マニキュアの起源は古代エジプト! という謎の説を見てしまったので、ソースを探しに行ってみたが…。
古代エジプト人は、オシャレに大変気を使っており、脇毛を沿った眉毛整えたりアイシャドウや頬紅に凝ったり、髪の毛に香油を塗ったり、実に色々な美容をやっていた。が、その中でも「ネイル」関連の美容だけは行った形跡がない。
理由はだいたい分かっている。古代世界にはカトラリー(フォークとかナイフ)が無く、食べ物すべて手づかみだからだ。
ネイルとかやってたら、メシ食えなくなるんである…。
※という話は、以前にも↓書いた
古代エジプト人のテーブルマナー: カトラリーなしの時代のお食事とは。
https://55096962.seesaa.net/article/202105article_14.html
にも関わらず、「古代エジプトはマニキュアの起源!」という説があちこちで飛び交っていることに気がついた。
まあ実にいろんな説があるのだが、主要な主張は以下のようなものである
①紀元前3,200年のミイラの爪が装飾されていた
②ヘンナを手に塗っていた
③エーベルス・パピルスに爪にヘンナを塗るレシピがある
※似たようなページがたくさん出てくると思うので、いくつかだけ貼っておく
From ancient Egypt to Cardi B: a cultural history of the manicure
https://www.theguardian.com/fashion/2021/jan/27/from-ancient-egypt-to-cardi-b-a-cultural-history-of-the-manicure
Manicure in Ancient Egypt: how nails were painted thousands of years ago
https://tvbrics.com/en/bloggers-team/manicure-in-ancient-egypt-how-nails-were-painted-thousands-of-years-ago/
だが、①に該当するミイラは存在しない。
そもそも紀元前3,200年だと本格的なミイラづくりはまだ始まっておらず、「死者にオイルを塗る」くらいの簡単な処置しかしていない。また、天然もの以外で現存するミイラは無い。出土しているのはほぼ「骨の一部」。
時代を間違えているのだとすればあり得るかもしれないが、そのミイラすら見つからなかった。
次に②だが、これもよくわからない。
古代エジプトでヘンナが髪染めに使われていたことは事実であり、ソースはある(例; アマルナから出土しているミイラ)が、古代人が爪の装飾に使っている事例を見た覚えがないのだ。
というか現代でも、手の装飾に使うことはあっても爪を染めることはあまり無い。
「クレオパトラがヘンナで爪を染めていた」と宣伝しているサイトがあったので、おそらく「クレオパトラ=古代エジプト」くらいの雑な紐づけではないかと思う。
そして③だが、これは「爪に関わる病」に関する記載の部分かと思う。
「つま先の痛み」とか「手足のかさぶた」の治療法として、ヘンナが出てくる箇所がある。そもそもエーベルス・パピルスは医療パピルスであり、書かれているのは病や体の不具合の治療に関する処方箋なので、爪の病気にヘンナを使っていたとしても、それはマニキュアというより塗り薬である。結果的に爪は染まるかもしれないが、求めているのは美容ではなく薬効だからだ。
さらに事実として上げておくと、爪に関する化粧道具は見つかっていない。
もしマニキュアが一般的かつ日常的に使われていたのなら、爪切り、ヘンナなどの染色料や化粧壺などは絶対に存在する。事実、アイシャドウについては顔料を潰して混ぜ合わせるパレット、入れておくための化粧壺、塗りつけるための筆、というセットが副葬品として大量に、しかも時代をまたいで見つかっている。マニキュアの場合、そうした道具が全然出てきていない。
ということは、使われていなかったか、好みで実践する人がいたとしてもごく少数、かつ時代も限られていたとかだろう。
もしくは、③からの派生で指の治療に塗り薬として使っていた人のミイラを見てマニキュアと拡大解釈した、とか。
多分、②と③の合せ技で「ヘンナは現代では爪染めにも使われている+古代エジプトでも使われていた(実際は髪染めや塗り薬として)」あたりの情報から、空想を交えて「使われていたかもしれない」→「使われていた(確定事項)」へと変化したのではないかと思う。
まあ、上流階級は爪の手入れくらいはしていたと思うんですよ。特に神官などは清浄さにこだわっていたので、爪が汚れて黒くなっているとかは絶対NGだったはず。爪切りというか、爪をやすりで削るくらいはしていただろう。でも、染めた証拠は見つかっていない。
少なくともマニキュアが一般的だったとするためには、爪の手入れに使った化粧道具の存在は必須だと思う。
なお、脱毛処理などは、その手順は記録にあり、道具も出土している。以下を参照。
爪の手入れ方法が伝わっていない時点で、ネイル系のオシャレは無かったと思うんだよなあ。
古代エジプトのムダ毛処理
https://55096962.seesaa.net/article/201408article_11.html
というわけで、なんかいつものアレな感じの、「情報の出どころはだいたい分かるけど、明確な証拠がないまま確定事項にされてる」というやつでした。まあ「ソース無いよ」っていうのがいちばん証明難しいやつなんだけど、今回は「明らかにミイラない時代」とか「そんなん書いてないパピルス」とかが提示されてたのでまだわかりやすい。
