北アフリカはアフリカの中でも「ヨーロッパ寄り」。地理的にも文化的にも、という話

前回、「ギリシャは白人の国ではないしエジプトも黒人の国ではない。」という話をしたので、追加として「エジプトは現代の地理区分ではアフリカ大陸の一部だが、アフリカ自体がサハラ以北と以南で文化圏が大きく別れてる」という話をしたい。

ざっくりいうと、サハラ砂漠より北のアフリカはヨーロッパ文明にとって「昔なじみ」の良く知った土地だった、古代から頻繁に往来していた土地、という話である。

これをわかりやすく言うならば「北アフリカはかつてローマだった」と一言説明すれば通じるだろうか。
そう、ローマ。ヨーロッパ人にとって、かつてローマだった地域こそが文明圏である。(その意味でアイルランドなどは「ローマさえ来なかった未開の地」と揶揄されてしまう)



さらにローマが北アフリカを支配する前段として、チュニスを中心とした地域にはファニキア人の植民地、すなわちカルタゴの堂々たる文化圏が存在した。
都市もなく人もいないところを支配しても意味がない。ローマは、エジプトとカルタゴが長年かけて育て、培ってきた都市と文明化された住民とを横取りして勢力圏に加えたわけだ。

そんな、高度に文明化されたサハラ以北の地域と、ヨーロッパ人にとって長らく未知の土地だったサハラ以南のアフリカを、同じ「アフリカ」の括りで語るのは、現実世界に対する解像度がだいぶ雑である。少なくとも、地理的な話ではなく歴史の話をするのであれば別として考えるべきだと思う。

また、前回エジプトは東地中海世界に属しているのでアジア系移民が多かったと書いたが、ローマに組み込まれた時代にはもちろん帝国領内での人の移動があったし、ローマ以後にはアラブ系の移民の波も通り過ぎている。ヴァンダル人などヨーロッパ北部からの移民も来ている。

北アフリカは、ヨーロッパ世界でよく知られた地域だっただけに、歴史を通して多くの移民が通り過ぎていった土地でもある。
ただし、サハラ砂漠は容易に越えられないため南のアフリカ内部からの移民はほとんどいなかった。

結果として、サハラ以北のアフリカは、エジプトだけでなく他の国も同様に「アフリカ系」というよりは「地中海系」、地中海人でも言うべき風貌や文化を持っている人が多いのだ。肌の色もそんなに黒くはないし、アラブ系(西アジア系)っぽい雰囲気。

なので、北アフリカの国々は、一般的に「アフリカ」と言って想像されるような風景/人種/文化には属していない。北アフリカは北アフリカという一つの括りで、歴史的に属する先は「地中海世界」、もっと言えば地中海に面したヨーロッパ世界と同一の文化圏と言っていいと思う。