大英博物館所蔵のおもしろ贋作: オシリス坐像

古代遺物の贋作によくあるパターンが、「一部だけ本物の古代遺物」というやつだ。
見栄えよくして、高く売りさばけるようにしたいという盗掘者の心理。もしくは、コレクターが友達に自慢する時にカッコよく視えるようにと破損した遺物を買い求めて勝手に修繕しちゃったのが市場に流れたとかいうパターンもある。

これはマジでなかなか見分けつかなくて、日本にも、最近になってようやく「遺物の一部が近代に再編されてる」とわかったものがある。

例)青銅器時代と鉄器時代のはざま 「鉄芯の入ったバイメタル剣」は近代の贋作だったという話
https://55096962.seesaa.net/article/201907article_15.html

このテの贋作は、X線など、近代的な科学調査の手法を使わないと分からない。
大英博物館が所蔵するエジプト遺物の中にも幾つか、最近になって贋作とわかったようなものがあるのだが、そのうちの一つを紹介しておきたい。

こちらのオシリス坐像、第21王朝または第22王朝のものとされていた品だ。
なかなか出来がよく、金色の部分はメッキではなく本物の金。髪の毛の部分に本物のラピス・ラズリも使われているので、決して安っぽいニセモノではない。

だが、少なくとも金の冠部分は近代に作り直されたもので、研磨機を使って磨いた痕跡があるという。

https://www.britishmuseum.org/collection/object/Y_EA48996
egh4.png

冠部分の土台には腐食した青銅の痕跡があるようなので、もしかしたら本来は冠の部分は青銅で、発見時には腐ってしまっていたのかもしれない。また、首にかけた鎖の護符部分についても、どこか別の遺物から持ってきたのでは? とされている。
また、面白いことに冠部分に使われている金は、成分からしておそらく古代に作られた金だろうという。

だとすると、土台となる像は本物の古代遺物、髪の毛の部分もおそらく本物で、冠は別の遺物を溶かして鋳造してくっつけ直したことになる。
ずいぶん手の込んだ「作り直し」をしてしまったことになるのだが、理由がさっぱり分からない。また、見栄えからして不自然さが少ないため、贋作だとすればかなり出来のいい品ということになる。

これ「一部、現代に修復されてるけど本物です」って言っちゃえば、欲しがるコレクターはいると思うな…。

こういう、贋作と真作のはざまにあるような品の扱いって、実はけっこう難しい。一部だけ修復された遺物とか、後世に付け足された遺物はわりとあるので。


というわけで、贋作といっても丸ごと近代の作というわけではなく、古代遺物を流用して作られたものもあるんだよ、というお話でした。
真贋の間は奥深い世界なので、似たような品を探してみると結構面白いと思うよ!