古代エジプトかメソポタミアが起源にされてるネタ多すぎて、逆によく思いつくなって毎回感心するんですけどね。
理由はだいたい分かっている。古代世界にはカトラリー(フォークとかナイフ)が無く、食べ物すべて手づかみだからだ。
ネイルとかやってたら、メシ食えなくなるんである…。
※という話は、以前にも↓書いた
古代エジプト人のテーブルマナー: カトラリーなしの時代のお食事とは。
https://55096962.seesaa.net/article/202105article_14.html
にも関わらず、「古代エジプトはマニキュアの起源!」という説があちこちで飛び交っていることに気がついた。
まあ実にいろんな説があるのだが、主要な主張は以下のようなものである
①紀元前3,200年のミイラの爪が装飾されていた
②ヘンナを手に塗っていた
③エーベルス・パピルスに爪にヘンナを塗るレシピがある
※似たようなページがたくさん出てくると思うので、いくつかだけ貼っておく
From ancient Egypt to Cardi B: a cultural history of the manicure
https://www.theguardian.com/fashion/2021/jan/27/from-ancient-egypt-to-cardi-b-a-cultural-history-of-the-manicure
Manicure in Ancient Egypt: how nails were painted thousands of years ago
https://tvbrics.com/en/bloggers-team/manicure-in-ancient-egypt-how-nails-were-painted-thousands-of-years-ago/
だが、①に該当するミイラは存在しない。
そもそも紀元前3,200年だと本格的なミイラづくりはまだ始まっておらず、「死者にオイルを塗る」くらいの簡単な処置しかしていない。また、天然もの以外で現存するミイラは無い。出土しているのはほぼ「骨の一部」。
時代を間違えているのだとすればあり得るかもしれないが、そのミイラすら見つからなかった。
次に②だが、これもよくわからない。
古代エジプトでヘンナが髪染めに使われていたことは事実であり、ソースはある(例; アマルナから出土しているミイラ)が、古代人が爪の装飾に使っている事例を見た覚えがないのだ。
というか現代でも、手の装飾に使うことはあっても爪を染めることはあまり無い。
「クレオパトラがヘンナで爪を染めていた」と宣伝しているサイトがあったので、おそらく「クレオパトラ=古代エジプト」くらいの雑な紐づけではないかと思う。
そして③だが、これは「爪に関わる病」に関する記載の部分かと思う。
「つま先の痛み」とか「手足のかさぶた」の治療法として、ヘンナが出てくる箇所がある。そもそもエーベルス・パピルスは医療パピルスであり、書かれているのは病や体の不具合の治療に関する処方箋なので、爪の病気にヘンナを使っていたとしても、それはマニキュアというより塗り薬である。結果的に爪は染まるかもしれないが、求めているのは美容ではなく薬効だからだ。
さらに事実として上げておくと、爪に関する化粧道具は見つかっていない。
もしマニキュアが一般的かつ日常的に使われていたのなら、爪切り、ヘンナなどの染色料や化粧壺などは絶対に存在する。事実、アイシャドウについては顔料を潰して混ぜ合わせるパレット、入れておくための化粧壺、塗りつけるための筆、というセットが副葬品として大量に、しかも時代をまたいで見つかっている。マニキュアの場合、そうした道具が全然出てきていない。
ということは、使われていなかったか、好みで実践する人がいたとしてもごく少数、かつ時代も限られていたとかだろう。
もしくは、③からの派生で指の治療に塗り薬として使っていた人のミイラを見てマニキュアと拡大解釈した、とか。
多分、②と③の合せ技で「ヘンナは現代では爪染めにも使われている+古代エジプトでも使われていた(実際は髪染めや塗り薬として)」あたりの情報から、空想を交えて「使われていたかもしれない」→「使われていた(確定事項)」へと変化したのではないかと思う。
まあ、上流階級は爪の手入れくらいはしていたと思うんですよ。特に神官などは清浄さにこだわっていたので、爪が汚れて黒くなっているとかは絶対NGだったはず。爪切りというか、爪をやすりで削るくらいはしていただろう。でも、染めた証拠は見つかっていない。
少なくともマニキュアが一般的だったとするためには、爪の手入れに使った化粧道具の存在は必須だと思う。
なお、脱毛処理などは、その手順は記録にあり、道具も出土している。以下を参照。
爪の手入れ方法が伝わっていない時点で、ネイル系のオシャレは無かったと思うんだよなあ。
古代エジプトのムダ毛処理
https://55096962.seesaa.net/article/201408article_11.html
というわけで、なんかいつものアレな感じの、「情報の出どころはだいたい分かるけど、明確な証拠がないまま確定事項にされてる」というやつでした。まあ「ソース無いよ」っていうのがいちばん証明難しいやつなんだけど、今回は「明らかにミイラない時代」とか「そんなん書いてないパピルス」とかが提示されてたのでまだわかりやすい。
古代エジプトかメソポタミアが起源にされてるネタ多すぎて、逆によく思いつくなって毎回感心するんですけどね。