考古学の論文はどう撤回されるのか。四年前に話題になった「神の怒りで滅びた町ソドム」の論文事例から
もう忘れている人も多いだろうが、このニュースを思い出してほしい。ヨルダンにあるテル・エル・ハマム(Tall el-Hammam)という遺跡は隕石の空中爆発によって滅びた町かもしれない、という論文が出て話題になったやつである。当時の記事とツッコミ内容は以下を参照。
「神の怒りに触れて滅ぼされた町」は隕石の爆発によって滅びたのでは? →その研究ちょっと怪しいです。
https://55096962.seesaa.net/article/202109article_21.html
どう見ても内容が怪しいしツッコミどころ満載だったのでメモがわりに書いておいたのだが、その後、今年の4月に論文が撤回された。
つまり多くの学者が「これおかしくね?」とツッコミを入れ、何人かは反論を書き、そっちのほうが妥当と見做されたということだ。
というわけで、考古学の論文ってどうやって撤回されるの? 撤回されたらどうなるの? というのを、この事例から見ていきたい。
まず、論文は一度世に出ると、内容がどうあれ消されない。
どういう経緯で何がおかしかったのか、どういうツッコミが入ったのかの履歴がすべて残る。論文URLもそのままである。ただしタイトルに「RETRACTED ARTICLE」と撤回された論文であることが分かる文言が最初につけられている。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-97778-3

本文に入る前に書かれている部分が経緯である。
https://www.nature.com/articles/s41598-025-99265-5
Referencesのところにツッコミ論文もリンクされている。
「隕石衝突の証拠なんて無いんだけど」「根拠なく爆発規模を見積もっている」「ツングースカとの関連は見受けられない」とまぁボロボロ。
著者による訂正が入ったあとも追い打ちツッコミが入って、そのツッコミに対応出来なかったため結局、撤回の扱いになった。という一連の流れが履歴として残っているので、これは分かりやすい事例だと思う。
これを見て分かるとおり、何度もやりとりが発生しているのだ。
どのジャンルでも、論文はいきなり撤回されることはほぼ無い。まともな雑誌掲載などなら、世に出るまでに査読者が査読、つまり内容チェックをしているからだ。
過去の研究と被っていないか、書かれている内容が妥当か、一定レベル以上の研究になっているか、掲載誌に載せるべき内容か。明らかにおかしいとか、レベル低すぎるとかのものは世に出ない。雑誌掲載が一定のステータスになるから優れた論文の応募が来るのであって、変な論文ばかり掲載される雑誌では誰も論文送ってきてくれないし読者も集まらなくて潰れてしまう。
しかし査読者は論文の内容が正しいか正しくないかまでは判断出来ない。それは読者となる多くの同ジャンルの学者の仕事だ。
論文が世に出ると、それを読んだ人たちがあーだこーだと議論を交わし、内容が妥当なのか検討する。情報が足りなかったり疑問点があったりすれば、論文の著者にメールしたり電話かけたりして質問することもある。
それによって論文に「訂正」や「追記」が入るのは珍しくない。「数値間違えてたので直しました」とか「表現を改めました」くらいの更新履歴はよく見かける。
しかし、致命的な誤りが見つかったり、論文の妥当性を疑われるような質問が来て期限内に有効な回答が出来なかったりすると、「この論文は正しくないね」という結論になることもある。そうすると査読者または雑誌の編集長などの責任者権限で論文が撤回されることになる。
この一連の手続きは数カ月とか一年とかでは終わらず、今回のように数年かかるのが普通である。長い時は10年近くかかって撤回されてることもあるので、怪しいなと思った論文や経緯を見守りたい論文は数年後とかに見に行くといい。
このブログで「メモがわりに書いておく」と言及している論文は、だいたいそういうやつ。で、予想通り後日ツッコミが入って内容が変わってることも多い…。
一般メディアは論文が発表された時は取り上げるし話題にするけど、何年か経ったあとにひっそり撤回されてるところまでは追わないのだ。
みんなも気になった論文はメモっておいて、その後の経緯を追ってみるといいよ!
