ワニだらけ。エジプト・エスナ神殿の「セベク神讃歌」はワニのヒエログリフで描かれていた
たまたま見つけてしまったコレ。エジプト中部のエスナ神殿、プトレマイオス朝時代の柱部分に残された、ワニの姿をした神セベク(ソベク)への讃歌なのだが、ワニのヒエログリフだらけで暗号文みたいになっている。というか実際に暗号文である。
まずこれ、ちゃんと文章として理解する学者さんもすごいなって話なんだが、どうしてこんなもの描いちゃったのかという推測が面白かったので、ちょっとメモしておこうと思う。


↑左がエスナの主神クヌム神への讃歌。クヌム神は羊の姿をとる神なのでヒツジまみれ。右がセベク神への讃歌。
まず前提として、現存するエスナ神殿のほとんどはプトレマイオス朝以降、ローマ支配時代に修復・増設された神殿になっている。従って碑文のほとんどはトラヤヌス帝やカラカラ帝などローマ皇帝をファラオとして扱って記載している。
翻訳文の一例はこちら。
https://bookdown.org/shemanefer/Esna2/
で、この碑文について見つけた資料がこちら。(PDF)
プトレマイオス朝の公用語は第一がギリシャ語、第二がエジプト語で、ヒエログリフに関する知識を持つ聖職者は減少傾向にあった。わかる人が減っているのにも関わらず文字数が増え、文章や教義はより複雑化する傾向にあったという。
その時代に書かれたものが、この暗号文めいたレリーフで、これは「読む」ものではなく「見る」ものだっただろうとされる。
文字が小さすぎて、柱の上のほうにある文字などはとても肉眼で読めないというのだ。
読みやすさや、通りかかった人に音読させるための呪文ではなく、視覚情報だけで「なんかスゴそう」「ありがたみがある」「…とりあえずワニ描いてるしセベク神のことか?」みたいに簡単に訴えるためだったのではんないかとされるが、聖職者の自己満足というか、読み手のこと考えてないマニアックな作品とも言えなくはない。ヒエログリフ使える人口が減って、ツッコミ入れられる人もいなくなっていたのかもしれない。
ローマ時代になると、さらにヒエログリフを使える人は減り、全土でせいぜい数百人だったのではないかとされている。
本来ヒエログリフは表音文字と表意文字の組み合わせだが、この暗号文みたいな讃歌は一つの文字に対して当てる音が、それまでの時代から変わっていて、誤解を招くような文字の選び方もしているという。読み手がほとんどいないので、読み手のことをあまり考えず、自分の趣味で仕事しちゃってるのかもしれない。
これでは廃れても当然と言える…。
暗号文みたいな文章は、当時の多くの人にとっても読めない/読みづらいものだった、ということが分かっただけでもちょっと安心出来た。
ていうかやっぱ、古参が独りよがりなマイルール導入して新規が入ってこなくなったら、どんなジャンルでも廃れちゃうんだね…。(´・ω・`)
三千年以上続いたヒエログリフの歴史の終わりを実感できる遺物なのでした。
******
エスナ神殿は、最近クリーニング終わって再公開されるようになったところ。
以下、参考までに。
エスナ神殿の天井画クリーニング・修復から、新年の神話の場面が明らかに。星と神話の物語
https://55096962.seesaa.net/article/501177994.html
まずこれ、ちゃんと文章として理解する学者さんもすごいなって話なんだが、どうしてこんなもの描いちゃったのかという推測が面白かったので、ちょっとメモしておこうと思う。
↑左がエスナの主神クヌム神への讃歌。クヌム神は羊の姿をとる神なのでヒツジまみれ。右がセベク神への讃歌。
まず前提として、現存するエスナ神殿のほとんどはプトレマイオス朝以降、ローマ支配時代に修復・増設された神殿になっている。従って碑文のほとんどはトラヤヌス帝やカラカラ帝などローマ皇帝をファラオとして扱って記載している。
翻訳文の一例はこちら。
https://bookdown.org/shemanefer/Esna2/
で、この碑文について見つけた資料がこちら。(PDF)
プトレマイオス朝の公用語は第一がギリシャ語、第二がエジプト語で、ヒエログリフに関する知識を持つ聖職者は減少傾向にあった。わかる人が減っているのにも関わらず文字数が増え、文章や教義はより複雑化する傾向にあったという。
その時代に書かれたものが、この暗号文めいたレリーフで、これは「読む」ものではなく「見る」ものだっただろうとされる。
文字が小さすぎて、柱の上のほうにある文字などはとても肉眼で読めないというのだ。
読みやすさや、通りかかった人に音読させるための呪文ではなく、視覚情報だけで「なんかスゴそう」「ありがたみがある」「…とりあえずワニ描いてるしセベク神のことか?」みたいに簡単に訴えるためだったのではんないかとされるが、聖職者の自己満足というか、読み手のこと考えてないマニアックな作品とも言えなくはない。ヒエログリフ使える人口が減って、ツッコミ入れられる人もいなくなっていたのかもしれない。
ローマ時代になると、さらにヒエログリフを使える人は減り、全土でせいぜい数百人だったのではないかとされている。
本来ヒエログリフは表音文字と表意文字の組み合わせだが、この暗号文みたいな讃歌は一つの文字に対して当てる音が、それまでの時代から変わっていて、誤解を招くような文字の選び方もしているという。読み手がほとんどいないので、読み手のことをあまり考えず、自分の趣味で仕事しちゃってるのかもしれない。
これでは廃れても当然と言える…。
暗号文みたいな文章は、当時の多くの人にとっても読めない/読みづらいものだった、ということが分かっただけでもちょっと安心出来た。
ていうかやっぱ、古参が独りよがりなマイルール導入して新規が入ってこなくなったら、どんなジャンルでも廃れちゃうんだね…。(´・ω・`)
三千年以上続いたヒエログリフの歴史の終わりを実感できる遺物なのでした。
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エスナ神殿は、最近クリーニング終わって再公開されるようになったところ。
以下、参考までに。
エスナ神殿の天井画クリーニング・修復から、新年の神話の場面が明らかに。星と神話の物語
https://55096962.seesaa.net/article/501177994.html