「古墳は公共事業で作られた」説に対して切り込む本「前方後円墳」
「古墳は公共事業で作られた」説に対して怒っている研究者の人を見かけた。
はぇーそんなもんあるんや、「ピラミッド公共事業説」と似てんなー? と思ったら、ほぼほぼ同じというか、実質の焼き直しだったので真顔になってしまった。
エジプト考古学の人たちが最初からちゃんと否定しとけばこんなことにならなかったんじゃん~。もー。…いやあの…なんか…ほんとすいません…。
というわけで、いまどんな感じになってるのか、本を読みに行ってきた…。

前方後円墳 (歴史文化ライブラリー 616) - 下垣 仁志
まあなんか、タイトルからすると公共事業説がどうとかいう話は全然関係なさそうに見えると思う。
が、序文からして「最近やたらと、古墳は公共事業として作られたという説がもてはやされている。学習マンガやSNSなどでも広まっている。実際にはこれは学術的な視座とは相容れない。実際の古墳研究でこれまでに分かってきたことを説明する。よく聞け」という内容であり、一冊使ってミッチリと古墳についてのあれこれを説明したあと、最後に、「というわけで、公共事業説なんておかしいことが分かったよな? ちなみにこれはピラミッド公共事業説の焼き直しだが、これも学術的な精査のないままマスコミを通して勝手に広まっただけのものだ。」と、かなり真剣に否定している本になっている。

文章は「怒り」のガチトーンを感じる書き方になっており、なんかほんと迷惑だったんだろうなあという感じ。
そもそも国家に対する奉仕を美化するとかファシズムの走りじゃね? というかピラミッドにしろ古墳造影にしろ、多少の還元はあるにしろ重労働に強制的に駆り出される時点で美化する余地ないだろ? という、至極真っ当なツッコミには、まあ、ですよね…。としか言えない。
実利の乏しい労働力の提供は「搾取」と呼ばれるべきで、古墳造影のためにの駆り出された労働者は搾取されていたと言うことが出来る。
また、もしも古墳が、エジプトのピラミッドと同じく、参加することで死後の幸福が得られると信じられて作られていたのなら、それは「死に甲斐」の搾取である。
このへん分かっていないと、陰謀論と同じレベルの稚拙な説を唱えることになる。――という話である。
当たり前のことしか書いていないのだが、逆に、こんな当たり前のことをイチイチ説明せなあかんほど一般論が汚染されちゃってるのかあ、という気持ちにさせられた。
いやまあ、ピラミッド公共事業説も、一時期はこれが定説だくらいの勢いで広まってて、専門家すら何も考えずに受け入れてましたからねえ…。
※だいぶ前に書いたものだけど、以下置いときます
「ピラミッドは、何のために作られた?」
http://www.moonover.jp/bekkan/chorono/first_page.htm
「ピラミッドは、何のために作られた?」(ハード版)
http://www.moonover.jp/bekkan/chorono/first_page_01.htm
*****************
また、本筋とはずれる話だが、この本の中で「古墳造営に動員されていた人たちは、いざという時に兵役に転用できる人員だったのでは?」という話が出ていて、なるほど! と思ったのでメモしておきたい。
常備軍ってタダメシ食らいの穀潰しですからね。訓練させながら寝かせておくよりは、常時は肉体労働で使っておき、緊急時は兵士に役割チェンジさせるほうが合理的。また巨大な墳墓ほど必要な人数も上がるので、巨大墳墓を作れるえらい人=最大兵力を持てる、それより劣る大きさの墳墓を作ることが許可された人=その墳墓を築けるだけの兵力までは所持していい、という解釈も出来る。
古代エジプトでは、常備軍の存在が確認できるのが中王国時代の末期からで、この時代ってちょうどピラミッド建設が下火になってほぼ作られなくなっていく時代なんですよ。
折しも第二中間期突入前夜、東のアジア方面の国境が怪しくなってきた時代で、もしかしたらピラミッド建造に回す人員を兵力として使わなければ間に合わなくなっていたことも、ピラミッド建造が廃れていった原因の一つなのかもしれない。
ピラミッドの小型化・断絶は、従来は王権の弱体化と結びつけられることが多かったけど、建造に使える予備人員が枯渇した可能性も検討してみたほうがいいかも。
これはいずれ年表とにらめっこして考えてみたい。
というわけでこの本は、わかることは分かる、断言できないことは断言しない、と根拠は明快で、説明も筋の通った内容で、エジプトマニアで楽しく読める本でした。まあなんだ分野またいで迷惑かけてるY氏ほんと同業者の人どうにかしてくれ。
はぇーそんなもんあるんや、「ピラミッド公共事業説」と似てんなー? と思ったら、ほぼほぼ同じというか、実質の焼き直しだったので真顔になってしまった。
エジプト考古学の人たちが最初からちゃんと否定しとけばこんなことにならなかったんじゃん~。もー。…いやあの…なんか…ほんとすいません…。
というわけで、いまどんな感じになってるのか、本を読みに行ってきた…。