なお、論文が訂正されたり撤回されたりするのは、科学の手続きとしては正しい。
というか新しい発見や新しい説などが本当に正しいかどうかは発表者にもわからないので、それを世に問うためにやるのが論文などの形式で発表する、という行為。
それをほかの専門家みんなで揉んで、追加の研究やったり議論したりして、より妥当な形に持って行ったり、定説を書き換えたりする。
なので、「Scienceに掲載された論文だから絶対に正しいだろう」みたいなことはないし、「論文の修正が必要になるのは恥」みたいなこともない。
ただし、ツッコまれた内容があまりにも初歩的だったり、データを改ざんしていたことが発覚して撤回になったりすることは恥ずかしい。というか学会のようなコミュニティに出す顔がなくなる。修正も撤回も内容次第なのだ。
まあ、今回のは…ちょっと恥ずかしい部類のやつだけどね…。
「神の怒りに触れて滅ぼされた町」は隕石の爆発によって滅びたのでは? →その研究ちょっと怪しいです。
https://55096962.seesaa.net/article/202109article_21.html
どう見ても内容が怪しいしツッコミどころ満載だったのでメモがわりに書いておいたのだが、その後、今年の4月に論文が撤回された。
つまり多くの学者が「これおかしくね?」とツッコミを入れ、何人かは反論を書き、そっちのほうが妥当と見做されたということだ。
というわけで、考古学の論文ってどうやって撤回されるの? 撤回されたらどうなるの? というのを、この事例から見ていきたい。
まず、論文は一度世に出ると、内容がどうあれ消されない。
どういう経緯で何がおかしかったのか、どういうツッコミが入ったのかの履歴がすべて残る。論文URLもそのままである。ただしタイトルに「RETRACTED ARTICLE」と撤回された論文であることが分かる文言が最初につけられている。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-97778-3
本文に入る前に書かれている部分が経緯である。
https://www.nature.com/articles/s41598-025-99265-5
Referencesのところにツッコミ論文もリンクされている。
「隕石衝突の証拠なんて無いんだけど」「根拠なく爆発規模を見積もっている」「ツングースカとの関連は見受けられない」とまぁボロボロ。
著者による訂正が入ったあとも追い打ちツッコミが入って、そのツッコミに対応出来なかったため結局、撤回の扱いになった。という一連の流れが履歴として残っているので、これは分かりやすい事例だと思う。
これを見て分かるとおり、何度もやりとりが発生しているのだ。
どのジャンルでも、論文はいきなり撤回されることはほぼ無い。まともな雑誌掲載などなら、世に出るまでに査読者が査読、つまり内容チェックをしているからだ。
過去の研究と被っていないか、書かれている内容が妥当か、一定レベル以上の研究になっているか、掲載誌に載せるべき内容か。明らかにおかしいとか、レベル低すぎるとかのものは世に出ない。雑誌掲載が一定のステータスになるから優れた論文の応募が来るのであって、変な論文ばかり掲載される雑誌では誰も論文送ってきてくれないし読者も集まらなくて潰れてしまう。
しかし査読者は論文の内容が正しいか正しくないかまでは判断出来ない。それは読者となる多くの同ジャンルの学者の仕事だ。
論文が世に出ると、それを読んだ人たちがあーだこーだと議論を交わし、内容が妥当なのか検討する。情報が足りなかったり疑問点があったりすれば、論文の著者にメールしたり電話かけたりして質問することもある。
それによって論文に「訂正」や「追記」が入るのは珍しくない。「数値間違えてたので直しました」とか「表現を改めました」くらいの更新履歴はよく見かける。
しかし、致命的な誤りが見つかったり、論文の妥当性を疑われるような質問が来て期限内に有効な回答が出来なかったりすると、「この論文は正しくないね」という結論になることもある。そうすると査読者または雑誌の編集長などの責任者権限で論文が撤回されることになる。
この一連の手続きは数カ月とか一年とかでは終わらず、今回のように数年かかるのが普通である。長い時は10年近くかかって撤回されてることもあるので、怪しいなと思った論文や経緯を見守りたい論文は数年後とかに見に行くといい。
このブログで「メモがわりに書いておく」と言及している論文は、だいたいそういうやつ。で、予想通り後日ツッコミが入って内容が変わってることも多い…。
一般メディアは論文が発表された時は取り上げるし話題にするけど、何年か経ったあとにひっそり撤回されてるところまでは追わないのだ。
みんなも気になった論文はメモっておいて、その後の経緯を追ってみるといいよ!
なお、論文が訂正されたり撤回されたりするのは、科学の手続きとしては正しい。
というか新しい発見や新しい説などが本当に正しいかどうかは発表者にもわからないので、それを世に問うためにやるのが論文などの形式で発表する、という行為。
それをほかの専門家みんなで揉んで、追加の研究やったり議論したりして、より妥当な形に持って行ったり、定説を書き換えたりする。
なので、「Scienceに掲載された論文だから絶対に正しいだろう」みたいなことはないし、「論文の修正が必要になるのは恥」みたいなこともない。
ただし、ツッコまれた内容があまりにも初歩的だったり、データを改ざんしていたことが発覚して撤回になったりすることは恥ずかしい。というか学会のようなコミュニティに出す顔がなくなる。修正も撤回も内容次第なのだ。
まあ、今回のは…ちょっと恥ずかしい部類のやつだけどね…。