも下の人まで被害を出したりする。酸素が薄いため、登山者もゆっくりとしか動けず、勢いよく突っ込んでくる人や落下物を避けきれないことも多いので危険。
特に人気の山は、この写真のように人が連なりながら登ってることが多い。ここを走るのは正気の沙汰ではない。選ぶべきではないルートである。

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というわけで、トレランする場合には、まずルート選びの段階で

・登山者とぶつかりにくいルート、もしくは出くわしてもすれ違いやすいルートを選択する
・傾斜が険しい道はお互いの安全のために選ぶべきではない
・岩がゴロゴロしている高山地帯は不向き

あたりを意識してほしい。人気の山道で傾斜が険しいとか、岩ゴロゴロの道とかに行きたければ、ラン(走り)ではなく、普通に登山かハイキングとして登ればいいだけだと思う。


●下り安定度がゼロ

これは「人による」というよりは「競技の特性」に近いと思っている。
中の人は競技登山と山岳縦走競技(今でいうトレラン)の両方をやったことがあるが、競技登山には「歩行技術」という項目があり、山岳縦走(トレラン)には無かった。

この項目が何かというと、岩がゴロゴロした坂道や、下り最後の方で体力が尽きてくるあたりに位置する難所などでも足がフラついたり石を蹴り落としたりすることなく、安定した歩行が出来ていること、という、文字通り「歩行力を競う」項目だ。体力が十分に残っていること、適切な足運びが出来ること、道のコンディションによって歩き方を変えられること。すなわち体力と技術力の両方を要求される、簡単に見えて満点をとるのはかなり難しい項目になってくる。
この項目があるため競技登山では、足の滑りそうな場所では敢えてスピードを落とすのが普通。尻もちをつくのは恥、くらいの感覚である。

それに対してトレランでは、ゴールまでのタイムしか見ていないので、途中でコケようが滑ろうが気にしない、尻がドロドロになろうが気にしていない。見ている限りでは、トレランシューズで登山して何が悪いんだとか大口叩いてるのも、だいたいそういう人だった。

つまり、登山とトレランでは安全性に対する考え方が違う。
だが、同じ登山道を使っている以上、これはトレランのほうに非がある。
石を跳ね上げたり蹴り落としたりすれば周囲の人に当たるし、山道が荒れる原因にもなるのでメンテして保全している人たちに余計な手間を取らせてしまう。コケそうになって木の枝を掴んで折ったりするのももってのほか。

上手な人は下りでも安定性のある走りを見せてくれて、ほー上手いなーと思うこともあるのだが、実に7割くらいの人は見ていて危なっかしい。そんな走り方してたら早晩、膝壊して走れなくなるよ? それか、自分か他人に怪我させて終わるよ? みたいな感じなんである。安定度が100かゼロかしかない。山道を平地と同じように走っている人は確実に後者に入る。

コケれば怪我するのは誰でも一緒なわけだし、トレランにはそろそろ、タイムだけでなく安全力を競うという観点も加わって欲しい。
そんで、「山道の」走り方講習みたいなの、どっかで受けてきて欲しい…。


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というわけで、トレランが嫌われる大きな原因と思われる点と、「こうしてほしい」という点を書き出してみた。
まあほとんどは自分の実体験とぶっちゃけた本音である。

登山だろうがトレランだろうが、不快な人は不快だし、どっちにも嫌な思いをしたことはあるのだが、走りに適していない道を走ろうとしたり、走るのはいいけど下りがヘタすぎてこっちまで事故りそうになるのは真面目に勘弁してくれよと思ってしまう。

自分のスキルに適したルート選び、どの程度のスピードなら安全に行程をこなせるのか、混雑するピークタイムを外すには何時に出て何時帰着を目的とすればいいのか。それらは登山でもトレランでも共通する「山スキル」のうちに入る。
やり方は違えど山に入るスポーツである以上、結局は、「平地ではなく山というフィールドで行動する」という特性をどれだけ理解しているか、という話しだと思っている。