前方後円墳 (歴史文化ライブラリー 616) - 下垣 仁志
まあなんか、タイトルからすると公共事業説がどうとかいう話は全然関係なさそうに見えると思う。
が、序文からして「最近やたらと、古墳は公共事業として作られたという説がもてはやされている。学習マンガやSNSなどでも広まっている。実際にはこれは学術的な視座とは相容れない。実際の古墳研究でこれまでに分かってきたことを説明する。よく聞け」という内容であり、一冊使ってミッチリと古墳についてのあれこれを説明したあと、最後に、「というわけで、公共事業説なんておかしいことが分かったよな? ちなみにこれはピラミッド公共事業説の焼き直しだが、これも学術的な精査のないままマスコミを通して勝手に広まっただけのものだ。」と、かなり真剣に否定している本になっている。
文章は「怒り」のガチトーンを感じる書き方になっており、なんかほんと迷惑だったんだろうなあという感じ。
そもそも国家に対する奉仕を美化するとかファシズムの走りじゃね? というかピラミッドにしろ古墳造影にしろ、多少の還元はあるにしろ重労働に強制的に駆り出される時点で美化する余地ないだろ? という、至極真っ当なツッコミには、まあ、ですよね…。としか言えない。
実利の乏しい労働力の提供は「搾取」と呼ばれるべきで、古墳造影のためにの駆り出された労働者は搾取されていたと言うことが出来る。
また、もしも古墳が、エジプトのピラミッドと同じく、参加することで死後の幸福が得られると信じられて作られていたのなら、それは「死に甲斐」の搾取である。
このへん分かっていないと、陰謀論と同じレベルの稚拙な説を唱えることになる。――という話である。
当たり前のことしか書いていないのだが、逆に、こんな当たり前のことをイチイチ説明せなあかんほど一般論が汚染されちゃってるのかあ、という気持ちにさせられた。
いやまあ、ピラミッド公共事業説も、一時期はこれが定説だくらいの勢いで広まってて、専門家すら何も考えずに受け入れてましたからねえ…。
※だいぶ前に書いたものだけど、以下置いときます
「ピラミッドは、何のために作られた?」
http://www.moonover.jp/bekkan/chorono/first_page.htm
「ピラミッドは、何のために作られた?」(ハード版)
http://www.moonover.jp/bekkan/chorono/first_page_01.htm
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また、本筋とはずれる話だが、この本の中で「古墳造営に動員されていた人たちは、いざという時に兵役に転用できる人員だったのでは?」という話が出ていて、なるほど! と思ったのでメモしておきたい。
常備軍ってタダメシ食らいの穀潰しですからね。訓練させながら寝かせておくよりは、常時は肉体労働で使っておき、緊急時は兵士に役割チェンジさせるほうが合理的。また巨大な墳墓ほど必要な人数も上がるので、巨大墳墓を作れるえらい人=最大兵力を持てる、それより劣る大きさの墳墓を作ることが許可された人=その墳墓を築けるだけの兵力までは所持していい、という解釈も出来る。
古代エジプトでは、常備軍の存在が確認できるのが中王国時代の末期からで、この時代ってちょうどピラミッド建設が下火になってほぼ作られなくなっていく時代なんですよ。
折しも第二中間期突入前夜、東のアジア方面の国境が怪しくなってきた時代で、もしかしたらピラミッド建造に回す人員を兵力として使わなければ間に合わなくなっていたことも、ピラミッド建造が廃れていった原因の一つなのかもしれない。
ピラミッドの小型化・断絶は、従来は王権の弱体化と結びつけられることが多かったけど、建造に使える予備人員が枯渇した可能性も検討してみたほうがいいかも。
これはいずれ年表とにらめっこして考えてみたい。
というわけでこの本は、わかることは分かる、断言できないことは断言しない、と根拠は明快で、説明も筋の通った内容で、エジプトマニアで楽しく読める本でした。まあなんだ分野またいで迷惑かけてるY氏ほんと同業者の人どうにかしてくれ。