古代エジプト人、ラクダにあまり興味がない…? 近隣から輸入された「珍しい動物」の中にラクダはいなかった理由について

古代エジプトの王や富裕層は、先王朝時代から継続して「珍しい動物を輸入する」ということをやっていた。いわゆる威信財の一種として動物を保有していたのである。

たとえば、↓こんなかんじ。 ※記事では「ペット」と書かれているが、実際には「所有財産」であり、副葬品の扱い

5000年前の古代エジプトのペット事情が明らかに
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/052700118/

キリン、ゾウ、ヒヒなどはもちろん、エジプトより南部のアフリカ奥地から運ばれてきている。
この「珍しい動物を輸入する」という活動はその後も続き、最近だとハトシェプスト女王葬祭殿の壁画からヘビクイワシを輸入していたとみられる描写が見つかっている。

プントの国はいずこなりや 古代エジプトに持ち込まれたヘビクイワシの証拠、見つかる
https://55096962.seesaa.net/article/201806article_26.html

その他、アジア方面から輸入したかもしれないライオンやアジアゾウらしきものなどもも見つかっているし、アジア方面から輸入されたウマも、軍事用に活用されはじめる以前は王の「所有財産」、「珍しい生き物」という扱い。またインド方面からニワトリが持ち込まれたこと分かっている。飼い猫はリビアヤマネコが原種と言われ、これも家畜化する以前は野生種を輸入していた。

王と富裕層は、古代エジプト3,000年の歴史を通じ、各方面からあらゆる珍しい生き物を集めていたのだ。

――が、すぐ近くのアラビア半島にいたはずのラクダについては、ペルシア支配時代に家畜化されたものが持ち込まれるまで輸入した形跡がない。


古代エジプトの歴史を通じ、ラクダに関連する遺物は驚くほど少ない。いちおう先王朝時代から認識はしていたようなのだが、所有物として墓に収められたなどの証拠が全然出てこない。墓に入れなかった=威信財として所有していなかった、ということのはずなので、興味なかったか、好みに合わなかったのだろう。

ラクダを象ったと思しき壺が見つかっているが、これと、不明瞭な形をした土偶くらいしか、ラクダが認識されていた証拠となる遺物を見たことがない。

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出典: The Camel in Ancient Egypt /A. S. Saber

ラクダがエジプトに入って来ていた、もしくはラクダを見たことのある人がいたと思われる遺物や証拠がまとまって出てくるのは、新王国時代の末以降。年代的にラクダが家畜化された紀元前1,000年頃からだ。
(家畜化された年代・経緯についてのまとめは以下を参照)

らくだの家畜化についての知識まとめ:ヒトコブラクダとフタコブラクダで辿った経緯が違うよ!
https://55096962.seesaa.net/article/516576094.html

ということは、野生の状態で持ち込まれることはなく、家畜化されてようやくエジプトに少しずつ持ち込まれ始めた…といったところではないかと思う。これは、ラクダの気性が荒いことや、体が大きく扱いづらいのが原因ではないだろう。王や富裕層は、ゾウやライオンのような巨大で扱いづらい動物も威信財として求めていたのだから。

また、アラビア半島の部族を支配下においていなかったことも関係ないはずだ。確かに、珍しい生き物は支配下においた部族から貢物として献上されることも多かっただろうが、歴代の王たちは、欲しいと思った希少なものについては使者や軍隊を派遣して集めてくることも行っていた。
ラクダ狩りが行われなかったのなら、特に欲しいと思わなかったということだ。


というわけで、古代エジプト人にとってラクダは、おそらく、好みにあわない動物だった。労力をかけてまで欲しいとは思わず、墓に入れてあの世に持っていきたいと願う財産にはならなかった。まあ、文化的なものなのかな…とは思っている。